[読書ログ]「ケニーのまど」
作・絵: モーリス・センダック
訳: じんぐう てるお
出版社: 冨山房
あらすじ
「約束を破ってもとりかえしがつくか?」「中も外も見えるものなんだ?」など、夢に出てきたなぞなぞの答えを探すケニー。
子どもの空想、不思議へのあこがれ、驚き、願いなどを描くセンダック初期の傑作。(絵本ナビより)
感想
センダックの初期の作品。
難しい作品だった。
話は決して難解ではない。
ケニーが見た不思議な夢。夢の中で出されたなぞなぞをケニーなりの解釈でひとつずつ解いていく。
空想(夢)と現実を行き来する構造で、やぎやへいたいと話したり、屋根の上に馬が乗っていたするが、内容はファンタジーでわかりやすい。
だが、難しいと感じた。
まず、ページ数に比べて文章量が多い。
ものすごく多い。
絵本というより、童話に挿絵が入ったかたち。
空想や夢の話を延々と息継ぎや、改行も少なく書かれていると読みづらい。
それは自分が大人になったせいかもしれないが。
そして、なぞなぞの意味を捉えきれない。
最後、おんどりになぞなぞの答えを伝えるシーンが以下だ。
こういった空想的な世界を事細かに書くなかで、少年の揺れ動く心を描く、というのがテーマなのだろうと思うのだが、こういった作品には分かりにくさがあるために(センダックの確固たる世界観との距離が遠すぎるがために、センダックと読者たちとの乖離ともいえる)、賛否が出やすいとは思う。
ただ、挑戦的で、繊細で、個性的だ。
分からないから読まない、分からないから評価を下げる、というのが大人で、子どもは分からなくても何だか楽しい、分からなくても不思議な世界に行けるのが心地よい、と思うのではないかな、と思う。
この絵本は、真の意味で子どものための絵本であると言える。
とはいえ、買うのも評価するのも大人という不思議なジャンルが児童文学。
それでも、世界的にセンダックが評価されて、この作品も世界中の図書館で読み継がれているのだから、児童文学の許容範囲の広さを感じて、うれしくなる。
自分が子どもの頃に読んでいたらどうだったのだろう。
今になるまで読んだことがなかったけれど、こういう夢と現実のはざまが曖昧なふわふわした感覚になれる絵本は、想像力も感受性も刺激する。
想像力や感受性が豊かで、自分の世界を持っている子どもこそ、小さいころに出会っておくべき一冊だと思う。