買い物下手
思えば今年の夏は一度もおしゃれをしなかった。おしゃれと言っても自分のおしゃれなどたかが知れていて、ワンピースを着たかどうかというだけの話。白地に細めの青いストライプ柄の、ノースリーブのワンピース。これとセットで買ったパンツがあって、セットアップにして着るのが毎年のお気に入りだった。着る機会はたくさんあったはずなのに、なんでだろう。
はっきりとした理由があるわけではないのだけど、汚れそうとか、今日は移動が多いから動きやすい格好がいいかも、といったなんだかだらだらとした気持ちに今年のとんでもない暑さが加わって、「今日はいいや」となりがちだった。
細かいことを言えば、朝起きて、下着をつけるときにタンクトップなのかキャミソールなのかでもう道は決まってしまう。
タンクトップだとその上に着たものからはみ出る時があって、はみ出ないもの、すなわちTシャツを着るしかなくなるのだ。
いやいや着替えたらええやんと思い直すも、一度脱いだタンクトップには、すでに暑さでうっすらとかいた汗がついてしまっている。
これをもう一度しまうわけにもいかないし、かといって洗うのももったいない。その逡巡に嫌気がさして、「ああ、もういいや。今日はTシャツで!」となってしまうのだ。
私の下着の収納は縦一列で、パンツ、ブラジャー、ブラキャミソール、タンクトップが洗濯した順に並んでいる。夜、風呂に入る時は引き出しを開けて1番手前にあるパンツを取り、翌朝起きて下着をつけるときはまた同じ引き出しを開けて1番手前にあるブラキャミソール、もしくは手前がブラジャーならば1番それの近くにあるタンクトップをセットで取り出す。このように下着を選ぶ際に何も考えなくていいシステムになっているため、その後に着る洋服が決まっていない時は下着に準じた服選びになってしまう。
スケジュールが立て込んでいる時には、3日後にこれを着たいから今日着てしまうと洗濯が間に合わないのでこれを着て、明日はこれだなとかなんとなくの計算はしていて、それに合わせる下着のことも逆算できているのだけど。
生理や天候などによって左右することもあり、それで計算が狂うこともある。
だから、私の下着収納システムとスケジュール、および身体の事情と天候との兼ね合いにより、ワンピースを着る機会に恵まれなかったのだ今年は。
今さらながらブラキャミソール(以下ブラキャミ)について説明すると、ブラジャーとキャミソールが一体化した画期的な代物のこと。いつの間にか食卓に浸透したエリンギのように、あるとき突然現れて、女性の生活になくてはならないものになった。出始めた当初は、胸の部分がポケットになっていてパットを出し入れする作りが多かったけど、大体洗濯のときにパットがポケットの中で丸まってしまい、入れ直さねばいけなかった。
そもそもいろんなことが面倒くさいからブラキャミを選んでいる人間が、パットを出し入れする手間に耐えられるわけもなく、気がつけばカップ入りではなく、カップ付きキャミソールが増えた。
どうしてこんなに便利なものがあるのに私の衣装ケースはそれで統一されていないのかというと、それはブラキャミという存在と価格のバランスの問題が大きい。デザインさえ気にしなければ、大体2,000円前後で、ユニクロ、無印、GUNZEのようなところで購入できるのだけど、少し気の利いた形や素材、色味などを求め出すと値段は急に跳ね上がり7,000円付近、もっとこだわれば1万円を超えるようになる。
他の人が下着にどれだけお金をかけているのかは知らないけれど、7,000円あればブラジャーとパンツ、頑張ればキャミソールもセットで手に入れられるような金額だ。それだったらブラとパンツをセットで探すかぁとなるのだけど、7,000円で買えるようなセットのブラとパンツは、女はレースが好きだと信じて疑わないようなデザインのものがほとんどで、それに萎えて、もう少しデザインがシンプルで洒落たものを探そうとすると今度は1万円を平気で超えてくる。そうなるともう自分が何を手に入れたかったのか段々わからなくなって、ネット検索の鬼と化してしまう。んじゃもういいよ全部無印で、ともなるのだけど、実際パンツは気付けばほぼ無印のものなのだけど、それをやっちゃあおしまいよ、みたいな気持ちもまだ私の中に残っている。もっと若くてピチピチしていたら、無印だろうがユニクロだろうがどんとこいだったのになぁと、ちょっとやそっとじゃ痩せなくなった身体を見ながらため息をもらすも、よく考えたら若い時はもっと見られても恥ずかしくないような下着を選んでいた。
果たして来年の夏はワンピースを着れるのだろうか。
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