『リスクを生きる』
内田樹 岩田健太郎
2022年 朝日新聞出版
岩田健太郎さんは、新型コロナウイルスが流行し出した頃有名になった客船乗り込みの人だった。センセーショナルな感じで報道されていたし、行動の是非は素人には分からなかったけれども、この本を読んでなぜそういう行動をしたかは理解できた気がする。
専門家は言い切れない、ということが書いてあって、本当にそうだよなと思う。知れば知るほど、決めつけることは難しくなる。だっていろいろな例外があることを知るし、条件が変われば結果も変わるかもしれないことを知るし、まだ分かっていないこともあるかもしれないということを知るから。
でも今は、言い切る人に人は集まる。それが怖いと思う。
この本に書かれていることは、コロナに関係なく問題になってきていることもある。特に、教育のグローバル化・市場化は、普段からその弊害を私も感じている。
折しも、『英語能力指数』のランキングが発表された。この指数は、イー・エフ・エデュケーション・ファースト・ジャパン株式会社が116の国のランキングをつけたもので、日本は年々順位を落として92位。レベル分けで【低い】の最下位、【非常に低い】のまさに一歩手前。
小学校から英語を学ぶようになり、子どもたちのリスニングの力は上がっていると思う。でも、文法に力を置かなくなったために、英語の構造を把握する力が弱くなっていると感じる。単語を覚えてもどう使うかわからなければ文は作れない。「つらいことはしなくてもいい」と考える傾向も強くなっているから、頑張ることをいいことだと思わないから能力が伸びない。
方向的には英語に力を入れているはずなのに、この状況。もう元の形に戻したほうがましなんじゃないかと思う。
資本主義は「人間の替えはいくらでもある」という前提で作られているという説は初めて聞いた。そうなんだ。今や人手不足で会社が倒産したり今まで上がらなかった給料が上がり始めている状況。そりゃ、前提と実情が変わってきているんだからうまくいかなくなるよね。
まあ愚痴はともかく、科学技術がとてつもない勢いで進歩して社会構造も激しく変化している中で、今までのシステムではうまくいかないことはたくさんあると思う(英語の学び方を昔に戻せという主張とは相容れないけれども)。そもそもシステムを作る組織が前例主義だからなかなか進まないけれども、なんとかして進めてほしい。じゃないと、本当にしんどい国になっちゃうよ。