女性化乳房、乳腺科へ紹介する前に診断してみよう

乳腺科を受診される女性化乳房の患者さんは、多くがかかりつけ医から紹介されます。乳腺科には行きづらいと感じ、まずはかかりつけ医を受診して紹介されたり、かかりつけ医での聴診時に指摘されたりという理由が多いようです。今回は、乳腺科以外の医師も知っておくと役に立つ、女性化乳房の知識をまとめました。

女性化乳房にはホンモノとニセモノがある

男性において、女性のように乳房の膨らみがある状態を女性化乳房といいます。乳房は、乳腺組織と脂肪組織から構成されており、男性にもわずかですが乳腺組織があります。乳腺組織が肥大したものが真性女性化乳房です。一方、肥満や体質により、乳房の脂肪組織が肥大したものを偽性女性化乳房と呼びます。鑑別はまず触診です。真性女性化乳房では、乳頭下に2㎝以上の固い組織を認めます。偽性女性化乳房では、柔らかい脂肪組織のみで、硬い組織には触れません[1,2]。わかりにくい時は、マンモグラフィーやエコーなどの画像検査が必要です[3]。

エストロゲンとアンドロゲンのバランスが崩れると女性化乳房になる

男性の体内にも、わずかながら女性ホルモンであるエストロゲンが存在します。精巣や副腎で合成された男性ホルモンであるアンドロゲンが、脂肪組織でエストロゲンに変換されるのです。乳腺組織の成長は、エストロゲンによって促進され、アンドロゲンによって阻害されます。そのため、エストロゲン/アンドロゲン比が上昇すると、女性化乳房が誘発されるといわれています[1,2]。

女性化乳房が起こりやすい時期は一生で3回

エストロゲンとアンドロゲンのバランスが生理的に崩れやすい時期が、一生に3回あります。この時期には、女性化乳房が起こりやすくなります。最初は、生まれた直後です。母親のエストロゲンが胎盤を通して移行し、新生児の乳腺組織が刺激されます。次に10代です。エストロゲンとアンドロゲンの合成が成熟する時期が異なるため、エストロゲンが優位になる時期があるといわれています。14歳までに60%の男児が女性化乳房を有するというデータも出ています。最後は高齢期です。アンドロゲンの合成低下や、アンドロゲンがエストロゲンに変換される脂肪組織が増えるためではないかといわれています。いずれも経過観察で改善していくことが多く、生理的女性化乳房と定義されています[1,2]。

コンサルテーションが必要な病的女性化乳房

何かしらの疾患により生じる女性化乳房を、病的女性化乳房といいます[1,2]。原因として最も有名なものが肝硬変です。しかし、明確な病因はわかっていません。おそらく、肝機能の低下により、血中のアンドロゲンと結合するグロブリンが増加するためと推測されています。臨床でよくみる疾患では、甲状腺機能亢進症があります。甲状腺ホルモンが、アンドロゲンからエストロゲンへの変換を促進するためです。
 
エストロゲンを産生する精巣腫瘍や副腎腫瘍においても、女性化乳房が生じることがあります。肺がんや肝がんも、エストロゲンの合成を促すhCGが産生されることがあり、女性化乳房の一因です。他にも、脊髄障害や性腺機能低下症、Klinefelter症候群など、さまざまな疾患で女性化乳房が発症します[1,2]。
 
また、女性化乳房ではありませんが、男性乳がんでも乳頭下に硬い組織を認めます。女性化乳房との鑑別ポイントのひとつは、可動性が悪いことです。皮膚のひきつれや、乳頭の陥没や分泌物、腋窩リンパ節腫脹は、さらに乳がんの可能性を示唆します。痛みは、乳がんよりも女性化乳房でよくみられる症状といわれています[1,2]。

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