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コリジョン・スパーク
※この小説では絵文字が多用されます。
環境によって表示が異なりますが、あまり気にせずにお読みください。
😎 ☺ 😭
エモジオ!そこは絵文字たちが暮らすふしぎな世界。ヒトはいない。動物もいない。街を歩けばあちこちに顔アイコンの姿。そんな世界で流行っているのは……やはり魔札対決だった!
💥「オレに触れたら何かが起こるぜ!」
爆発頭がトレードマーク。スパーク!
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🌎「やれやれ、大地のありがたみを知るがいい」
クールな頭にシックなスーツ。アース!
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🍃「は……葉っぱの裏からトラップ発動!」
やさしい心にみどりの身体。リーフ!
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魔札対決が大好きな三人の絵文字たち。彼らの物語がいま、はじまる。
【コリジョン・スパーク】
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顔たちが元気に飛び回る道路、笑顔通りを三人は歩いていた。
💥「なあ、そろそろオレと決闘してくれよ?」
スパークが言った。
🌎「断る。ワタシは今、ロケットの開発で忙しいんだ」
何度も言わせるなとばかりにアースが断った。スパークの頭が小さくなった。
🍃「ま、まあまあ。スパークくん、またボクが相手するから……」
💥「お前のデッキ、オレのと相性悪いからなぁー」
リーフの申し出を、スパークは冗談めかして断った。そんなときである。
「グワーッ!」
ビルの向こうから、絵文字が1人飛ばされてきた!絵文字は3バウンドくらいして歩道に倒れた。あぶない!
🐧「う……うう……」
三人が駆け寄る。飛ばされたのはペンギンだった。
💥「大丈夫か?何があったんだ?」
ペンギンは震えながら答えた。
🐧「と、当然決闘を挑まれて……負けたら吹っ飛ばされて……あ、アイツは危険だ……」
🌎「誰にやられたんだ?」
アースの問いに答える前に、ペンギンは気絶した。
🍃「や、ヤバイよ。一体何が起きてるの?」
🌎「どうやら凶暴な奴が暴れているようだな」
こんな事は一度や二度ではなかった。絵文字には不思議なちからが宿っているが、時折暴走し、こうやって他の絵文字たちに被害を与えるのだ。
💥「絵文字を傷つけるヤツなんて、許せないぜ!」
スパークの頭が大きくなった。
🍃「こ、この人はあっちから飛んできたよね」
🌎「あのビルの向こうは河原だった筈だ。対戦フィールドのある場所だな」
💥「上等だ!」
スパークが言った。
💥「オレがそいつを倒してやる!」
💥 🌎 🍃
河原。絵文字たちの世界でもその風景は変わらず、端には川が流れており、無造作に生えた草むらの中に、長方形上に整地されたスペースがあった。その中央には頑丈そうなテーブルが置かれている……これが決闘テーブルである。
三人の絵文字たちが決闘テーブルへと駆け寄る。すると、頭上から突然一人の絵文字が降りてきた。絵文字の着陸と共に辺りには強風が吹き荒れる。スパークたちは踏ん張って風に耐えた。
🌀「……オマエ達が次の相手か?」
風が収まると、降りてきた絵文字が言った。
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💥「絵文字を吹き飛ばしたのはお前か!」
絵文字の問いを無視し、スパークが叫んだ。
🌀「フン……吹き飛ばしたというのは、どの絵文字の話だ?そいつか?それともこいつかな?」
絵文字が川方向を指さす。スパーク達は、そこに流れている絵文字の姿を見た。また、急いできたのでよく見えていなかったが、周囲を見渡すと、草むらの中にたくさんの絵文字たちが倒れている。
🍃「な、なんて……酷い!」
リーフの言葉に、風の絵文字は笑った。
🌀「俺の名はサイクロン。オマエたち、脆弱な絵文字を否定する者だ」
風の絵文字……サイクロンが名乗った。
🌎「否定するだと?何の権利があってそんな真似をするんだ。キミは神様絵文字になったつもりか?」
🌀「俺は俺であるがゆえに、だ」
サイクロン、傲岸不遜!
💥「なら……オレがお前を否定してやるぜ!」
スパークが言い放った。彼の頭が更に大きくなった。
🌀「面白い。オマエが俺の相手だな」
💥「オレの名はスパーク!いざ尋常に勝負だ」
一瞬の睨み合い。やがて二者はテーブルの両端につく。彼らが手をかざすと、そこにカードの束が生成された。これが魔札対戦用のデッキである!二者はゆっくりとデッキをシャッフルする。やがて、「ドーゾ」の掛け声とともに互いのデッキを入れ替え、混ぜ始めた。その光景を、アースとリーフが見守った。
🌀「よく切っておけよ。初手次第では、お前の寿命が少しは伸びるんだからな」
💥「へっ、その言葉そのまま返してやるぜ」
言葉の応酬。その間にもデッキを混ぜる手は止まらない。そして彼らはまたデッキを入れ替え、自分のデッキを傍に置いた。山札の上から5枚引き……先行後攻じゃんけんを行い……
💥「オレが先行でいかせてもらうぜ」
🌀「良かろう」
そしてついに……決闘の幕が上がった!
💥「「衝突!」」🌀
スパークとサイクロン、両者の周囲に強力な力が生じる。結界障壁と呼ばれる、魔札決闘でプレイヤーを護る盾である。これが破壊された時、そのプレイヤーは敗北となるのだ。
💥「オレはこの生物を召喚するぜ」
スパークがカードを場に置くと、どこからともなく火花を散らす妖精が現れた。カードによって召喚された生物である。
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💥「そしてカードを1枚裏側で伏せてターン終了するぜ」
スパークはそう言いながら、は手札のカードを1枚、フラッシュ・スパークの後ろに伏せた。
🌀「ム……」
💥「おっと、このカードがなにか分からなかったか?こいつは……」
🌀「知っている。罠・カードだろ」
サイクロンが伏せられたカードの種類を言い当てた。
🌀「罠・カード。予め場に伏せておき、条件が整ったときに初めて発動できる特殊なカード。コストの支払いが不要な分、発動条件を満たさなければ存意味のない難しいカードだ」
テーブルの端にて対戦を見守る二人が、サイクロンの説明に感心した。
🍃「す、すごい。その通りだ。まだ世に出て間もないカードなのに、ちゃんと把握しているなんて」
🌎「当たり前だ……と言いたいが、絵文字の中には情報収集を怠る者も多い。その点、サイクロンはその手の輩とは一線を画すようだな」
アースの言葉を聴いてか、サイクロンが笑った。
🌀「果たして、お前にその罠が使いこなせるかな?」
💥「言ってろ。さあ、お前のターンだぜ」
サイクロンがターン宣言し、1枚カードを引いた。
🌀「俺はこの生物を召喚する」
サイクロンがカードを出す。現れたのは、風をまとう剣士だった。
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💥「やっぱり、風系のカードを使うんだな」
🌀「ハリケーンシが場に出たこの瞬間、オマエの生物1体を手札に戻す。早速出てきたところ悪いが、フラッシュ・スパークには一時退場を願おう!」
ハリケーンシが風まとう剣を掲げ、スパークの生物に狙いを定め……そして小台風が発射された! 程なくフラッシュ・スパークに命中し……その瞬間、妖精がはじけ飛んだ。
🌀「なに?」
はじけ飛んだフラッシュ・スパークは、勢いのままサイクロンに突撃!
🌀「グワーッ! 何が起こった?」
💥「フラッシュ・スパークの能力さ」
スパークがニヤリと言った。
💥「こいつが能力の対象になった時……パーン! と自壊してお前にダメージを与えていくのさ!まあ、そのせいで手札には戻ってくれないけどな……」
出鼻をくじかれ、サイクロンの頭が少し大きくなった。
🌀「……だが、オマエを守る生物がいなくなったことに変わりはない!がら空きになったところに、ハリケーンシの攻撃を受けてもらうぞ」
💥「おっと、それは困るな」
そう言いながら、スパークは場に伏せていたカードを……裏返した!
💥「トラップ発動、タッチ・ボム!」
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カードは一瞬カッと光り、その後二体の火花となって現れた。生物を召喚したのだ!
💥「どうだ。これで攻撃はできないだろ」
🌀「なるほど……確かに、今のまま攻撃してはハリケーンシはお前の生物たちに阻まれてしまう」
サイクロンは悔しがりながら……しかしどこか、喜び混じりに言った。
🌀「少しはデキる絵文字でよかったよ。オマエとなら、退屈せずに済みそうだ」
そしてサイクロンはカードを伏せてターン終了宣言した……それも2枚!
💥「2枚のトラップだと!?」
そのプレイングには、流石にギャラリーの二人も唸った。
🌎「やはり、罠カードを既にデッキに組み込んでいたか」
🍃「ど、どうしよう。サイクロンって人、やっぱり手ごわいよ」
🌎「決闘が始まった以上、ワタシたちには見守ることしかできない……どうする、スパーク」
二人の視線を一身に受けながら……スパークが新たなカードを引いた。
💥「ようし、オレはスパーク・ピクシーを召喚!」
スパークが新たな生物を場に出す。
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💥「オレの場には3体の生物! こいつらで、サイクロンに攻撃だ!」
スパークの号令で、三体のスパーク・生物たちが突撃する。その様子はさながら三つのねずみ花火のようであった。
🌀「トラップに臆せず攻めてきたことは誉めてやろう。だが……トラップ発動!」
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サイクロンのカードが盾となり、スパーク・ピクシー1体を跳ね飛ばした。
💥「だが、ピクシーの能力で、新たな生物が場に出るぜ」
🌀「問題ない。今出たばかりの生物は攻撃に参加していないので……俺が受けるダメージは2体分!」
2体の火花がサイクロンに命中し、彼の結界障壁を僅かに削った。致命打には及ばないが、確かなダメージである。
💥「へへっ、みたか。このターンの攻防はオレの……」
🌀「どうかな。俺はここで第二のトラップを発動する」
サイクロンが2枚目の伏せカードを開いた。
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突如吹き荒れる突風! その風が、スパークの場の3体の生物をまとめて吹き飛ばしてしまった!
💥「そ、そんな! オレの生物たちが!」
🌀「クックック。そいつらはトークン・カード。本来のカードでないので、戻るべき手札がない。よって除外された! 今度こそ丸裸だな」
💥「くっ……」
スパークは完全に相手を侮っていたことを痛感した。サイクロンは、わざとハリケーンシを防御に回さず、肉を切らせて盤面一掃を狙ったのである。なんという策略であろうか!
💥「お前……強いな!」
今度は、スパークの頭が大きくなった」
🌀「分かり切ったことをいうな。さあ、次は俺のターンだ」
一進一退の攻防! 果たして、この決闘はどちらに天秤が傾くのか? 激しい戦いの行方を、リーフとアースは固唾を呑んで見守った。
サイクロンが激しい攻撃を繰り出し、スパークがサラリと躱す。今度はスパークが展開すると、サイクロンは華麗にそれらを撃退していく。そうした攻防が続き、ついに戦いは終盤へともつれ込んだ――。
🌀 💥 🌀
💥「オレの攻撃! いけ、三体の生物たち!」
スパークの号令。先ほどよりも更に強力な生物たちが、サイクロン目掛けて攻撃を仕掛けた。
🌀「……! 防御する。守れ、俺の生物たち」
ハリケーンシを含む生物たちが盾となった。結果、生物たちは破壊されたが、サイクロンはダメージを受けなかった。
💥「はじめて防御したな……オレはカードを1枚伏せてターン終了だぜ」
この時、スパークの場には生物たちと罠。一方、サイクロンの場はがら空きである。
🍃「すごい! あと一息だ」
🌎「いや、そう考えるのは早計だ」
テーブル端のアースが言った。
🌎「いよいよ戦いが終盤を迎えると、コストの重い強力なカードが使えるようになる。むしろスパークは、それまでに攻めきれなかったと考えた方がいいかもしれない」
🍃「す、すると……ピンチってこと?」
🌎「どうだろうな。どちらにせよ、ここが正念場だ」
ここまでの攻防で、互いにダメージを受けている。総量としては、サイクロンがやや深手を負っている状態だ。このまま不利な状況が続けば、スパークに押し切られてしまうだろう。そのようにアースは推測していた。
だが……サイクロンは多くの絵文字を倒した強者である。彼が今日行った試合の中で、常に優勢だったとは考えにくい。なにか、強力な逆転の一手があるかもしれない。
🌎(負けるなよ、スパーク……)
その時だ。サイクロンが高笑いを上げたのは。
🌀「アース、だったか? オマエの言う通りだ。このターンまでに俺を倒せなかった時点で、こいつの負けは決まったも同然なんだ」
💥「なんだと?」
スパークは激昂し、頭が赤く発光した。
🌀「今から見せてやるよ。俺のターン!」
サイクロンがカードを引くと、瞬間、強力な風が吹き荒れた。はじめて彼が現れたときと同じくらいの強さである。スパークとアースは踏みとどまったが、リーフは強風に煽られ少し後ずさった。
💥「すげぇ風だな。そのカードか? さっきから俺たちを飛ばそうとしてるのは」
🌀「そうだ。これこそ俺の切り札にして、最強のサイクロン生物。いでよ、サイクロン・ヘッド!」
サイクロンがカードを出した途端。大きな影がテーブルを覆った。なにか、とてつもないものが頭上にいる。スパークが恐る恐る見上げると、それと目が合った。巨大な雲の頭の双眼と。
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🍃「な、なんてでかいんだ……!」
リーフの頭が恐怖で萎びれた。
💥「こんな生物がいるのかよ……」
スパークもまた、感嘆の声を漏らした。彼が今まで戦った中で、最も巨大な生物だったからだ。
🌀「見た目に驚くのはほどほどにして貰おう。これから君たちは更に驚愕するのだから……サイクロン・ヘッドが場に出たとき、能力が誘発する!」
サイクロン・ヘッドの目が光った! すると周囲に大台風が巻き起こり、倒れていた絵文字たちが浮き上がり始めた。川に浮かんでいた絵文字も同様である!
💥「なんだ!? 何が起きているんだ?」
そして、スパークの場にいた生物たちもまた、問答無用でスパークの手札へと強制送還させられた!
💥「なっ!? う、ウソだろ!?」
🌀「嘘ではない。これがサイクロン・ヘッドの能力だ!」
台風はしばらく吹き荒れた。アース達は飛ばされないように耐えるので必死だった。リーフも今度はテーブルの脚に必死にしがみついた。そして台風を使役するサイクロンは宙に浮かび、まさに全能の神のように両手を広げた。
🌀「何度目かのがら空きだな、スパーク……サイクロン・ヘッドでオマエに直接攻撃だ!」
サイクロン・ヘッドの両目が再び光った! 台風がスパークを目掛けて収束し、強風が叩き込まれスパークは大きく吹き飛ばされた!
💥「グワーッ!」
彼の結界障壁はなんとか保ってはいるが、次になにか攻撃を喰らえば割れてしまうほどにギリギリの状態だ。まさに絶体絶命のピンチ!
🌀「もういいぞ、サイクロン・ヘッド」
サイクロンの号令と共に、巨人が目をつむる。強風が止み、宙に飛ばされたもの達がタワー状になって草むらに積み重なった。
🌎「なんて力だ。これほどの絵文字がいたとは……」
サイクロンの強力さを目の当たりにし、アースは戦慄を隠せなかった。彼がこぼした言葉を耳にし……サイクロンは、ひどく残念そうにつぶやいた。
🌀「オマエとは、楽しめそうにないな」
🌎「…………ッ!!」
恐怖を見透かされたことで、アースは愕然とした。
「……なあ」
その時。遠くまで吹き飛ばされたスパークが、よろよろと起き上がった。
🌀「立ち上がったか、スパーク! 今の一撃で戦意を失わなかったのはお前がはじめてだ」
サイクロンが感心したようにうなづいた。
🌀「だが、次の一撃でオマエも沈む。俺はカードを1枚伏せて、ターンを――」
💥「こんなすげえ力を手に入れたのに、お前、なんだか寂しそうだな」
🌀「え……」
スパークの思わぬ発言に、サイクロンは言葉に詰まった。何故だろうか。スパークは飛ばされてまだ遠くに立っている筈なのに、彼の言葉はくっきりと届いていた。
💥「なあサイクロン。お前ほんとは暴れたかったんじゃなくて、誰かと思いっきり全力でぶつかりたかっただけだったんじゃないのか?」
🌀「な、何を言い出すんだ」
💥「ホントは遊びたいだけなのに、誰もお前の全力を受け止められないからって、不貞腐れて……でも、そんな態度じゃ誰も遊んでくれないぜ」
スパークの声色は今までになく真剣だった。それ故に、サイクロンは下手に誤魔化すことができなかった。
🌀「だったら、だったら何だって言うんだ。お前が俺を受け止められるとでも言うのか? 絶体絶命の窮地に立つお前が!」
💥「ああ……やってやるぜ!」
スパークは力強く断言した。
💥「オレが勝ったら、今まで迷惑かけた絵文字たちにちゃんと謝れよ。そんで、それが終わったら……オレとトモダチになってもらうぜ!」
🌀「…………」
サイクロンはしばし絶句した。周囲の風が、少し小さくなった。
🌀「なら、やってみろ。俺の全力、受け止めてみろよ」
サイクロンが言った。
🌀「俺はカードを1枚伏せて、ターン終了!」
先ほどと同じ宣言を、サイクロンは力強く言った。
🍃「スパークくん……!」
リーフが駆け寄ろうとしたが、スパークが片手で制した。
💥「まだ勝負は終わってないからな。いくぜ」
スパークはクラウチングの構えを取り……テーブルに向かって駆けだした! その頭はいよいよ金色に発光しており、まるで駆ける流れ星のようであった。
💥「オレのターン……ドロー!」
そして。テーブルに辿り着いたスパークが、勢いよくカードを引いた。しばし息を整え、そしてサイクロンへと向き合った。
💥「今度は、俺のエースカードを見せてやる」
スパークがカードを天に掲げた。眩いほどの火花を散らすカードであった。カードがテーブルに置かれると、火花は龍の形を象り始めた。今にも割れそうな無数の風船のついたドラゴンを!
💥「来い、コリジョン・スパァァァークッ!!」
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🌀「この瞬間、トラップ発動!」
サイクロンが伏せていたカードを開いた。雲の槍!
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🌀「このカードの効果で、コリジョン・スパークを手札に戻す! 高コストの生物故に、このターン中の再召喚はできない。残念だったな」
なんと狡猾な罠か!せっかく出たばかりのエースカードを、すぐに退場させようというのだ。だが、これが勝負の無慈悲さである。
💥「構わねぇ。今、対象に取ったよな」
スパークがニヤリと言った。サイクロンもまた笑った。
💥「コリジョン・スパークの能力はランダムな敵へのダメージ。そして……別の『スパーク』を対象に取る能力!」
コリジョン・スパーク・ドラゴンの風船の一つが炸裂し、爆発がサイクロンを襲った。そして、爆風が誘爆し、新たな風船もまた爆発しようとしていた。
🌀「くっ……だが、そんな強力な能力が連鎖するわけがないだろう」
🌎「確かに、その通りだ」
観客席のアースが言った。
🌎「無限ループ防止のため、コリジョン・スパーク・ドラゴンは連続で自分を対象にし続けない特殊裁定が下っている。よって、このままではループが止まり、サイクロンを倒すことはできない」
アースはスパークを見た。既に震えは止まっていた。
🌎「だが、これで終わりじゃないだろう?」
💥「ああ、勿論だ!」
スパークが新たな魔札を天に掲げた。呪文カードである!
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カードの効果を受け、スパークの結界防壁が金色に光り、無数の火花が現れた!これまで受けたダメージが、新たな生物となって誕生したのだ!
💥「コリジョン・スパークの爆発は今産まれた火花たちに誘爆する。そして……!」
爆発を受けた火花が誘爆し、サイクロン・ヘッドへと振りかかった。そしてその残滓がコリジョン・スパークの風船を更に割ったのだ!
💥「『スパーク』は対象に取られた時に自壊して、ダメージを炸裂させる。そしてコリジョン・スパークのように、新たな『スパーク』に連鎖する!」
ドラゴンの風船が爆発し、周りの火花たちも連鎖爆発! 相互に干渉しあう能力が続き、サイクロン・ヘッドを、そしてサイクロン本人にダメージを与えていく。しかし、何よりも――
「……綺麗だ」
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無数の色彩に彩られた、輝かしい無数の爆発。その光に包まれて、サイクロンの結界障壁が破られた。
スパークの勝利で、決闘は幕を閉じた。
💥 🌎 🍃 🌀
🌀「俺の……負けだ」
サイクロンが静かに言った。
🌀「でも…………楽しかった。あんな決闘、生まれて初めてだ」
💥「なっ? ちゃんとぶつかりあえると楽しいだろ?」
スパークが笑った。
🌎「見ていて危なっかしい、ハラハラする決闘だったがな」
アースが苦言を呈した。
🍃「まあまあ、無事に終わったんだからさ」
その苦言をリーフが窘めた。しばしの静寂。やがて、サイクロンが口火を切った。
🌀「改めて、俺とトモダチになってほしい。また、あんな楽しい決闘をさせてくれ」
💥「何言ってんだ。一緒に遊んだんだから、もうトモダチだろ?」
スパークとサイクロンは固い握手を交わした。生まれて初めての温かい手の感触に、サイクロンの頭は少しふにゃふにゃになった。
💥「でも次遊ぶのは、皆にごめんなさいしてからな」
🌀「そうだな。かなりの絵文字に迷惑をかけた。謝ってくるよ、全員に」
ふわりと、サイクロンの身体が宙に浮かんだ。初めて会った時のような荒々しさはもうなかった。
🌀「また会おう、スパーク! アース! リーフ!」
サイクロンは浮いたまま、どこか遠くへと飛び去って行った。その後ろ姿を、三人の絵文字たちは手を振りながら眺めていた。やがて、その姿がほとんど見えなくなった頃。
「……帰ろっか」
「うん」
誰からともなく、そんな話が出た。
お日様🌞はとっくに沈みかけで、空は夕焼け色どころか少し陰りを帯びていた。そんな中、三人の絵文字たちが帰路についていた。
🌎「なあ、スパーク。明日なら、ワタシが決闘相手になってやってもいいぞ」
突然、アースが言った。
💥「おいおい、どういう風の吹き回しだよ? まあ、オレはいつでも大歓迎だけどな!」
🍃「ぼ、ボクも新しいカード手に入れたから、決闘したいな」
リーフもおどおどと言った。
💥「そういう事なら、明日は決闘大会だな!」
スパークが笑い、他の二人も釣られて笑った。まだまだ自宅まで距離があったので、最近増えたカードの話とか、強い絵文字の噂話とか、そういう会話が弾んだ。やがてリーフが分岐路で分かれ、アースとスパークも別々の道に分かれた。
また明日も、三人は集まって楽しく遊ぶだろう。この輪の中に、あの四人目が加わる日もきっと遠くはない。でも、その話はまた、次の機会に――。
【コリジョン・スパーク】 終わり
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