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石積みがなぜ崩れるか 石の積み方

擁壁の空石積みが崩れる原因の多くは背後の土砂が押し出すことだと考えられるが、それを引き起こすのは積み方の悪さだ。石工さんの間では「一ぐり、二石、三に積み」という言い回しが伝わっていた。つまり石積みで一番大切なことは、とにかくぐり石をしっかり詰めること。その次に石の形や性質。積み方の技術は最後に求められるということだ。

ぐり石

ぐり石は栗石と書くこともある。ぐり石は石積みの背後の土の中の水を流れやすくし、積み石を動かないように固定する。ぐり石を入れる幅が広ければ広いほど土圧の影響を直接受けにくい。また積み石はぐり石によって支えられている。ぐり石が少ないと雨が降り、背後の土が締め固まり、流され、体積が減少する。そして上にある積み石のお尻の部分が下がり、石の面の上面が後方に倒れ、上に乗っている積み石が飛び出る。そうならないために、積み石の荷重はできるだけぐり石にかかるように十分にぐり石を詰めておかないといけない。またぐり石はできるだけ滑りにくい石が良い。

石のお尻を下げる

積み石のお尻(奥側にある部分)が高くなっていると、上の石が滑って崩れやすい。お尻は低ければ低い方がよい。お尻が低いとぐり石で高くすることができるが、お尻が高いと低くすることができない。初めて石を積む人は表面の隙間を埋めようとしてお尻が高くなることがよくある。表面のツラを合わせることと、お尻を下げることを同時にしなければいけないのが難しい。このときに、ツラの上部が下部よりも前に出ているオンタに石を置くと、ツラも合ってお尻が下がりやすい。逆にメンタ(ベロづき)に石を置くとお尻が上がりやすくなるので、オンタに置くことを心がけると良い置き方ができる。

石の控えを長くする

積み石の控えの長さが十分にないと、土圧で積み石が少し押されただけで積み石が落ちる。モルタルなどの接着剤を使った石積みに慣れていると、控えが長いことよりもツラが平らであることを優先するするため、崩れやすい置き方をしてしまうことがある。

勾配をゆるくする

石積みを横から見た断面の勾配が急だと崩れやすい。勾配が急でも、反り勾配であればましだが、直角に近い勾配は崩れやすい。
緩い勾配ほど崩れにくいが、あまりにも緩いと石を積みにくいので、二分五厘から三分の勾配が最もよいと言われている。

石の接地面を広くする

積み石と積み石が接する部分は、基本的には表面に見える面(つら)の部分で合端(あいば)という。合端は少しだけ奥まったところで、できるだけ接地面積が広いほうがよい。合端が端部で極端に尖っているとすぐにずれる。合端の尖っている面でしか接していない積み方を「毛抜き合わせ」と言い、昔の土木の技術書には悪い積み方として挙げられている。昔の土木の擁壁工事で使われていた間知石をそのまま使うとずれやすい状態になる。(写真)

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積む人が角を取ってずれにくい合端をつくるのがよい。

禁忌事項といわれている四つ目、重箱や十文字は致命的なミスではないように感じる。それらは積み方に関することで、次に置く石が置きやすいように「座」をつくることができていないためにできてしまう。この石置きにくいと思うのは、石の形がよほど悪いか、そもそも下の石の置き方が悪いからだ。石積みを学びたての人は、それよりも、ぐり石がきちんと詰まっていること、石のお尻がさがっていること、石の控えの長さを確保していること、石の面がきちんと揃っていることのほうがよほど大切だ。

どんなに熟練した石工でも100点満点の石積みはできないと言われる。時間の制約があるからだ。長い時間をかけて丁寧な石積みをつくることはできるが、その丁寧さによってできた石積みとそれを完成させるのにかかった時間を天秤にかけてみると、多少の禁忌事項ができても仕方がないことがある。大切なことは早く丈夫につくることだ。

※要望あればイラストもつけます。

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