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Vol.183 高額療養費制度の改悪に待ったを
*2025年01月31日発行のメルマガから転載
大変遅ればせながら、新年あけましておめでとうございます。
(旧正月的には、ちょうど良いタイミングかもしれません)
私は例年通り、蓼科の山中で新年を迎えました。今シーズンはしっかり雪が積もって寒さも厳しく、近所の女神湖は年末時点で完全に凍りついていました。
毎冬「氷上ドライブ」が体験できるような湖で、その氷の厚さもご想像いただけるのではないかと思います。
イシュランメルマガ2025年初の発刊ということで、今号は、毎年恒例の日本のがん治療医”Warm 30”<2024年版>を発表します。
また、どなたでも3分以内にお答えいただけるアンケートがあります。
どうぞご協力いただけますよう、お願いいたします。
それでは、本年も変わらぬご愛読を、よろしくお願いいたします。
【記事1】 毎年恒例、日本のがん治療医”Warm 30”<2024年版>発表!
イシュラン毎年恒例の、「日本のがん治療医”Warm30”」2024年版が出ました!
・乳がん https://www.ishuran.com/trophies/2024-warm30-breast
・血液がん https://blood.ishuran.com/trophies/2024-warm30-blood
・婦人科がん https://women.ishuran.com/trophies/2024-warm30-women
・肺がん https://lung.ishuran.com/trophies/2024-warm30-lung
“Warm30”は「コミュニケーション・タイプの投票」「感想の投稿」「サンキューレターの投函」を、イシュラン独自の観点でポイント換算したランキング上位30名の「コミュニケーションの名医」です。
皮膚がんやMPN(骨髄増殖性腫瘍)もイシュランで展開していますが、評価する上で十分な投稿/投票数が揃っているとは言えないため、上記の4つのがん種に絞っております。
一昨年から、Warm30に選出された先生方には、イシュラン特製卓上POPを進呈していることもあってか、この取り組みも病院や先生方にかなり認知されるようになってきました。
診察室の机上や待合室に飾っていただいているケースもあるようで、先日もある患者さんから、卓上POPが飾られている様子を写真でいただきました。
ところで、先ほど「コミュニケーションの名医」と書きましたが、医師患者間のコミュニケーションの本質をズバッと突いた、素晴らしい書籍に巡り会ったので、ご紹介します。
■「あなたのACPはなぜうまくいかないのか?」(中川俊一 コロンビア大学内科准教授 メジカルビュー社)
本書は医療従事者向けの専門書ですが、医療を超えて「コミュニケーション・スキル」(特に厳しい内容を伝えるスキル)に関心を持たれている方にとって、大いに参考になる書籍だと思います。
ちなみに、ACPはアドバンス・ケア・プラニング。
将来の治療やケアの方針を、患者本人の希望・考え方に基づいて、家族や医療者と話し合いを重ねながら意思決定を行うプロセスのことを指します。
本書の中で、私が最も感銘を受けたのは、次の部分です。
>>
私は、外科医のとき、尊敬する教授から「外科医たるもの、手術の最中は、なぜそこに針をかけるのか、なぜそこを剥離するのか、というように、一つ一つの動作に理由がなくてはならない」「手術中には無駄な動作は一つもあってはいけない」と薫陶を受けました。
・・・
会話も手術と同じだと思います。意味もなく無造作にされる質問は、全然関係ない動脈を切って無駄に出血させるのと一緒です。
・・・
こういった会話の最中は我々の発する一つ一つの言葉に、なぜ今その質問をするのか?なぜその言い方をするのか?という理由があるべきだと考えています。
>>
多くの患者さんの声に触れ続けてきている中で、主治医の発する言葉は、メスと同じく患者さんを救うこともあれば、容易く傷つけることもあると私は感じています。
Warm30に選出された先生方は、おそらく日々の診療の中で、こうした細部まで気を配って患者さんやご家族に接してこられているのでしょう。
日々、患者さんに寄り添いながら診療に勤しまれている先生方にとって、少しでも励みになるよう、”忖度一切無し”のランキング、来年以後も継続して参ります。
【アンケート協力依頼】 治験についての意識調査
イシュランの新たな取り組みとして、自主調査を行ないます。
(「自主調査」とは、顧客の依頼に基づかず、自社が主導して行なう調査のことです)
本アンケート調査は、がん患者さんの治験に対する意識やニーズを把握することを目的としています。ご回答いただいた内容は、統計的な分析を行なった上で公表し、今後の治験情報の提供や支援体制の改善に役立てられます。
がん患者さんならどなたでも3分程度でご回答いただける内容となっております。また、個人が特定される質問は一切ありません。
イシュランはウェブサイトもメルマガも無料で運営していますが、会員の方に今回のような調査にご協力いただくことで成り立っておりますので、なるべく多くの方にご協力いただけましたら幸いです。
ご協力いただける方は、こちらからご回答をお願いいたします。
https://forms.gle/SE2Yjt9DL2rE6X5p9
【記事2】高額療養費制度の改悪に待ったを
昨年末、突如として高額療養費制度の見直しのニュースが飛び込んできました。
念の為の説明ですが、「高額療養費制度」とは、高額な医療費がかかった場合、通常の患者負担割合に基づいて支払うとあまりにも高額な自己負担になってしまうため、月単位で自己負担の上限額を定め、それを超える費用は全て保険で賄われる仕組みです。
がん患者さんで、手術や高額な抗がん剤での治療経験のある方は、実際にこの制度を使われた方も多いのではないでしょうか。
見直しの詳細については、こちらの記事が詳しいです。
■「高額療養費制度、自己負担限度額を引き上げへ 25年8月から」(毎日新聞)
2025年8月段階での引き上げ額はそこまで大きくはないですが、その先の2027年8月での引き上げはかなり「エグい」。
例えば、働き盛りで子育て中の年収650万円の人が、高額療養費制度を使う場合、一月当たりの負担額は、80,100円→138,600円(73%増!!)と、大幅に増えることになります。
年収650万円だと、月々の手取り額は40万円程度と考えられますので、尋常ならざるインパクトであることは間違いありません。
これに対し、全国がん患者団体連合会(全がん連)が「高額療養費制度の負担上限額引き上げ反対に関するアンケート」を取りまとめた上で、緩和策の要望を提出しました。
■「高額療養費制度の負担上限額引き上げ反対に関するアンケート取りまとめ結果(第1版)~3,623人の声」(一般社団法人 全国がん患者団体連合会)
しかしながら、1月28日の衆議院本会議で、石破首相より高額療養費制度引き上げ問題について「ゼロ回答」だったことを受け、全国がん患者団体連合会、日本難病・疾病団体協議会、慢性骨髄性白血病患者・家族の会いずみの会が署名呼びかけ団体となり、緊急署名が開始されました。
▼オンライン署名はこちら▼
https://change.org/fxx4u23vz6
昨今の抗がん剤は極めて高額なものがほとんどで、それらが再発・進行期に使われるケースは、「効かなくなるまでは継続投与」が原則です。
このままでは、「お金が続かないために生命を諦める」という、まさに”経済毒性”の極みを、特に働き盛りのがん患者さんに突きつけることになり、これは絶対に防がなければなりません。
読者の皆さま、まずやれることは上記の署名と思いますので、賛同される方はどうぞご協力ください。
一方で、保険財政が厳しい中で高額な治療薬が増えている現状で、保険者の負担額削減に資する手を打たないわけにはいかないでしょう。
まずは、
「全ての年齢層で、医療費の自己負担割合は原則3割にそろえる」
「OTC化されている薬剤(ドラッグストアで購入可能な薬剤)は保険適用から外す」
ところから始めるべきと考えます。
現在の日本の医療費をめぐる議論は、どうしても財源不足という「不都合な真実」に面と向かわざるを得ません。しかしながら、特に勤労世代にとっての高額療養費制度は、手をつけるとしても他にできることがなくなってからの話でしょう。
多くの患者さんの声が国に届き、今回の改悪案が見直されることを期待したいと思います。
※本稿執筆時点(2025年1月31日)で、筆者は55歳ですから、まだまだ「勤労世代」に属する立場としての意見です。
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