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【ショートショート】10月25日(月):グッバイ!ハローワーク
コロナ禍でこの世界がすっかり変わってしまったというのに、いまだに古い価値観とシステムに執着している人たちや組織がある。
その代表的なものが「官公庁」だ。
2020年に仕事を失ってからというもの、ハローワークに足繁く通って求人に応募してきた。
ひとつきに一回の失業保険の認定があったこともあるが、何より早く月々の安定した稼ぎを取り戻そうと必死になっていた。
自分は組織でやっていける人間ではないととうにわかっていた。毎朝の通勤電車に揺られている人達だっておそらくそうだろう。
リモートワークでじゅうぶん回る仕事のはずなのに、会社の経営トップにその気がないもんだから三密MAXな電車にイヤイヤ乗り込んでいるのだ。
このボクもいまさらやりたくもない雇われ仕事を見つけるために、まるで麻薬のように旧態依然としたこの組織に吸い寄せられていた。
「以上三件の紹介状を出しときますんで、履歴書と一緒に郵送して下さい」
窓口の職員にそう言われてうなずくと、ボクは重い腰を上げて帰路についた。
「また紙の書類を印刷して郵送しないといけないのか...」
わかりきったことながら、ボクはため息をついた。自宅にはプリンタがないので、コンビニに寄ってスマホからネットワーク経由で印刷をしなくてはならない。
「そうだ、『Webゆうびん』を利用しよう」
ボクは少し前にユーザー登録していたゆうちょの「Webゆうびん」というサービスを思い出した。
「Webゆうびん」とは、パソコンからデータをアップロードして送り先の住所を指定すると、自動的にそのデータを封筒に封入して相手先に郵送できるサービスだ。
このサービスの何が便利かというと、パソコン上ですべてを完結できて自分で郵送しなくていいところなのだ。
●Webゆうびんのメリット
・自分で書類を封入したり切手を貼って投函する手間がない
・パソコン上のデータをアップロードして相手に紙で送れる
・
つまり、紙を扱うことなく相手に書類を送れるというわけだ。
しかし、結果から言うとこの試みはみごとに失敗に終わった。
自分の頭の中では、ものの30分もあれば作業は完了するはずだった。つまりあらかじめスマホでPDF化した紹介状と、3件分の履歴書・職務経歴書をじかにアップロードし、クレジット決済をするだけで即座に応募が完了できるとふんでいた。
しかし、ここで思いがけないエラーが発生した。
Wordで作成した履歴書・職務経歴書は問題なくアップロードできるのに、スマホで写真をとってPDFに変換した紹介状は「1GBを超えるデータはアップロードできません」と表示されてしまう。たかが紙一枚分のデータをアップできないなんて、なんというショボいサービスなのだ。
そこでボクはやり方を変更。別のスキャンアプリで紹介状をスキャンし直し、1GB以内容量をおさえたPDFをつくった。これなら問題なくアップロードできるはずだ。
するとまたもやエラーメッセージが表示された。
「A4フォーマットではないのでアップロードできません」
つまり、微妙にA4サイズにぴったりはまらないデータになったため、規格外でアップロードできないというのだ。
紙の文書をなんとかデジタル的にすべて処理しようとしたが、そうした努力も時間もすべてムダになった。
こうして、「ハローワークの紙文化」に徹底抗戦を挑んだボクは無残にも敗れ去った。
結局これは「紙がないとまともに回らない組織と付き合ってはいけません」というメッセージだとボクは受け取った。
プライベートでは万年筆で手書きするのがけっこう好きだったりするのだが、ビジネスにおける紙の文化は保管に場所を取ったり複製に手間取ったり印鑑による稟議が必要だったりして非効率このうえない。
リモートワークをはばんでいるのはすべてこの「紙のビジネス文書」が元凶だと断言できる。
ここできっぱりと宣言してしまおう。今後は紙文化に染まった時代遅れの組織と決別すると。あなたたちと関わっているかぎり、またおなじような紙文化の民間企業に送り込まれるだけだ。
現状維持にこだわり国民に「参勤交代」を強いる高級官僚たちよ、あなたがたの時代は終わった。
サヨナラ、サムライ。グッパイ、ハローワーク。
編集後記
今日は、カーペンターズの「雨の日と月曜日は」がぴったりくるような日でしたね。
そのままおとなしく家にこもってたまった仕事をこなしていればよかったんだけど、ついよくばって新しい仕事を探しに行こうとしたことがよくなかったみたいだ。
今やるべきことに集中せずにあまりやりたくないことに手を出したことで、今日という時間と余分なお金を失ってしまいました。
この国は今後も変わることをひたすら拒む人たちのためにどんどん世界から遅れていくでしょうが、ボクは沈む船に乗ってあなた達と一緒に沈むつもりはないんですよ。
自分もいいかげん高齢者に近い中年オヤジだけど、年齢に逆らい運命にあらがって時代の先端を走りつづけていく。
ほな、またあした。
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