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ニューヨーク駐在記録「いわゆる駐妻」

渡米して数カ月。足りない家具を買いそろえ、日本から送った荷物も届いて、家の周りのこともだんだんわかってきて、少し慣れてきたころだった。
私は日本人ママが集まる子連れヨガに通っていた。先生も含めて全員日本人だし、子供二人を連れて行かれるヨガなんてそうそうない。下の子が泣いていてもOKだし、上の子は私と一緒になってヨガを楽しんでいた。
そして、ヨガとは関係ないけれど、日本人の集まりに参加すると、日本人ならではの情報(餃子の皮が○○で売っている、××のスクールには日本人がいるなど)が手に入るので、私は重宝していた。

そこで、私は同じアパートのママと知り合った。彼女は私と同時期にNYに来て、週に1度、アパートのママたちを集めてお菓子作りの会をしているそうで、私ももれなく誘われた。私はお菓子作りに興味はなかったけど、アパート内に知り合いを増やすのは悪くないと思い、参加することになった。

当日、私が子供達を連れて彼女の家に伺うと、他に2組の親子が参加していた。そこで、彼女はお菓子を作りながら、私に「うちは●●に勤めてて、あの人の旦那さんは○○。あそこの人の旦那さんは△△で、ヨガに来てる××さんは□□に勤めてるの」としゃべってきたのだ。
それを聞いて、あぁやっちまった…と思った。私は初対面の人達の旦那さんの会社名なんてどうでもいい。大体、駐在に来ている人は金融、商社、メーカーが多いだろうし、聞いたところで、ふーんって感じだった。
適度な距離を取らねば駐妻の沼にはまってしまう。私は彼女を警戒した。

しかし、私にいやいやオーラがでていたのか、彼女も私と気が合わないと思ったのか、その後、お菓子作りに誘われることは二度となかった。そして、つかず離れずの関係を続けたところ、一年もしないうちに彼女は日本へと帰っていった。

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石森のぶ
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