ボールが投げたい
ボールが投げたい。とにかく投げたい。投げるだけではなく、私が投げたボールを受け取って、投げ返してほしい。そう、いま私は猛烈にキャッチボールがしたい。
昨年野球が好きになってから、見るだけでは飽き足らず自分も野球がやりたいという気持ちを抑えられなくなってきた。
手始めにまずはグローブを買い、同居する母に相手をしてもらった。楽しかったけどちょっと物足りない。
母は活発な人だけど、70歳を超える人にボールを投げるのはやっぱり怖い。どうせやるなら手加減せずに投げたいのだ。
そして受け取るボールも球威あるものがいい。
子供の頃はドッジボールが好きだった。
小学校の通学エリアごとにチームがあって、夏休みに大会があった。
壁の前に人を立たせて、至近距離でボールを投げて避けるという壁当て練習を誰かが発明して、熱中してやっていたら「過激すぎる」という理由で大人に禁止された。1人ものすごいボールを投げる子がいて、その子のボールを受けるとき、黒い龍も一緒に向かってくるようだ・・と思っていた。
明らかにドッジ弾平の影響。『炎の闘球児ドッジ弾平』はコロコロコミックの連載作品がアニメ化したもので、はちゃめちゃな内容だったけど毎回楽しみに観ていた。
中学、高校の部活はバスケットボール部だった。最初に入った理由はもう覚えていないけど、『スラムダンク』の影響で男バスは一年生だけで50人くらい入部していた。
バスケは本当に下手くそで、6年間やったけど一度もレギュラーにはなれず、後輩にはどんどん抜かされるしで、いつも辞めたいと思っていた。
地道な基礎練習によって、ドリブルをしたりシュートを打ったりはできるようになっても、いざコートの上に立つとどう振る舞っていいのかがずっとわからないのだ。
華の女子高生時代をバスケに費やして、私が得たものはムキムキの太い脚のみだった。
若い頃を思い出す時に、勇気を出して辞めておけばよかったなぁと思うことの方が多かったけれど、友達に誘われて30歳を過ぎてからまたバスケをやるようになった。ほとんどバスケ後の飲み会がメインのような集まりだけど、体育館を借りている2〜3時間、けっこうみっちりと試合をする。
相変わらず下手だけど、昔よりずっと楽しくなったし、前よりもどう動いたらいいのかがわかるようになった。
最近は草野球をやるようになって、ボールのサイズは違っても、捕る、投げるという行為がなんとなくでも身体に染み付いているのは紛れもなくドッジボールやバスケのおかげで、やっていて良かったと改めて思っている。
私が得たのは太い脚だけではなかった。
ああ、もっと速くて強い、コントロールのいい球を投げたい。
そのための練習がしたい。
球技の欠点は1人ではできないところだ。
そして忘れちゃいけないのは野球は投げるだけではなく、球を打つという行為がないと成り立たないということ。
こればかりは全くの未経験から始めなくてはいけない。
まずはここからと、バッティングセンターに通った時期もあったのだけど、人はあまりバッティングセンターに1人では行かないらしく、どう見ても初心者の40代の私が、若者のグループに挟まれてバットを振るのに耐えられなくなり、自然と足が遠のいてしまった。
だって隣で若いカップルが「え、マジ無理〜、打てないよぉ」とか言ってる横で、中年で実家暮らしの私が本気でバット振ってるのってなんかやばくない?あなたが私の立場なら耐えられますか?
ならば素振りか!?とも思っているのだけど、これもまた40代の女が外で素振りなんかしていたら通報されてしまう気がして、なかなか勇気を出せないでいる。あと腰を痛めそう。
年齢や性別で行動を制限するのは好きではない。でも自分以外にそんな人見たことがない。写真をやるなら人と違うことをするのはいいことかもしれないけれど、私が勇気を出すのってここでいいんだっけという疑問も拭えない。
とまぁ悩みは尽きないのだけれど、身体が元気に動く時間はきっと思っているよりも短いはずだから、人からどう思われるかなんて気にしていられない。とにかく投げて、投げて、投げまくるんだ。
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