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【惨劇の夜】

これは筆者が某夏至の映画で受けたショックを和らげるために書いたものです。間接的にネタバレを含む気がするので注意な。

「ニエー……」「ニエー……」「ニエー……」

 ドアを挟んだ向こう側から、死神がにじり寄る音が聞こえる。あと数刻も立たないうちに僕は殺されてしまうだろう。何故こんな事態になってしまったのか……可能な限り振り返ってみようと思う。

 僕を含めた五人は、卒業間近の大学生だ。最後の夏に記念を作りたいということで、どこかへ旅行しようということになった。様々な場所が検討されたが、最終的に海を渡った先の「ササゲ村」が旅行先となった。如何にもな名前だが、このご時世、人身御供なんて廃れているだろう。僕たちはそう慢心し、飛行機に乗り込んだ。それが、まさかこんなことになるなんて……

 最初に犠牲になったのはマートスだった。彼は人一倍良識とか倫理に準じる人間だった。だが、寿命間近の老人たちが狂ったように頭を岩石にぶつける様を見て発狂し、全裸で逃亡しようとしたのが運の尽きだった。無防備な腹部を強打され死亡、遺体はカカシ人形みたいにされてしまった。

 次の犠牲者は紅一点のアリマだ。彼女は理知的で人当たりの良い女性だったが、食い意地が今回は悪い目に出た。ササゲ神への供物をこっそりつまみ食いしていた事がばれた彼女は、豚の皮にくるまれ生きたまま燃やされてしまった。彼女のまる焼け姿を思い出すと、今でも料理が喉を通らない。

 三人目はルイハミだ。民俗学の研究者だった彼は村の教本を密かに盗み見ようとしたが、音読派だったのでバレてしまい、その場で撲殺されたらしい。

 一番悲惨だったのはゴリスだ。彼は種族が違うので大丈夫だろうと思っていたが、日課のドラミングがうるさいと苦情が入り、薬物バナナによって懐柔されてしまった。今では日当バナナ一本で薪を割り続ける業務に従事している。恐らく、今後彼が日常生活に復帰することはできないだろう。

 そして最後はこの僕、グリットファーということだ。僕は別段タブーを犯したりはしていないが、たまたま今日が生け贄の日だったので、命を狙われることになった。なんとか立てこもる事には成功したが、既に追手が喉元まで迫ってきている。これ以上、彼らを振り切るのは不可能だろう。

僕は観念し――懐から手裏剣を構えた。

「「ニエーッ!」」武装村民が勢いよくドアを開ける!「シュッシュッ!」「「ニエーッ!?」」それと同時に、僕が放った手裏剣が彼らの頭部を破壊した!死んでいった仲間は知らなかったが、僕は忍者村で修業を受けた忍者大学生だったのだ!

「ニエーッ!」ズガガガガガ!マシンガン武装村民だ!狭い室内で戦うのは不利!僕は速やかに窓から飛び降り脱出を図る。「「ニエーッ!」」裏手から見張っていた村民たちだ。発見の合図をされてしまったが、「「ニエーッ!?」」間髪入れず手裏剣虐殺!

ササゲ村の住人は全部で70人。彼らは武装しており、一方で僕の装備は有限だ。こちらの戦力が先に尽きるか、それともササゲ村の住人が全滅するか……どちらにせよ、今宵この村で起きる出来事は後に「惨劇」として語られるであろう。

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