ニューヨーク駐在記録「緊急入院!NYのER~前編」
2018年某月のある晩。
なんだか右腹部が痛い。しかも一過性ではなく、鈍い痛みが続く。これは夫に相談すべきか?でも、今話したところで何も変わらない。それに、明日になれば治っているかもしれない。そう考えて、私は布団に入った。
しかし翌朝も良くなるどころか、痛みは増すばかり。これは嫌な予感がする。CityMD(近所のUrgent Care)に行くべきか?いや、これはCityMDでどうにかなる痛みではない。
私はすぐに寝ている夫を起こし、昨晩から腹痛が続いていること、とりあえず息子を学校に送って行ってほしいこと、そのあとに自分を近くのERに連れて行ってほしいことを伝えた。(日本だったら一人で救急外来に行くところだが、あまりの痛みに英語を落ち着いて話せる自信がなく、夫に帯同してもらうことにしたのだ)
夫は私がただならぬ様子であることをすぐに理解し、急遽仕事を休んで息子を学校へ送っていくと、私と娘を連れてタクシーで一緒にマウントサイナイ病院のERに向かった。
我々はアメリカのERは初めて。入り口で症状などを聞かれると、付近で15分ほど待たされた。そのあと、ようやく中に入れたが、そこでまた15分ほどまた待たされた。そして、看護師に呼ばれて熱や血圧などを測ると、また廊下で放置。
日本領事館のHPにも記載されているが、NYのERは混雑していて数時間待たされることはザラなのだ。私は身をもってそれを体感したわけだが、痛みはひどくなるばかり。ふと周りを見渡すと、なんでERに来たの?というくらい元気に電話している黒人のおばちゃん、井戸端会議のように楽しそうにおしゃべりしているヒスパニックの家族…。ERの廊下だというのにとにかく賑やかでうるさい。なんなんだ。ここはカフェじゃないんだぞ!と増していく痛みと戦いながらイライラ。それとは対照的に、私の隣の白人マダムはタオルで額を押さえながら、とても痛そうにだまって座っている。どうやら額をざっくり切ってしまったようだ。彼女は私と同時くらいにERにきたが、彼女もまた全然呼ばれない。
とにかく早くしてくれ…。私は1時間ほどおとなしく待っていたが、痛みはどんどん増すばかり。一体、どうなっているんだ、ここは!もう我慢の限界だった。私は夫に頼んで、痛みが悪化していることを通りかかった看護師や医者に何度も伝えてもらった。すると、ようやく名前を呼ばれ、診察室に入ることができたのだった。
診察室では医者に「痛みを1~10で測ると(1が最も弱い)どれくらいか?」と聞かれたので、私は「6~7」と答えた。(私の中で10は陣痛レベル)
すると腹部の検査をするからと、検査服に着替えさせられ、ストレッチャーに乗せられた。そして「痛み止めのモルヒネを打つから!」とさらっと医者に言われた。
モルヒネ!?私は昔見た映画「東京タワー オカンとボクと時々オトン」を思い出した。たしか末期がんになった樹木希林演じるオカンがモルヒネを打たれてた…。って、そんな状況なの?でも、痛いし、とにかく英語で質問する気力も体力もない。というか、この時は日本語で会話するのもしんどい状態だった。
私が内心動揺しつつ黙っていると、隣にいる看護師が新人なのか「私、モルヒネ初めてなの。怖いわ~」と言うのだ。ちょ、ちょっと!それはこっちのセリフだよ!それに、直接患者にそんなこという看護師ってどうよ?大丈夫か、この病院?(ちなみに、このマウントサイナイ病院はNY最大の医療機関グループであり、併設の医科大学は医学部ランキングで全米20位らしい)
私はものすごく不安だったけど、モルヒネを打たれたおかげですぐに痛みが取れたのだった。(後編へ続く)