読書感想:異文化理解力③ 説得の方法の違い

読書感想:異文化理解力②の続き。
今回は主に第③章についての感想。

第③章では、説得の方法についての違いが言及されている。
原理優先か応用優先かに違いがあるという。

原理優先は理論重視の演繹的な説得方法。なぜそうなのかを一つ一つ下から積み上げていくイメージ。

応用優先は結論重視の帰納的な説得方法。主に実例などを示し、結論を先に示してから、その結論を補強する要素を追加していくイメージ。

原理優先の国はフランスやドイツといった大陸合理論の国々。
応用優先の国はイギリスやアメリカといった経験論の国々。

では、我らが日本はというとアジアの国々は西洋文化圏とは特色が違うため、包括的思考か特定的思考かという異なった観点から考える必要があるらしい。

包括的思考は我ら日本を含むアジアの国々に多く、特定的思考は西洋文化圏に多いとのこと。

包括的思考は全体像を重視し、相互のつながりや関わりあいに注目する。
例えば、意見を聞かれた時に上司の顔色を伺ったり、周りの環境や雰囲気、状況を気にするといった例が本書ではあった。

特定的思考は全体を個別に分解・分析し、役割を明確に分けようとする。
西洋人とアジア人で「ある人物の写真を撮れ」と言われた時に、アジア人は部屋の背景も含めた全身を映すのに対して、西洋人は顔の周辺のみを撮る違いがあるとあった。特定的思考は背景や環境よりも事物そのものに注目するらしい。

なるほど。私は特定的思考だな(常に周りの逆をいく天邪鬼)。
原理優先か応用優先かは原理優先の方が好きだけど、応用優先で仕事をしなくてはならないことが多いから、どちらとも対応できるかなといった印象。

これまでの章と比較すると、この章は比較的テクニックでどうにかなりそうな感じがした。

応用優先のテクニックとしては、SDS法やPREP法といった分かりやすい文章を書くテクニックが正にそれだ(ただ、ここでいう”分かりやすい”は応用優先の人に対してのみで、原理優先の人からしたらそうではないというのがポイント)。

原理優先は義務教育過程で学習してきた、数学の証明や国語の読解力テストで鍛えられてきたものがそれにあたるだろう。

日本人においては、応用優先と原理優先のスイッチを比較的上手く切り分けている印象(少なくとも”デキる”と言われている人たちは)。

包括的思考と特定的思考については、確かに包括的思考が優位であるなとは感じる。
だが、包括的思考が優位というよりも、特定的思考でやろうとするも、包括的思考が足を引っ張って、あるいはうまく特定的思考ができずに上手くいっていないのが実状と見えるのは私だけだろうか。

よく見る光景としては、何かやらなくてはならないプロジェクトだけは決まる。しかし、誰がそれをやるのか、最終的に誰がゴーサインを出すのか、はたまた、具体的にそのプロジェクトでやることはなんなのかはいっこうに決まらない。包括的思考なのかどうか分からないが皆周りの様子を伺うのである。結果的に誰かがしびれを切らし特定的思考のアプローチ(役割分担等)を行いようやく動き出すといった感じである。

本書では「意見の対立が起きたときにどう対処するか?」という質問に対し、中国人(包括的思考)が「もっと信頼関係を築く努力をした方が良い」と答え、著者(アメリカ人、フランス在住:特定的思考)が質問とは関係のない(と思った)回答をしたことに困惑したという一幕があるが、私がよく感じる違和感とはこれと似たようなものだろうか。

包括的思考はメンバー全員の意思疎通が円滑に行われていれば、互いに連携がスムーズにとれパフォーマンスが高い活動が行えるのであろう。しかし、昨今の変化の早い時代やコミュニケーション方法の変化(テレワーク等)により、時間をかけての意思疎通や信頼関係の構築が困難であるため、アジアの国々の人々にとっては不利な状況なのかもしれない。

この章について完全同意するものは以下の引用である。

「人は自身の思考パターンに自覚的でない場合が多いことで、そのため自分とは違う思考パターンをネガティブに判断してしまったりする。」p135

私は何らかの問題や課題に対応するためには、その問題を自覚(認識)しなければ始まらないと考えている。よって、日々知識を蓄え自らが囚われている固定概念や思考パターンに自覚できるようにする努力を続けたいと思う(自覚できた後はさらに自身の影(シャドー)との対決が待っているのであるが)。

本書に問わず、自身の思考を客観視できる書物は人生に気づきを与えてくれる。個人的にはインテグラル理論(有名な「ティール組織」「なぜ人と組織は変われないのか」のネタ本)が特に好きであるが、きっかけはなんであれもっと多くの人が思考の檻から抜け出せると面白い世界になるのになと感じている。

今回はここまで。
④につづく。


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