自由に語る場で実現した、メンバーと企業の接点を発掘していくオフサイトーーレジリアの場合
法人向けサプライチェーンリスク管理サービス「Resilire(レジリア)」を提供する、株式会社Resilire。VCを交えたコアメンバーでIsland and office八丈島を利用し、1泊2日の行程でパーパスや事業の根幹となるデータ構想についてディスカッションしたそうです。ただし、今回重視したのは「メンバー同士の交流」。その背景にあった意図や、実際に得られた経験と変化について聞きました。
伊弉末 大悟(Resilire株式会社 Corporate)
新卒でSIerのSEとしてキャリアをスタートし、IT特化の人材紹介会社のキャリアコンサルタントのマネージャーとして転職支援を経験。その後プレイドに人事として入社し、組織70名からIPO後の300名までの採用を中心とした組織づくりに携わる。2022年7月、レジリアに2号目社員として入社。コーポレートの立ち上げに従事。
“詰め込みすぎない”時間を求め、コアメンバーで八丈島へ
ーー今回八丈島にてオフサイトを行った背景を教えてください。
今回のオフサイト実施の主な目的は、中長期のビジョンや自社の存在意義について、普段業務の中ではなかなか話しきれないテーマについて議論すること。ただし、それ以上にメンバー同士が親睦を深める機会になれば、という狙いがありました。
参加したのは代表、社員、業務委託のメンバー6名と、投資してくださっているVCのDNX Venturesの方1名、計7名です。参加メンバーのポジションはPdM、デザイナー、カスタマーサクセスとさまざまですが、いずれも事業を支えてくれているコアなメンバーです。
今年の5月、別の場所で一度オフサイトを実施したのですが、その時はスケジュールを詰め込みすぎてしまった反省がありました。宿を堪能したり、自由に話したりする余白の時間があまり取れず、主催者側がコンテンツを作りすぎたな……と感じたんです。
ですから、今回の八丈島では話すテーマを絞り、できる限り自由な時間も作ることを意識しその中で生まれる自然なコミュニケーションを大切にしよう、と考えました。
ーーどのようなスケジュールを組まれたのでしょうか。
Island and office八丈島の滞在期間は1泊2日、昼から翌昼までです。アクティビティはあえて予定に入れず、両日の昼に設けたディスカッションも、話す内容を詰め込まないよう1日1アジェンダに設定しました。
アジェンダが多くなかったので、到着後は施設や周辺の散策といった時間を十分に取れました。八丈島に到着した瞬間は、普段見ない森、山といった光景が広がっていて、メンバー全員で興奮したのを覚えています。その後も買い出しをしながら街並みを楽しんだり、宿泊する場所の写真を撮ったり……そういう時間をメンバーと共有できて、全体としてとても良かったです。
パーパスと個人を結びつける深く、自由なコミュニケーション
ーーディスカッションの時間はいかがでしたか。
今回のディスカッションでは、「レジリアのパーパスについて考えてみる」という大まかなテーマを設定しました。そのためパーパスを決めきるというよりは、パーパスの元となるキーワードを出して整理する時間という意識のほうが強かったので、各メンバーのパーソナリティに焦点をあてた時間が多かったです。
ディスカッションの中ではキャリアパスについて、なぜレジリアにジョインしたのかという自己紹介の時間を多く取りました。今まで知らなかった話もたくさん聞けたので、改めて一人ひとりの思いを共通認識として捉えられたのが大きな実りだったと感じます。
ーーメンバー個人のお話にはどれくらいの時間を費やしましたか。
単に発表するだけでなく、その内容に他メンバーがツッコミを入れたり、「それ、こんなふうに形にしたい」とアイデアを出したりと対話する形で進めていったので、気づけば2時間以上が経過していましたね。
また、最終的にはパーパスを作ることに繋げていきたいので、メンバーから出てきた話をもとに「それは事業のこの領域に近いかも」、「レジリアが実現したいことだよね」など、個人と企業の接点を整理していくコミュニケーションも深められました。
ーーその後、夜の時間も自由にお話されていた形でしょうか。
そうですね。17時半ごろ、早めのタイミングからみんなで夕飯の支度を始めて、そこからはアジェンダを作らず自由に飲んで、話して、という時間を長く取りました。
時間に余裕があったので、メンバーでカードゲームもしましたよ。自社で作った防災のカードゲームをやったり、Island and officeに置いてあるバリューカードを使わせてもらったり。あとはAmazon Primeの番組をみんなで鑑賞したり、焚き火をしたり。
深夜1時ごろまで、とても充実した時間を過ごしました。その中から見えたメンバー一人ひとりの価値観であるとか、意外な一面であるとか、得られたものはたくさんあります。そういった親睦から得られたものが、今回の一番の成果と言えるかもしれません。
スタートアップのコアメンバーの孤独を解消する手段として
ーー伊弉末さんは人事領域のキャリアを重ねられてきていますが、その視点で今回の時間をどのように感じましたか。
組織を作る上で、合宿・オフサイトの時間は個人的にとても重要だと感じています。特にコロナ禍以降は、その需要がさらに高まっているのではないでしょうか。ひとつのテーマを対面で議論することでしか得られないものは、フルリモートが浸透していっても、変わらずあると思います。
また、オフィスにいるとどうしてもさまざまな情報が入ってきます。気分が切り替わりませんし、普段扱っている業務を完全に忘れることは難しいですよね。今回Island and office八丈島を利用してみて、物理的に環境を切り離し、都心から離れた自然あふれる環境でオフサイトをするのは良い手段だな、と改めて感じました。
ーー会社の規模を問わず、オフサイトを実施する効果はあると思いますか。
そうですね。大企業でも大切ですが、小規模なスタートアップなどでもぜひ取り入れてほしい時間です。
まだ事業を立ち上げて間もない組織に入るメンバーは、何かしらの専門性を持っていることがほとんどです。すると、その専門領域に関わる仕事はその人がリードすることになるので、孤独になりやすい側面もあると思います。もちろん困ったことは相談すればいいんですけど、相談しなくても一人である程度進められてしまうので……。
一方で、そういうプロフェッショナルなメンバーが企業に集っているのは、一人ではできないことに挑戦したいからなんです。それが、ビジョンやミッション、パーパスに紐づいていきます。だからこそ、改めて全員が「同じ方向を見ているね」「こういうことをやっていきたいね」と、想いを共有する時間の価値が高まると感じます。
ーー今回のオフサイトを通じて、社内ではどのような変化がありましたか。
まだ変化の過程ではありますが、一人ひとりが個人の意志と企業のビジョンの接点を再確認できたとは思います。
私は各メンバーがレジリアという会社を通じて、社会に価値を還元し、人生の意義を見出せる、そんな場所にしていきたい、と願っています。これらを実現するためには、自分達の在るべき理由を徐々に解像度を上げていき、社内で共有しながら事業を成長させていきたいと考えています。
ーーちなみに、メンバー以外にDNX Venturesの方が参加したことについてはいかがでしたか。
自社のメンバーだけで話していると、どうしても視野が狭まりがちです。そこに外部メンバーとしてVCの立場からさまざまな企業を見ているDNX Venturesの方が参加してくださったことで、客観的なコメントをくださったのがありがたかったです。今回のオフサイトでは、私たちの事業に関連しそうな他社の失敗事例や、具体的な課題の解決手段の選択肢など、さまざまな意見をいただきました。
ーーパーパスのほかに、そういったディスカッションもできたんですね。
はい、2日目のディスカッションの主なアジェンダは「データ構想について」でした。
私たちはサプライチェーンのリスクマネジメントサービスを提供しているのですが、サプライチェーンのデータの可視化は他業界と比べて複雑です。メーカーや商社などあらゆるステークホルダーがいることや、品目・企業・拠点など、扱うデータの整理の軸が複数混じり合っている特徴があります。ニーズの異なるお客様を前にしつつ、それを汎用的なプロダクトに落とし込むためにはどうすべきか議論しました。
重要であるものの、時間を確保して議論できていなかったテーマだったので、今回のオフサイトで大まかな方向性がすり合わせられて良かったです。パーパスについてはもう少し解像度を高めていくプロセスが必要なので、直近の業務面で大きな変化が期待できるのは、このデータ構想について共通認識を持てたことだと思います。
ーー最後に、レジリアの今後の展望について教えてください。
私たちは「テクノロジーで持続可能な社会を創造する」というビジョンを掲げています。現在はサプライチェーンを切り口に、災害時のリスクマネジメントを基軸としたプロダクトを展開していますが、カーボンニュートラル、人権、環境規制などの様々なリスクにも取り組んでいきたいと考えています。
私たちが目指す「持続可能な社会」というテーマは、とても難しいものです。だからこそ一つひとつの課題に対して深く向き合い、議論する必要がありますし、今後同じ方向を見て働けるメンバーも増やしていきたいと考えています。そういった展望があるからこそ、今後も定期的なオフサイトを開催しつつ、短期・中長期双方の議論をしていける組織を作っていきたいと思います。
(執筆:宿木屋、聞き手:宿木雪樹)