ニューヨーク駐在記録「チックの再発」
新学年開始直前に始まった息子のチックはだいぶ落ち着いていた。クラスに仲の良い友達ができて、週に何度も放課後に遊んでいたし、以前よりは英語を理解できるようになっていたからだと思われる。
でも、いつの間にかチックが再発していたのだ。ちょうどそのころ、息子が私によく話していたのが、学校の休み時間でのトラブルだった。
息子はクラスの男の子たちと毎回サッカーをしていたらしい。しかし、そのうちの数名がチート(いわゆるズル)をしているというのだ。息子はそのたびに注意をするらしいのだが、その子達はチートではないと言い張るうえに、息子の話を最後まで聞いてくれないという。
私は本当に彼らがチートしているかどうかはわからない。なぜなら、そのチート疑惑の男の子たちはサッカースクールに通っていて、サッカーを習っていない息子よりルールもよく知っているのではないかと思ったからだ。
それに、その子達が最後まで息子の話を聞かないのは、息子の英語力が拙いせいもあるかもしれない。なんせ、1年生に上がってようやくセンテンスを話せるようになったばかりなのだから。
そうはいっても、息子にとって彼らはチートをしているし、自分の話を聞いてくれないということに変わりはない。
私は息子がこの話をするたびに「うん、うん」と聞いていたのだが、少し経つと全く話題に上らなくなった。
それに気づいたある日、私が「最近、チートのことはどうなったの?」と聞くと「ぼくはサッカーやるのをやめた。みんなはまだサッカーをしているけど、ぼくは抜けたんだ」と言うのだ。その代わり、他の男の子と追いかけっこして遊んでいるらしい。私は「そっか」と一言。まぁ、そういうこともあるよね。
後日、休みの日に息子と近所を歩いていると、息子がチートしていると言っている男の子の一人とすれ違った。その子は自分から息子に「Hi」と挨拶をして去っていった。彼らの関係が悪化しているわけではないことに、私はほっとしたのだった。