小便オー・デ・コロン(前編)
僕はTwitterを少々、嗜んでいるのですが、最近、Twitterがアホになってる気がします。というのも、タイムラインに全く興味のないTweetばかり並ぶようになったのです。本当に興味ないですからね。なんだよ、ウチの犬のウンコがプリンに似てるとか。知らねえよ。それから僕がフォローしてる友人が陰謀論好きなせいでめちゃくちゃ陰謀論のTweetが目に入ってきて、ワクチンを打つと死ぬだとかバイデンはゴム人間だとかなかなかファッショナブルな情報が流れてくる。
僕は最新のニュースと友人の動向と新書の情報と趣味界隈の様子、それから少しばかりの初音ミクのファンアートが見たくてあのふざけた青い鳥のアイコンをタップしてるってのに、なんだこのザマは。この間も腹の立つことに、僕がタイムラインを死んだ魚の目で眺めていると、やたらとオーデコロンのTweetが並んできた。Tweetには「you might like」と表示されている。いや、オーデコロン好きになった記憶はないし、突然オーデコロンを勧めてくるのも謎だ。なんだよ、俺そんなに匂うのかよ。
僕はオーデコロンについて少し考えてみました。そもそもオーデコロンとはなんのためにつけるものなのでしょうか。おそらく多くの男性はその男性的魅力を上げるためにオーデコロンを使うのでしょう。要はモテたいのです。僕もモテたい。ただ、オーデコロンによっていい匂いをまとったとしても、それだけが理由で女性にモテるということはなかなかないでしょう。しかし、人間以外の動物の間だと、臭いは雌雄の出会いに重要な役割を果たしています。
例えば、蛾などの昆虫の中には性フェロモンで雌を誘引する種がいます。フェロモンは厳密には臭いとは違いますが似たものと言えるでしょう。それから哺乳類の雄は尿によって性的な興奮を見せることがあります。たとえばヤギやヒツジ、ウマなどは、繁殖期になるとフレーメン反応と呼ばれる仕草をして、雌の尿などの臭いに反応します。
では、人間の場合、尿というのはどうなのでしょうか。やはり、人の性的魅力を上げるという意味で尿は有用なのではないでしょうか。別に、私がし尿に興奮する真正スカトロジストというわけではありません。しかし、古今の人間の変態心理を描写した小説(バタイユとかね)などを読むに、やはり尿というのは人を興奮させるのかもしれない。何かまずい方向に思索が進んでいる気がしますが、僕はただ、小便オーデコロンというのが有用ではないのか、という問題提起をしているだけなのです。
さて、仮に小便オーデコロンが流行したとしましょう。するとどうなるか。最初のうち、人々は自分の小便を体に塗りたくることでしょう。千代田区タワマン住み、愛人を30人くらいは囲ってそうなIT企業社長から、冴えない中間管理職サラリーマンまで、みな小便オーデコロンです。山手線は小便の匂いで溢れ、最初は都会のハイソな人の間だけではやっていた小便オーデコロンはやがて日本中に浸透し、田舎の不良高校生なんかも毎朝制服に尿を染み込ませる日々、雑誌では連日、小便の塗り方指南を特集しています。もうこれだけで亡国感Maxですが、これで小便ブームが終わるはずがありません。
ある日、毎日のように小便塗りに精を出している冴えない大学生、康夫が重大な事実に気づきます。彼の友人のY君は明らかに彼よりブス、掃除で使うコロコロで顔を造形されたんじゃないか、神さまが鼻くそでもほじりながら顔を彫ったんじゃないかっていうくらいブスなのですが、彼が突如としてモテ始めたのです。それは、小便オーデコロンが流行ってすぐのことでした。康夫はある仮説を立てます。モテる小便とモテない小便があるのではないか。そこである日、康夫はY君がいつも使っている小便オーデコロンの小瓶を自分のものにすり替えてみました。すると予想通り、Y君は1日に5人の女性からふられてしまいました。「人の顔じゃない。本当にありえない」「お願いだからもう視界に入ってこないで欲しい」などといわれてかなりかわいそう。しかしそんなことより康夫にはやるべきことがあります。まず康夫は彼の小便を自分に塗りたくりました。すると街中を歩くときの女性の目線が明らかに違う。
こうして康夫は、小便には女性への向き不向きがあることを発見した最初の人間になりました。
(つづく)
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