Six Ws
When(いつ)、Where(どこで)、Who(誰が)、What(何を)、 Why(なぜ)、How(どのように)
光の乏しい朝に、ローソンの駐車場で、金髪と黒髪のふたりが、すばらしくはない歌声を録音した、ローソンの駐車場で歌うのがすきだから、ローソンの駐車場によく響くように
冷凍炒飯の期限が切れるころ、舗装工事を終えた道路で、おかしな男女が、プードル誘拐計画を立てた、本を読んだことがないから、靴の底をやぶるような走り方で
ちいさな火がつく瞬間、労働の町で、レクサスとよく似た名前の人物が、ポップソングの歌詞を思い出した、同僚の吐瀉物が指のすきまからこぼれたから、鳥の思考のように
古い王の死後はるか、死者を描いた絵の前で、死者以外が、肺の底から咳をした、雪の出発点を想像してしまったから、舌の根を引き抜くように
少年が精通する前夜、土と砂ぼこりの島で、物憂げなピアノ調律師が、自身の肉体をしばらく回転させた、地球の自転に対抗するため、頬を風に歪ませながら
巨人が眠るのを待つあいだ、すっかり老いさらばえた泉の淵で、長距離ランナーが、よき天使に出逢った、心があるから、信じられないといったふうに
鳥獣追いの季節に、ノンシュガー飲料ばかり売る商店の前で、死刑執行人志望が、盲目の人間はまばたきをするかどうかの議論をした、口が言葉を好むから、喉に雫を垂らしつつ
ぱっとしない短針の示す時刻に、白い草だらけの広場で、デンティストたちは、すべての言語が字幕になっている映画を観賞した、無神論者だから、あらゆる文句を垂れ
英和辞典を爪先に落とすまでの一瞬、薄汚い窓の近くで、生涯で一度も揚げ物になったことのない人物は、自らが海賊になるべき27の理由を発見した、聡いから、はっとして
カンガルーが偶然ページをめくるまでの待ち時間に、伝統的なトンネルで、トリックスターが、チョコレートをほおばった、グッドな気分だったから、意外にも奥歯を使って
あなたがロイ・リキテンスタインを知る以前に、ここで、わたしは、蛍光灯のための詩を書いた、読めるものが手元になかったから、伸びきった髪を整えるように
ドイツの春に、ドイツに、ドイツの人が、ドイツ人の思うドイツにとってふさわしい行為をドイツにした、ドイツの上だから、ドイツの思うドイツ人のように
月明かりだけで歩ける夜に、森になりたい木の周辺で、雌雄が、断頭台の上で眠った、ベッドとして使うことしか思いつかなかったから、耳を月の表面に向けて
もっとも非人道的な秒数に、冷凍庫のなかで、手足や胴体や首が、気温についての話題で談笑していた、暇だったから、新品のサッカーボールを手にした少女みたいに
九九を唱えている隙に、ちょっとしたモーテルで、グーグル社員が、偽物の聖書を売りさばいた、昔からの習慣だったから、べらぼうな背の低さを活かしつつ
当初、野球禁止の公園脇で、糊の効いたスーツを着た藤山が、金切り声の幻聴を追いかけた、自分の声とセッションをしたかったから、太った腹を抑えながら
海の染みた夏、おおきな建物内で、学生たちが、ユリシーズについてのみ問われるクイズ大会に参加した、父親の影響で、最高のマカロニスープを啜りながら
正しい十一月に、探偵事務所で、トレンチコートの青年が、紅茶に浸った客船チケットを受け取った、奇妙な依頼者に脅されたから、鳥籠に猫を飼うような気分で
卒業式の日、デッドモールで、一対のうち片方が、片方の写真を撮った、米国の写真家になりたかったから、アルマジロのような顔をしていたので思わず笑って