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愛ゆえに

 私はその液体を、眺めていました。
 人差し指と親指でつまんだその袋の先っぽに、それは入っています。
 私はその袋を自分の目の前でゆらゆらとゆらし、眺めていました。

「いっぱい出たね」
 と私は言います。
「うん、いっぱい出た」
 と彼が言います。
「どのくらい、入っているのかしら?」
「2.5cc」
「え?」
「成人男性の一回に送出される液の量は2.5cc。10ccというロックバンドのバンド名の由来は、メンバーが4人だったから」
「4人で10cc?」
「そう、4人で10cc」

「だったらあと3回で、あなたは伝説のロックスターになれるわね」
 と言って私は微笑みます。
「僕を伝説のロックスターにしてくれるの?」
「あなたがお望みならね」



おわり。

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