『脳の闇』
中野信子
新潮社 2023年
また読んでしまった、脳関係。
著者が言う通り、私は私自身について知りたいのだろうか。知りたいと強く思ったこともあるけれども、でも今は自分自身についてはある程度諦めている。受け入れている、と言いたいところだけれども。そうでないと、生きていくのが大変だから。
今までと同じように、今は他人への興味のほうが強いような気がしている。なんで他の人はこうなんだろう、という感じで。でも、それを気にするのは自分を気にすることの裏返しなのかもしれないけれども。
著者は最初から、「この本は分かる人に分かればいい」と言っている。分かる人には分かるように書いた、と。何を狙っているのだろうか。私はこういう言い方をされると「どうせ私は分からないよ」と思ってしまう性質なので、読みやすい本ではあったけれどもきっと頭のいい著者の意図は理解していないだろうと思う。
全体的に、この本は著者の愚痴のようなものだなと感じた。本は書いた人の書きたいことを書いているものだけれども・・・この本は「脳の闇」について書かれたものというよりも、それをテーマとしたエッセイだと思う。
今までいろいろな本を読んで知っていたこともあったが、改めて人間の環境の変化は脳にとっては速すぎたのだなと思う。その速さについていけずに神経や精神の病にかかってしまうのも仕方のないことだと感じる。仕方のないことだと思ってやり過ごすことができたらいいのだけど、そうもできない人がかかってしまうのだろうな。
今後科学技術や環境の変化は加速していくのだろうが、それによって人間にどんな影響が出てくるのか、気になるところだ。そして、著者のように頭のいい人たちが、私たち一般人が快適に暮らせる方法をあきらめずに発信してほしいものだ。
文章の途中で「騙す側と騙される側」とある部分は、「騙される人と騙されない人」ではないのかなと思ったりもした。
また、途中『犬笛』の話が出てきていたが、最初と最後のほうを読んだ限りではこの本は著者にとってはまさに犬笛ではないのかと思うのだけれども。でもそういう意味での出版であれば、犬笛を聞き取れる人に聞き取ってもらってどうするつもりなのかな?それを分かるのが、「分かる人」なのだろうか。