君のことを、夜中にふと思い出すんだ。
そしてすごく会いたくなる。
でももう会えない。もう二度と。
キリンビール(株)の発泡酒、Smoothを覚えているでしょうか。
販売していたのは2008年なので、12年前。
当時東京のシェアハウスに住んでいた私は、夜はたいてい同居人たちとまったりおしゃべりして過ごしており、そんなときに飲んでいたのがSmoothでした。
【キリンビールHPより】
友人にも勧めてみたらまんまとハマり、テーブルにターコイズブルーの空き缶を整列させていました。
その後、私はシェアハウスを出て久米島へ住んだので、余計にそのときのことが懐かしく思い出されます。
そんな思い出とともに恋しいSmooth、一体どんな味なのかというと。
クリーミーな口あたりとふわっと軽やかなうまさを特長として、[低アルコール4%]で軽やかな酔い心地、[低炭酸]でやわらかな刺激、麦の甘みを引き出す[低発酵]でクリーミーな口あたりを実現しました。
【キリンビール株式会社HPより 抜粋】
とサイトにも書かれているコンセプトどおり、”ふわっと””軽やか”な口当たりです。
泡が普通のビールと比べてかなりふわふわで、苦味もなく、キレもない、そんな飲み物でした。
普通、発泡酒は”ビールに寄せる”ことに神経を使うものですが、逆の発想で”全然ビールっぽくない発泡酒”。
「キツイのとか求めてないし」と黒木メイサがポスターで言っているとおり、従来のキレ・コク・苦味からは遠ざかった、新ジャンル。
当時の私はビールの苦みがあまり好きではなかったので、このライトさがツボでした。
あとパッケージが空を思わせるターコイズブルーに、浮遊しているような麒麟のイラスト、というかわいいデザインもポイントでした。
家でお酒を飲んでいる自分を俯瞰で想像した場合、「ゴツいのよりは可愛いものを飲んでいたい」という女子の心理(?)にも、マッチしていたと思います。
で、あれから12年経つのですが、ときどき無性にこのSmoothが飲みたくなるときがあります。
もう一回だけ、味わいたい…
正直、実際の味の記憶よりも「美味しかった」という記憶のほうが勝っているので、もしかしたら全然違うものを思っているのかもしれませんが、とにかくもう一度飲みたい。でもキリンビールのHPを見ても、復刻するなどというニュースは全くないし…。
そんなとき、ビール売り場の前で思ったのです。
「これだけたくさんのビール(や発泡酒)があるのだから、Smoothに似ている味のものもあるはず!」
今まで試したことがない銘柄に手を伸ばしてみました。
まずはこれ。
サントリーのホワイトベルグ。
ビール売り場でチラ見して、ずっと「デザインがかわいいな」と思っていたのですが、なんとなくスルーしていたこの子。
色もSmoothと似ているし、「爽やか」と書いてあるから軽そうだし、挑戦してみよう。
さっそく飲んでみました。
おお、コンセプトが「きっと香りで好きになる」だけあって、フルーティー&スパイシーな香りがする…
コリアンダーとオレンジピールが入っているそうです。
味わいは苦味がなく、軽くて爽やか。ベルギーのホワイトビールを目指しているそうで、実際にベルギー産麦芽を使用しているとのこと。
と言われても「ああ!ベルギーのホワイトビールね!」とピンとくる日本人は一体どれくらいいるのだろう…という疑問はさておき。
結構Smoothに近い気がします。
ホワイトベルグから香りを引いて(この製品の最大の売りだけど)、泡をもっとふわふわにさせたらSmoothになるかも。
ちょっと似たものを見つけられて嬉しかったので、もう一本挑戦してみました。
サントリーBLUE。
はい、青いというだけで選びました。
味は全然Smoothぽくなかったです。
炭酸が強いし、泡がふわふわしていないし(なんだか私そればっかりだな…)。
それよりもこのデザイン、最初エメマンかと思いました。
【ジョージアHPより】
なんかいろいろそっくり。多分見た人全員がその感想になると思います。
どうでしょう、オフィスでおもむろに飲んでいても「缶が大きいエメマンかな?」と思われて、バレないのではないかなと思ってしまいました。誰かやってみてください。
もしかすると、味が優しめのノンアルコールビールにアルコールを足したら近いものができる気がしてきました。ALLFREEあたりで今度やってみよう。
あと、大好きなプレモルからコクと深みをとったら近いかも。全然プレミアム感なくなっちゃいますけど。
そんなわけで、懐かしのSmoothには再会叶わずでした。
好きだったからもう一度会いたいと思うのか、もう二度と会えないと思うから恋しく思うのか、もはやわかりません。
あれから私もひとまわり歳をとったわけで、嗜好も変わりました。好きなビールの銘柄も変わりました。今Smoothを飲んでみたら案外普通だった、という可能性もあります。
でも、もうそれを確かめることもできないのです。
いつか超お金持ちになったら、キリンビールの社長に頼んで復刻してもらうことにします。
※私は昔からこうして「いつか超偉くなったら大好きな漫画家さんに自分だけの漫画を描いてもらおう」とか「いつか富豪になったら大好きな俳優に一日だけデートに付き合ってもらおう」とか妄想して己の願望をやりすごしてきました。未だに偉くも富豪にもなれずにいます。
何にせよ、もう季節はすっかり夏。君との思い出を懐かしみながら、苦味も深みもあるビールを楽しもうと思います。
補足
本文中では発泡酒と第三のビールとがごちゃまぜになっています。一応インターネットで調べたのですが、違いがさっぱり理解できなかったからです。
でもこの分類は日本だけらしいですし、そもそも酒税の関係で分けているだけですし、将来的はこの分類もなくなるそうなので、良しとしましょう。
2017年(平成29年)に酒税法が改正され、2026年(令和8年)10月1日より第三のビール、発泡酒を含むビール類の税率は一本化されることとなった。それに先立ち2023年(令和5年)10月1日より「第三のビール」という区分が廃止され、発泡酒に統合される。
(wikipedia「第三のビール」 より)