肺がんで余命半年の宣告を受けた父②

がん相談室

父が胸に溜まった水を抜く処置をする間、私はがん相談室に行くことにした。ポタポタと水を抜くそうでそれなりに時間が掛かるとのことだ。

地域ではそれなりに大きい病院だったので、「がん相談室」という窓口が設けられていた。頭が真っ白になっている私にナースさんがここに色々相談してみてください取り次いでくれた。

銀行のように開かれた窓口が1つだけあり、ガラス張りに30~40代くらいの女性の方が座っていた。

「すみません、先ほどナースさんに取り次いでもらった●●ですが。。。」
「あ、はい、お話は伺っております。こちらにおかけください」

座った椅子の背には人通りも割とあるOPENな窓口だった。
「お父様はがんだという診察結果を受けたのは今日が初めてでしたね。」
「はい、そうです・・何もしなければ余命半年だと・・・」

その言葉を皮切りに、私は涙を流してしまった。止まらなかった。
のどが詰まって声がだせず、それ以上話せくなった。
ある程度覚悟はしていた。父も高齢でいつ死んでもおかしくないともわかっていた。つい1ヶ月前に親戚の叔母がなくなった時にも人の死は必然であることを再認識していた。だが、やはり父という短くはない時間を過ごした家族の死というのは頭でわかっている以上に気持ちにダメージを与えられていた。

家族ががんになった人をその窓口の人は一体何人見てきたのだろう・・・
「お隣に個室の面談室がありますのでそちらでお話しましょうか」
気を遣って個室に移動してくれた。

個室に入って少しして、私は落ち着きを取り戻していった。元から落ちついてはいたが、涙が止められないという状態だったの方がしっくりくる。
ハンカチで涙を拭いながら会話を進めた。

まず父の生活・私の生活の実態を聞き取ってくれた。
父は一人暮らしであること、私は離れて暮らしてはいるがそう遠くはない(2駅となりくらい)の場所に所帯を持っていること、父は今の今まで仕事をしながら生計を立てていたこと、お金への心配があること。

それらを踏まえ、たくさんの可能性を提示してくれた。
残酷なまでの未来を彼女は見据えているのだ。

父の近い未来に起こること

窓口の女性は木下さんという。名刺を頂戴できた。
医療福祉相談室 社会福祉士 木下〇〇さん

木下さんはまず心配しているお金の面についてまとめてくれた。
父は76歳であるため、医療費は1割負担である。働いてはいたため、住民税の非課税ではない。
・医療費には自己負担限度額がある。外来なら月で18,000円
・入院+外来なら月で57,600円
※2024年10月現在
これ以上はかかることはないとのことだ。

まずこの事実にとても安心した。
胸に水がたまらなくするような手術だけなら受けることができそうだ。

そして次に今後の入院先をどうするかという話だった。
「末期の患者さんはこれからどんどん衰弱していくと思います。今はご自分で動いて、ご自分の足で病院まで来ていますが難しくなる日も近い将来には起こりうるものとしてお考えください。」
「そうなったとき、正確にはそうなる前に手続きは必要ですが、色々な介護サービスが受けられます。」
「介護ですか・・・」
「はい、今は考えにくいかもしれませんが、仮にご自宅で療養をされることになった場合、ご自分でご飯が食べられない・お風呂に入れないということは起きます。そうなったときに使える介護サービスがあります。こちらです。」

パンフレットが手渡された。
【みんなの安心介護保険】
中身を見ると「要介護認定」「要支援認定」など昔習ったことがあるような単語と各サービスが記載されていた。入浴介助・食事介助など1回の料金は数百円~数千円程度で受けられるようだった。また、手すりや杖などの福祉用具のことも記載があった。

「生活できるうちは家を望まれる方が多いです。でも本当に最後を家で見ることは難しいと思います。そうなったときはもちろんうちの病院で治療を受けつつづけることもできますが、治療を受けないという選択 「緩和ケア」という選択もあります。残された時間を大切に過ごすための病棟があります。」
1枚のプリントを渡された。県内の緩和ケア病棟のリストだ。
「必要になったら病院から取次ますが、今日はこういったものがあるということでお渡しします。」健康保険内の負担で受けられるものもあれば、別途有償での対応となるものもあります。」

「また、終末期がんの診断をうけてますので、地域包括支援センターにはもうお声をかけておいてもいいと思います。まだ介護認定などは受けられないと思いますが、地域に終末期がんの患者がいるということを周知いただくためにも申請はもうしておいても良いと思います。」

一気に近い将来に起こりうる未来を色々提示された。
食事も食べられなくなり、寝たきりになり、最後はケア病棟で看取ってもらう。それが彼女がこの先に見据えて私に伝えた簡単なストーリーだ。

私はこの事実を受け入れるのにどれくらいの時間を要するだろうか。。
私と私の父はどういった生活が今後が考えられるのだろうか・・


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