憧れの人
・高円寺にある本屋・蟹ブックスで開催された、品田遊『納税、のち、ヘラクレスメス』のイベントに行ってきた。品田遊さんと、作家であり蟹ブックスのスタッフでもあるphaさんのトークショーだ。予約の段階ですごい激戦だったようで、行けることが決まってからずっと「品田遊さんに会えるの!? 蟹ブックスで!?」という奇跡を噛み締めていた。ご縁に感謝。
・今回は対面でサイン会も行われるそうで、「品田遊さんと対面!? はわわわ……」となったが、せっかくの対面なら変に恐縮せずできるだけ対等にお話しするのがいいかと思い、当日まで品田さんの過去の著書や日記を読み返していた。推しを神格化してしまうのがオタクの良きところであり、悪いところだとも私は思っている。文章という、書いた人の人となりが最もにじみ出る媒体にあらかじめたくさん触れておけば、目の前に品田さんが現れてもきっとド緊張せずに済むと思ったのだ。まぁ無理でしたけどね!!!!!!(ネタバレ)
・イベント記事が出るそうなので、具体的な内容は控えめで私個人の感想のみです。全部が全部に「※個人の感想です」が付いているものと思ってください。
・トークショーが始まる。品田さんとphaさんのおふたりが10歳ほど世代が違うと聞いて、少し驚いた。まぁよく考えればそうなんだけど、往々にして「ネットの人」は年を取らない、そもそも年齢不詳気味な印象がなぜかある。
・品田さんの日記について、「取り止めのない」というワードがトークの中で出てきて、そうそうそれ! と思った。「取り止めのないことを書き連ねていい」がまさに形になっているのが、品田さんの日記だと思う。個人的に「取り止めのない」が一番印象に残ったワードだった。そうそう、取り止めのないことで一日はできてるんだよ。
・私の場合、品田さんの「箇条書きにする」という日記の形を真似させて貰うことで、noteに日記を書くハードルがかなり下がった。品田さんの日記おかげで、noteが続けられる活路を見い出せたと言っても過言ではない。
・トーク中、歌人の穂村弘さん、木下龍也さんのお名前も出てきた。短歌の本をちょっとでも読んでてよかった。
・phaさんが「品田さんの日記って、『疲れてるので今日は短め』からが長いですよね」と言った件については完全同意だった。こちらとしては読む量が増えれば増えるほど嬉しいです。
・質問の時間もあり、せっかくの機会なので質問させていただいた。具体的な内容は伏せるが、私の質問を聞いて品田さんが「すごい本質を突いた質問ですね……ちょっと考えたい……」と言った。難しい質問ですみません、でも聞きたかったんです。そして質問に答えていただいたあと、品田さんが「こういったお答えで、よろしいでしょうか?」と私の方に体を向けて言う姿を見て、それだけで心臓がバクバクした。「ありがとうございます……(感動)」の声が震えちゃったよ。自分、こういうとこオタク全開だ。
・品田さんのお話を聞いて、「あ〜、当たり前だけど『人』だな〜」「ちゃんと『人』だ……」と思った。葛藤したり、悩んだり、コンプレックスを感じたり、気分に左右されたり、日々学んだり。驚くくらいに自分と同じような「人」を感じた。「憧れの方はずっと憧れの方」と思っていたけど、今回のトークショーで以前より少しだけ品田さんを近く感じた。おこがましいですけどね。
・トークショーの後はサイン会が実施された。自分の番が来てサインをいただく。「質問、答えていただいてありがとうございます」とお伝えすると、「いえいえ、本質を突いた質問ありがとうございます」と言っていただいた。嬉しい。小説家、文章を書かれる方に「本質を突いている」と言われるのは……うん、すごくすごく嬉しい……。ただ、品田さんが仮面を付けられているのをいいことに、お話をしているときにめちゃくちゃ目を見てしまった。自分の「伝えたい!」気持ちが先行しすぎたかもしれない……。
・でも、伝えたいことをちゃんと決めてから臨むのは正解だった。私はサイン会や即売会などの「普段応援している人と会える」貴重な機会では、伝えることをあらかじめ決めて行くようにしている。ノープランで行って「緊張して何も言えなかった……」という苦々しい経験を幾度も経ての対策だ。自分本位ではあるが、せっかくお会いできた人に何も伝えられないのが私は嫌なのだ。私は、好きな人への思いはできるだけ伝えられる人間でありたい。
・他の人が聞いているところで質問をするのも心臓バクバクだったけど、1対1でサインを貰うときも緊張していた。服の上から左胸あたりに手を置くと、ここ最近で一番心臓が鼓動しているのを感じた。胸に手を当てるとドン、ドンと皮膚が下から強く突き上げられているようで、比喩じゃなく本当に心臓が飛び出そうだった。サイン中、そんな緊張しっぱなしの私に優しい目を向けてくれる品田さんを見て、あ、嬉しいなとふと思った。緊張より嬉しさが勝ってしまう。うーん、今思い出してもめちゃくちゃ嬉しい。品田さんからの「お互い頑張りましょうね」という言葉は、たぶんずっと忘れないだろう。
・帰り道では気持ちがホクホクしていた。面白かった話、納得いった話、ぐぬぅ…となる話、いろいろあって、トークショーって楽しいな! と純粋に楽しんだのもあるが、「サインのときめちゃくちゃ目を見てしまった……」「あの品田遊さんとお話できたんだ……」というドキドキが止まらず、なんかずっとふわふわしていた。
・憧れの人は、思っていた以上に自分とほど近い「人」で、それがなんだか嬉しかった。一方で憧れの方は憧れのまま、距離が近付いてもやっぱり素敵な方だった。両方の気持ちが混在している。どっちなの?
・どっちも本当だ。近付いた気がするっていうのも、やっぱり憧れるっていうのも、どっちも本当なんだよ。