乳がんに新しいサブグループHER2-lowの登場-DESTINY-Breast04試験
乳がんに新しいサブグループHER2-lowの登場-DESTINY-Breast04試験
2022年6月に開催された米国臨床腫瘍学会で、HER2低発現(HER2-low)乳がんを対象としたトラスツヅマブデルクステカン(TDXd)の第3相試験(DESTINY-Breast04試験)結果が発表されました。結果はTDXdは対照群と比較し、約2倍の無増悪生存期間(PFS)をもたらすという素晴らしいものでした[1]。さらに、これまでになかったHER2-lowというサブグループを作り出したということで、会場では数分間のスタンディングオベーションが続いたそうです。今回は、TDXdとDESTINY-Breast04試験について解説していきます。
DESTINY-Breast04試験に成功をもたらしたTDXd
TDXdはトラスツヅマブにトポイソメラーゼⅠ阻害剤が結合した抗体薬物複合体です。HER2-lowにもかかわらずTDXdが奏功した理由は、TDXd独特の特徴にあると考察されています[1,2,3]。以下にTDXdの特徴を見ていきましょう。
1.薬物抗体比が高い
TDXdは、抗体に対し結合している薬物が多いです。トラスツヅマブエムタンシンでは、トラスツヅマブ1個に対し約3.5個の薬物が結合しています。これに対し、TDXdでは、トラスツズマブ1個に対し約8個の薬物が結合しており、より多くの薬物が腫瘍細胞に運ばれます[2,3]。
2.安定性の高いリンカー
抗体と薬物をつなぐ部分がリンカーです。リンカーの安定性が低いと、血液中で薬物が遊離し、抗腫瘍効果は減弱し非腫瘍組織への毒性は増加する可能性があります。TDXdはリンカーの安定性が高く、血液中に遊離する薬物が少ないことが示されています[2,3]。
3.効果が期待できるペイロード
既存の抗体薬物複合体の薬物の多くはチューブリン阻害剤です。そのため、既存の抗体薬物複合体に対して耐性を持ったケースでも効果が期待できるように、TDXdの薬物はトポイソメラーゼⅠ阻害剤であるエキサテカン誘導体が選択されました[2,3]。
4.バイスタンダー効果
細胞内で遊離したエキサテカン誘導体は高い膜透過性を持っています。そのため、標的の腫瘍細胞で殺細胞効果を示すだけではなく、周囲の腫瘍細胞にも浸透し効果を発揮します。つまり、周囲にある抗体発現が陰性の腫瘍細胞にも有効だということです。これは、抗体の発現が不均一な腫瘍にも効果が期待できるということになり、HER2-lowでTDXdが奏効した一番の理由と考えられています[1,2,3]。
トラスツヅマブデルクステカンでHES2-lowのPFSは二倍に延長
DESTINY-Breast04試験は、1〜2レジメンの化学療法歴があるHER2-lowの進行乳がん患者を対象におこなわれました。HER2-lowは免疫組織化学染色(IHC)1+と、IHC2+かつin situ hybridization(ISH)ーと定義されています。そして、TDXd群と医師選択化学療法群に2対1で割りつけられました[1]。
結果のポイントは以下の通りです。
患者背景について、HER2IHC1+は約60%、IHC2+/ISHーは約40%含まれていました。
主要評価項目であったホルモン受容体(HR)陽性患者のPFSは、TDXd群10.1か月、医師選択化学療法群5.4か月、ハザード比0.5、p値<0.0001でした。また、副次評価項目であった全患者のPFSは、TDXd群9.9か月、医師選択化学療法群5.1か月、ハザード比0.50、p値<0.0001でした。
全生存期間もTDXd群で有意な延長が認められました。
トリプルネガティブは約10%含まれており、HR陽性と同様、TDXd群で予後の延長が認められています。
HR陽性患者の約70%にCDK4/6阻害剤の使用歴があり、CDK4/6阻害剤の治療歴有無に関わらず、TDXd群で予後の延長が認められました。
TDXd群で多く見られた副作用は吐き気、倦怠感、脱毛で、いずれも医師選択化学療法群より高い頻度で発生していました。
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