『家族シアター』

辻村深月
2018年 講談社

すれ違ったり誤解したりしていた家族の、グッドエンドな話が詰まった本。
なんだかんだで最後はほんわかしていて、好き。

何より心にしみるのは、よく出てくる「KYな家族」が自分に似ていること。
我が道を行って、回りに合わせない(合わせられない)。友達が少ない。
KYではない主人公の気持ちよりも、そっちのほうに気持をとられて切なくなる。

社会に出て何十年もたつけど、なんで自分があんなに(こんなに)人からずれているのかなあと時々考える。

皆、なんだかんだで人とうまくいかないと感じることがあるのは知っている。だから、合わせようとして頑張ったりしんどくなったりすると聞く。
私自身も、「どうも周りの人と合わないな」とは感じていて、合わせようとする気持ちもあるのだけど、どう合わせたらいいのかがイマイチわからない。変えるべき点がその時点でわからない。気づいていても気持ちが納得いかないまま自分を変えることはできない。
私は基本的には、変わり者と言われる集団にも入れない。変わっているベクトルが違うのだから、そこはメジャーでもマイナーでも関係ない。
つまり狭量で頑固ってことなのかなあと思う。

なんてことを、読みながら考えていた。

ここまで共感できる本なのに、すでに読んだことがあることに図書館で借りるときには気づかなかった。なんてこった。

各編、会話文がいい。
特に『私のディアマンテ』『孫と誕生会』の主人公のセリフや考えが、端々からその人の性格を感じることができてすごいなあと思う。

ニュースになるのは嫌な話が多くて、円安だし物価は高いし気持ちが暗くなりがちなのだけど、この本でほんわかできてよかった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?