免疫チェックポイント阻害薬によるリウマチ性免疫関連有害事象とは?
オプジーボ(一般名:ニボルマブ)をはじめとする免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が登場し、抗がん剤治療に革新をもたらしました。しかしながら、ICIには免疫関連有害事象(irAE)という副作用の報告があり、内分泌、皮膚、肺、腸、神経、腎臓、血液など多臓器にわたり発生します。さらにirAEには、リウマチ・膠原病症状もあることをご存じでしょうか。今回はリウマチ性irAEの早期発見・早期治療ができるよう、リウマチ性irAEについて解説します。
リウマチ性irAEはICI使用後の約11%に出現する
リウマチ性irAEは、いわゆるリウマチ・膠原病疾患で見られる症状を呈するirAEです。症状を詳しく分類すると、関節症状、筋症状、肉芽腫、血管炎、全身性の5つのグループにわかれます。各グループの詳細は後述します。グループ内の割合は以下のとおりです[1]。
関節症状:36%
筋症状:34%
肉芽腫:6%
血管炎:1%
全身性:12%
リウマチ性irAEの発生するタイミングは、中央値で70日後でした[1]。しかしながら、ICI開始後数週で起こることもあれば、1年以上たってから起こる症例もあります。ICI中止後にも起こることもあり、ICI治療では投与中だけでなく、投与終了後のどの期間でもリウマチ性irAEは起こるリスクがあります。
がん免疫国際レジストリという国際的なデータでは、ICIが投与された約11%にリウマチ性irAEを認めました[1]。
リウマチ性irAEの各症状について解説
リウマチ性irAEの各症状について説明します。
①関節症状
関節リウマチのような関節腫脹を呈する場合や、リウマチ性多発筋痛症のような症状を認める場合に脊椎関節炎の関節症状を呈することがあります。
②筋症状
膠原病での皮膚筋炎や多発筋炎のような筋痛、筋力低下、CKなどの筋原酵素の上昇。
③肉芽腫
サルコイドーシスのような肉芽腫性症状。
④血管炎
巨細胞性動脈炎のような大血管炎、結節性多発動脈炎を含む中型血管炎、ANCA関連血管炎のような小型血管炎といったすべての血管炎症状。
⑤全身性
ドライアイ・ドライマウスのシェーグレン症候群のような乾燥症状、全身性エリテマトーデスのような症状。
リウマチ性irAEの発生は予後が良好?
リウマチ性irAEを含め、基本的に治療による副作用は出てほしくないものです。しかしながら、リウマチ性irAEが出現した症例は出現しなかった症例と比較して、生存率(生存期間中央値 42.7週 vs132週, P<0.01)と腫瘍反応性はよい(21.0 % vs 76.8%, P<0.001)との報告があります[2]。予後の観点から見るとリウマチ性irAEは、悪いだけの副作用ではないといえるかもしれません。
リウマチ性irAEの事例紹介
リウマチ性irAEの経過について具体例を紹介します。63歳男性、悪性中皮腫でニボルマブを開始した症例です。ニボルマブ3回目投与から手指関節痛が出現。4回目から関節腫脹も出てきたため、オプジーボは中止し当科が紹介されました。当科診察時、多関節炎はありましたが、血液検査ではRFや抗CCP抗体陰性、抗核抗体陰性です。ニボルマブのリウマチ性irAE - 関節炎と考え、プレドニゾロン(PSL) 20mg/日開始。関節炎が残存するため、アザルフィジン・ケアラムなど関節リウマチの治療に準じて抗リウマチ薬処方したが効果不十分でした。本人と相談して、IL-6受容体阻害薬での治療を開始し、関節炎は消失。PSLも漸減中止できました。
この事例は、ICI開始から関節炎が出現し、ICI終了後も関節炎は残存しました。ステロイドや抗リウマチ薬を投与しても、ステロイドを漸減中止できず生物学的製剤を開始。生物学的製剤開始後、関節炎は消失し、ステロイドも中止できた症例です。
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