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ニューヨーク駐在記録「もしかして、インフル?」

アメリカの医療システムは複雑だ。加入している保険内の医者を探す必要があるし、基本的に予約制で、場合によっては一週間先になることもある。専門の医者にかかる場合はかかりつけ医の紹介状が必要だ。日本のように、好きな時に好きな医者にアクセスできるわけではない。大人だったらurgent careと言われる急病診療所でもいいかもしれないが、子供はそうはいかない。頻繁に風邪をひくし、予防接種もある。
NYCでは日本人の小児科医はいない。よって、自分の保険内で近隣の現地の小児科医を探す必要があった。しかし、当時の私は保険の仕組みを理解できていなかった上に、差し迫った用がなかったので、若干のんびりしていた。
しかし、そんなある日、息子が発熱した。翌日に下がったが、その次の日にまた上がってしまった。ここで自分の中に一つに疑惑がわいた。
もしかして、インフル?
でも、日本で保育園に通っていた時も感染したことがないし、渡米前にインフルの予防接種は済ませたし、何より息子はまだNYでは幼稚園に通っておらず、週に1度、幼稚園のアフタースクールとスーパーや公園に行くぐらいだった。この状況でインフル?と思ったが、この熱の上がり下がりはおかしい。
私は急に焦りだし、日系病院の家庭医(家庭医は小児科医ではないが、内科、皮膚科、小児科、婦人科など総合的に診てくれる)を調べて、電話をかけた。電話にでた女の人は日本人で、その日の午後に予約が取れるという。夫は仕事で不在だったため、私は早速タクシーの乗り方を調べて、子供達二人を連れて病院に向かった。
日系病院の中は日本人しかいないようだった。受付や看護師さんに日本語で話しかけられ、診察室に通された私は、ほっとしてうっすら涙がでてきた。それを見た看護師さんは「もう大丈夫よ。大変よね」と私を励ましてくれた。
少し待つと、医者が部屋に入ってきた。自分の父親ぐらい歳のいった、ちょっとおじいちゃん先生だった。そこで、インフルエンザの検査をしたのだが、検査結果を見た先生が「インフルエンザじゃないねぇ」という。ほんとに?
「え、先生、ここに線が入ってますけど、これはなんですか?」
「これは、インフルエンザB型だよ」
「線、入ってますけど」
「お母さんがそういうならインフルエンザだねぇ!タミフルだしておこう」
そんなわけで、息子のインフルが確定。薬局でタミフルを受け取り、私たちは帰宅した。
しかし、事件はこれからだった。

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石森のぶ
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