5 大気の力学の概要
傾向と対策
大気の力学は、毎年1問出題されています。計算問題として出題されることもありますが、頻度は控えめです。コリオリ力や気圧傾度力、渦度、大気の角運動量等、理系の方でなければ苦労するであろうテーマが出題されます。設問に対し、定性的な説明を与えることができれば解ける場合も多いですが、私の場合はきちんと式を立てて解いた方が早くて確実でした。テーマもやや広いので、得意な方を除き、得点源ではなく2~3択に絞ることを目標に学習した方が良いかもしれません。
しかしながら、実技との関連性がそれなりにあるため、全体像と大まかで良いのでモデル化による理解(空気塊が移動すると、コリオリ力が進行方向の右に速度に比例して働く、のようなイメージを描けること)をすべきなのは間違いありません。
理系の方向けのアドバイス
静力学的な力のつり合いや、コリオリ力や角運動量は教養レベルの力学の知識として習得していると思いますので、全く問題ないと思います。一部ベクトル解析の知識も必要ですが、初歩も初歩なので、忘れてしまっている方や、未修の方でも全く問題ないはずです。寧ろ、無駄に気合を入れて、数式で現象を追わないようにしてください。断言しますが時間の無駄で、合格が遠ざかります。そんな暇があれば、法規対策に費やすべきです。
この分野で扱われる現象や概念は、実技でも出題されることがあります。また、気象学独自の概念も多いため、油断はできません。例えば、温度風という概念が気象予報士試験では頻出です。理系の方でしたら、温度風が「異なる高度における風をそれぞれベクトルとして表現した際、その差分ベクトルとなる」と聞けば、瞬時に「そういうことね」と理解できると思います。また、温度傾度によって気圧傾度が生じ、それにより鉛直方向に沿って風速や風向が変化することも何となくイメージできると思います。この、物理現象をある程度脳内でイメージできる状態が、気象予報士試験では大事です。そして、それ以上は必要ないのです。
繰り返しますが、数式で現象を追わないでください。これは、大切な時間を溶かしてしまった、私からのアドバイスです。
その他の方へのアドバイス
恐らく、理系の方向けのアドバイスを読んで、自分には無理だと感じた方もいると思います。確かに、理系的な素養がないかたには厳しく、頑張っても解けない問題はあります。しかし、そのような問題は2割程度だと思います。残りの問題は、知識事項で解けますし、計算問題であっても、パターンが決まっており、簡単な四則演算だけで解けるものも多いです。
山場であることは間違いありませんが、例えば温度風の関係などは実技でも頻出です。なるべく正確に理解する必要があります。あきらめずに、自分なりに図で表現したり、とにかく試行錯誤によりなるべく正確な現象のイメージを脳内に構築してください。今後、過去問の解説を作成する際に、なるべく手助けとなるような説明を盛り込みたいと思いますので、必要に応じて参考にしてください。
学習の目安
理系の方は確実に解けるようにしましょう。そうでない方は、80%くらいの確率で解ける状態を目標に目指しましょう。実技との関連も強いので、捨てる分野にするのは厳禁です。
過去問は合計で66問(第60回試験まで)ありますので、入手可能なものは全て集めて活用してください。筆者の場合、過去問を24問集め、全ての問題を消去法に頼らずに3回連続で解けるまで繰り返しました。変化球的な問題も含めると、それなりにバリエーションがあるので、それなりに丁寧に対策をして本番に臨みました。