セツキシマブに対するアナフィラキシー症状の意外な原因!まさかの交差反応
セツキシマブ(アービタックス®️)は、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)を標的とするモノクローナル抗体製剤です。結腸・直腸癌、頭頸部癌の化学療法として使用します。また抗体製剤の抗がん剤のため、過敏症といったアレルギー反応が問題となることも。この記事では、事例を紹介しながらセツキシマブ投与時のアレルギー症状に関してみていきます。
初回投与のセツキシマブでアナフィラキシー症状出現!
セツキシマブの初回投与で、アナフィラキシー症状を呈した事例を紹介します。
【事例紹介】
75歳、女性。近医で下顎歯肉の腫瘤を指摘され、精査加療目的で紹介受診となった。下顎に境界明瞭な弾性硬の腫瘤があり、生検結果は腺癌NOS(低悪性度)。PET-CT結果で下顎歯肉悪性腫瘍 cT2N2bM1 Stage IVCと診断され、セツキシマブ単剤投与の方針となる。
セツキシマブ初回投与日、抗ヒスタミン剤・ステロイドの前処置を施行し、セツキシマブを添付文書の記載通りの400mg/m2を予定2時間で投与開始。セツキシマブ開始後20分で前胸部・腹部などに掻痒を伴う皮疹が出現し、直後にショックバイタルとなった。セツキシマブによるアナフィラキシーショックと考え、セツキシマブ投与中止、アドレナリン筋注、急速輸液で回復した。
アナフィラキシー症状はセツキシマブのInfusion reactionなのか薬剤アレルギーなのか?
セツキシマブを投与した際にアナフィラキシー症状を呈した場合、セツキシマブのInfusion reaction、もしくはIgEによる即時型薬剤アレルギーの可能性があります。
Infusion reactionとは、生物学的製剤投与より24時間以内に出現する過敏症などの症状をまとめた表現です。軽・中等症では悪寒・発熱・めまいなどが生じ、重症では呼吸困難・低血圧・ショックなどのアナフィラキシー症状が出現します。抗ヒスタミン薬・ステロイドの前投薬で、発症率は減少できるとされています[1]。
この事例において、セツキシマブは初回投与でした。投与以前にセツキシマブに感作されたとは考えにくいですね。この事例はInfusion reactionだったのでしょうか?問診をしたところ、患者は昨年までマダニのいる山間部に住んでいたことが判明しました。また、子持ちカレイを食べると、蕁麻疹がでることもわかったのです。
マダニ・子持ちカレイ・セツキシマブに共通点はあるのか?
陸のマダニと海の子持ちカレイ、抗がん剤のセツキシマブは、一見したところまったく関係がないように思いますよね?実は、この3つには「α-Gal」という糖鎖が関連しているという共通点があります[3]。
α-Galとは?
α-Galは、ガラクトース-α-1,3-ガラクトースのことで、マダニの唾液線にα-Gal含有タンパク質が含まれています[3]。事例ではマダニに咬まれることでα-Galに感作され、α-Galに対する即時型アレルギーであった可能性が考えられます。この感作については、イヌの散歩の際に草むらでマダニに咬まれていることが原因として多いようです[4]。
セツキシマブはキメラ型モノクローナル抗体製剤で、マウス由来の部分にα-Galが存在します[5]。マダニ咬傷でマダニ唾液中のα-Galに感作されていた場合、セツキシマブは初回投与にもかかわらず即時型アレルギーのアナフィラキシーを呈すると思われます。
子持ちカレイはどうでしょうか?子持ちカレイにはα-Galはありませんが、α-Galと交差反応する成分があります。この成分に対するアレルギーが起こります[3]。
この事例では、抗ウシサイログロブリンに対するα-Gal特異的IgE抗体を測定したところ陽性でした。従って、マダニ咬傷からのα-Galに感作されて起きたセツキシマブアナフィラキシー(IgEによる即時型薬剤アレルギー)と判断されました。
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