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献花
地下鉄に乗ってなんとなくぼんやりと座ってたら、
突然頭の真上に水がポツンと落ちてきた。
冷たかった。
何が起こったか一瞬わからなくて、服に飛び散った水滴を見て、瞬時に涙だと思った。
どこかの誰かの涙だ、と思って目を見張った。
今日も酷暑の京都では、
地下鉄はとても冷房が効いていて外とは大違いだし
結露した水滴がたまたま落ちてきただけなんだと思う。
偶然、いまこのタイミングで、そうなってしまっただけのこと。
座った位置が悪かったのかもしれない。
乗った電車が悪かったのかもしれない。
全てが悪くて、全てが悪くない。
の、かもしれない。
でもこの冷たい水滴は、私にとっては誰かの涙で
わたしも、いまは避ける手段を持っていない。
ポツンと冷たい水が落ちてくる。
降りる駅はどこにあるのだろう。