【研究室座談会01】 コンテクスチュアル/デザイン文化計画
本連載はこれから4回にわたり、千葉大学工学部デザインコースの研究室について紹介するインタビュー記事となっております。
千葉大学デザインコースでは3年の後期から研究室に配属され、そこでさまざまな制作や研究を行うことになります。大学生活の集大成の日々を送る場所、研究室。そんな研究室のリアルを伝えるため、各研究室から1名ずつ代表者を募り、座談会形式で行なったインタビューの様子をまとめました。
千葉大のデザインコースが気になる中高生や、意匠展で研究室自体についてもっと知りたくなった方々の一助になれば幸いです。
第一回目となる今回は、コンテクスチュアルデザイン研究室・デザイン文化計画研究室のお二人にお話を伺いました。(注:本記事は6月上旬に取材を行っており、現在は研究テーマ等が変化している可能性があります。)
普段の活動について
質問者:それではまず、自己紹介がてら普段は何をしている研究室なのかを教えていただいてもよろしいでしょうか。
デザイン文化計画研究室(以下文化):
週一回のゼミがあります。内容は基本的に現在進んでいるプロジェクトの進捗報告です。最近ちょうど終わったものが両国の慰霊堂(東京都慰霊堂)についてのプロジェクトですね。
質問者:プロジェクト?
文化:はい。地域から来た依頼に複数人で取り組んでいます。慰霊堂の寄付に対する返礼品を考えるプロジェクトに携わっていました。
質問者:やはり文化的な側面からアイデアを抽出するのでしょうか?
文化:そうですね。私の研究室は実地調査に重きを置き、実際にその場所へ何度も行ってお話を聞きます。
今回は、2023年に関東大震災から100年を迎えるにあたり、寄付を頂いた際の返礼品の制作が依頼でした。お話を聞いていく中で、その慰霊堂自体が建築的にも珍しい、面白いものだと知りました。ところどころに愛嬌のある妖怪みたいな装飾があるんです。その妖怪が地域の人から親しまれている面が強かったため、彼らを使ったグッズ展開を考案しました。
質問者:へぇ〜!
文化:ポストカードや妖怪をモチーフにしたクラフトキットを作ったり、ロゴを描いたり。返礼品の意義についてもたくさん考えました。
質問者:個人的にデザイン文化計画は分析中心の研究室のイメージがあったのですが、制作もたくさんされるんですね。
文化:確かに実地調査は絶対行きますが、作る量も負けていません。実際に制作物を持って行って、地域の方に意見をお聞きするので。
質問者:コンテクスチュアルデザイン研究室はいかがでしょうか?
コンテクスチュアルデザイン研究室(以下コンテク):
基本はそれぞれで研究を進めて、週一のゼミで進捗報告を行います。デザイン文化計画研究室のように特定の地域に向けた提案をすることもあります。
最近だと、春休みに、新潟の燕三条に行きました。金属加工が有名なところで、工場を見学した上で新しい提案をするワークを行いました。
質問者:何を提案されたんですか?
コンテク:3チーム別々のテーマで提案しましたが、一つは金属加工を用いた新しいキッチンウェアを提案するプロダクトを作るチーム。あと二つは「その地域をどうアピールしていくか」という地域おこし系のサービスの提案です。卒研や修論でも地域に出向いて提案をするパターンもあります。
今、なにしてる?
質問者:直近だと、研究室で何をされていますか?卒業研究や卒業制作、他のプロジェクトでやっていることなど教えてください。
文化:「千葉の海をブランディングする」という千葉県からの依頼を進めています。具体的にはロゴの制作ですね。前段階として「千葉の海の色を決めて欲しい」という要望があり、今はそれに取り組んでいます。
もう少ししたらもうちょっと旅に出ないといけない。
質問者:旅ですか。
文化:千葉の海は広いので、千葉の中でも色々な場所の海を知った上でブランディングしたいと考え、調査しています。色が決まったらロゴを制作して、最終的にはグッズにしたいです。
コンテク:私は卒業制作の方向性を決める作業をしています。本屋さんが作りたくて、本屋に関する論文や本を読んだり、「本を読むってなんだろう」って考えてみたり。
質問者:作りたい本屋像があるんですか?
コンテク:はい。新書って分かりますか?
質問者:小難しいことが書いてあって、細長い……。
コンテク:そうです。その新書をアピールしたくて。他の本とどう違うのかとか、『新書ならではの立ち位置』を探っています。
質問者:なぜ新書を取り上げようと考えたのでしょう?
コンテク:タイトルに惹かれて初めて読んだ新書が「孤独」の価値について考えてみよう、みたいな本で。新書とは知らずに読んでいたんですけど、結局最後まで孤独の価値が何だったのかわからなかったんです。
質問者:メインテーマなのに?
コンテク:はい。こんなのありなんだ!?っていう。そこで新書という存在を知って。2冊目に選んだのがロシアの民話や神話をまとめた新書で、それはすごく面白かったんです。その2冊のギャップというか、ジャンルや内容にとらわれず色んなものが混在してる感じが面白くて。新書は仰ってたように難しいイメージがありますが、その自由さを伝えたいと考えています。
最近面白かったこと
質問者:お二人とも意匠展に向けてかなり情報収集をおこなっている様ですね。それではそんな中で最近見つけた面白い作品や研究についてのお話を伺っていきます。
まずは『触れるレプリカの展示』ということで。こちらはなんでしょうか。
文化:水難事故で亡くなった方を祀るための船のような形の慰霊碑を、3Dプリンターで再現しました。
前回の意匠展にも展示されていて、3Dスキャンのお手伝いをしたので記憶に残っています。
質問者:3Dプリンタでも正確な再現は難しいのではないでしょうか?
文化:その点は手入れが大変でしたね。そもそも3Dプリンターでは手のひらサイズくらいでしか出力できないので、全部分解してパーツをいっぱい作って、繋げてパテで埋めて、やすりがけして、って感じで……。
大変ですが、触れたら崩れたり汚れたりしてしまうから禁止されている作品を、触れるようにできるのは面白いコンセプトだと思います。この前なんかは、仏像をスキャンしたりもしましたよ。それもどこかの博物館に展示される予定だったかな。
質問者:コンテクスチュアルデザインはいかがですか。
コンテク:先輩のうちの一人がサーキュラーエコノミーに取り組んでいて、工場のから出る廃材を原料のように素材に戻すのではなく、端材を端材として上手に加工して、地域内で循環的に利活用できないかっていう考え方で進めているんですけど、それが面白いなと思いました。
研究室を一言で表すと?
質問者:研究室を一言で表すと?という質問も事前にしておりました。
デザイン文化計画研究室は『いろいろな場所に行く研究室。』分かりやすいですね。
文化:これ以外ない。それこそ館山の海とか、千葉市の緑区や若葉区、市原の方にも。大学から車で数十分くらいかけて、墨田区と千葉県の色んなところに行ってます。
質問者:そしてこれからは海に行くと。
文化:そうですね。もしコロナ禍じゃなければ比較のために他県の海にも実地調査に行っていたんじゃないでしょうか。
質問者:コンテクスチュアルデザイン研究室は『多様な活動ができる研究室』ということで。
コンテク:そうです。それこそ地域のことやってる人もいれば、空間のことやってる人プロダクトを作っている人もいるし、なんなら思想的な方面に取り組んでいる先輩もいて。何でもできます。
最後に
質問者:それでは最後に、意匠展2023に対する意気込みを一言ずつお願いいたします!
コンテク:意匠展に出しても恥ずかしくないものを作ります。
文化:色々な分野に取り組んでいるという、研究室の特色が伝わる様な展示にしたいです。
質問者:今回はコンテクスチュアルデザイン研究室・デザイン文化計画研究室のお二人にお話を伺いました。ありがとうございました。
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