銭湯のおかげです プロローグ
俺が最近になって銭湯に行こうと思ったきっかけは、今年で10歳になった息子と行った旅行だった。
最初に息子と行った旅行先の北海道では、他の宿泊客がいなかったせいもあるが、尋ねたところ刺青で大浴場に入ってもいいと言われ、初めて息子と大きな風呂に入ることとなった。
息子の初めての大きな風呂である公衆浴場体験で、他の客はいなかったが、公衆浴場での風呂の入り方を教えたり、背中を流しあったりして素晴らしい時間が過ごせた。
次の旅行で行った2020年の夏休み。山梨県の河口湖にある「ロイヤルホテル河口湖」さんでは、大浴場も刺青が入浴可能だったために、初めて露天風呂を息子に経験させることができた。
朝風呂なども入り「大きな風呂や温泉は、1日に何度入っても気持ちいい」ということも教えることができて、息子も大きな風呂が大好きになって行った。
そして2021年に訪れた旅行先の鬼怒川では、貸切風呂のみで大浴場に入ることができなかった。
「貸切風呂だけど温泉入れたし、まぁ別にいいかな?」
と思っていたら、帰り際に息子がこう言った。
「ああ〜、大きなお風呂に入りたかったなぁ〜」
これを聞いて気になっていた俺は、帰宅して何日かした後に息子にこう言った。
「この前の旅行で大きな風呂に入れなかったから、銭湯に行こう!」
「でも父ちゃんは刺青入ってるからダメなんじゃないの?」
「いいや、銭湯なら刺青入ってたって大丈夫だぞ!」
とは言ってみたものの、最近は銭湯でも入れない場所が多いと聞く。これは調べなければと、ネット検索。そして刺青でも入れる銭湯として見つかったのが、銀座にある金春湯さんだった。
「飯食いに行くついでに、ここに行ってみようぜ」
「いいね!銭湯行ってみたい!でもさ、なんで刺青してると入れないの?ただの絵じゃんね?動き出すわけじゃないのにさ。別にいいじゃんね?」
「だよな!父ちゃんもそう思う」
息子が生まれてすぐに、一緒に風呂に入るために刺青を入れて正解だった。偏見を持たない子に育ってくれて、痛い思いをした甲斐があるってもんだ。
「よーし、夏だし帰りには花火買って、公園で花火もやろうぜ!」
「うん!早く行こう!」
こうして俺の銭湯巡りが始まったのだった。
30年以上に渡るバンド活動とモヒカンの髪型も今年で35年目。音楽での表現以外に、日本や海外、様々な場所での演奏経験や、10代から社会をドロップアウトした視点の文章を雑誌やWEBで執筆中。興味があれば是非サポートを!