【ゆるふわコラム】東京は決して嫌いではないけど東京に居続けなくて本当によかった話
たったの2年、東京に住んだことがある。いまからもう30年以上前の話だ。
大学卒業後にコンピューター企業で電機メーカーのグループ会社、A社に就職が決まり、上京することになった。
前の年に政府系機関に就職した先輩から話はちょくちょく聞いていた。といっても...
東京の人間ってすぐ『マジ?』っていうねんで。
みたいなしょうもない話だけだったんだけど。
それはさておき、今になって一番感じるのはタイトルにもあるとおり「東京に住み続けなくて本当によかった」ということだ。
東京出身でずっと暮らしていたり東京に自宅を構えている大学時代の先輩・同輩は気を悪くするかもしれないが、納得してもらえそうな理由はちゃんとある。
理由その1:賃貸住宅の家賃が高い→通勤時間が長い
東京の「ヤバいところ」は、なんといっても家賃が高いこと。そうなると当然のなりゆきで都心から離れたところにしか住めない。したがって、通勤時間が1時間超えなどめずらしくないことだ。
ぼくが就職したA社は東証一部上場企業の子会社だったので、会社の寮があって新人は全員そこに入ることになっていた。
会社の寮に住んでいれば夕食は格安で腹いっぱい食べられて、家賃もほとんどただみたいな料金。
だから、ぜいたくをしなければ貯金がどんどん貯まっていく上に、銀行金利が信じられない高利率だった。
ただ、六畳一間の部屋に二人住まいだったので、プライバシーがなく窮屈だった。今の若者などにはとても耐えられないだろうな。
当時はまさに「バブル景気」がこれから始まろうかという恵まれた時代。ではいったいどんなふうに恵まれていたかというと...。
銀行の預金金利が最高6%(1990年9月〜1991年7月)
だから、いまのように株式投資だとか仮想通貨だとかに投資するなんてこと考えなくても、退職金と貯金で十分老後の生活資金が貯められたんだよね。
その一方で「24時間戦えますか」といったCMに象徴されているように、月50時間100時間の残業が当たり前の時代だった。
ぼくが所属していたのは海外営業部だったので、海外との時差の関係もあり夜21時までの残業は「普通」レベルの感覚。
会社の寮に入っていたからなんとかやっていけたものの、個人でマンション借りてずっと東京に住み続けていたら、とても耐えられなかっただろう。
結局、ぼくは約2年で会社をやめて関西に帰ることに。
いまから考えれば、自分が単に「ヘタレ」だっただけなので、せめて3年頑張ってお金を貯めていればよかったかなと思う。
理由その2:通勤ラッシュが殺人的
通勤時間が長いのに加えて、東京はなんといっても人の多さがハンパない。朝の通勤ラッシュが大阪と比べてひどすぎたことも、東京暮らしをあきらめた理由のひとつだった。
毎日通勤に使っていた会社へは田園都市線から山手線を乗り継いでいったのだが、この電車がなんともひどかった。
●田園都市線の混み具合(1987年当時)
・通勤時間にはエアコンが効かず窓をあけていてむちゃくちゃ暑い
・混雑率100%超えのためいったん乗ったら身動きできない
・急ブレーキがかかると立ったまま前のめりになり体勢を元に戻せない
それでも冬はなんとかましだったものの夏になるとまさに殺人的。
コロナ前の大阪の御堂筋線も朝のラッシュ時はけっこうひどい込具合だったが、とてもそれどころの話ではなかった。
このころはなにしろ「パソコン」も存在しない時代で、オフィスの1部署に1台「オフコン(オフィスコンピュータ)」があっただけ。
海外とのやりとりは「ファックス」や「テレックス」を使い、緊急の時だけ国際電話をかけるというやりかたで、もういまとは比較にならない時間の手間がかかっていた。
いまでこそコロナ禍でリモートワークが普通になって「通勤がムダだ」なんてこともいっていられる。いい時代になったもんだよね。
理由その3:自然災害に弱い
昨晩も関東地方で地震があったけど、東京には日本の政府機関はもちろん大企業の本社や文化施設が密集している。
だから、自然災害に襲われると公共交通機関がすぐに遅延・麻痺して身動きがとれなくなってしまう。
東日本大震災が発生したときにも、自宅に帰るのに何時間も歩いたりバスのりばに並んだりしている光景をみた。
たしかに大都市だとどこも同じことになるかもしれないが、他の政令指定都市と首都東京とでは街の規模が違いすぎる。
これで家族のことも考えなければならないので、東京ぐらしは本当にハードルが高く、ぼくにとって「無理ゲー」に等しい。
コロナ禍が東京の「役割」を変えていく
そういうわけで就職してから早々に関西に逃げ帰ってきたわけだが、自分が生まれ育った大阪は都市のサイズもちょうどよく一箇所ですべての用が済ませられる。
経済や文化の中心だった東京も、コロナ禍で直接会う機会が減りリモートワークが広がりつつあるなかで地方に移住する人が増えている。
その一方でこれまで混んでいた観光地やホテルが安く手軽に訪問/利用できるようになったというメリットも出てくる。
このコラムのタイトルとは正反対の結論になってしまうが、これからは東京に残る歴史的建造物や美術館などを積極的に訪れて、日本文化に対する教養を高めていく絶好のチャンスとなるかもしれない。