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どちらが嘘をついている? 小学館の調査報告書について【前編】

ドラマ「セクシー田中さん」事件についての調査報告書が小学館からも公表されています。

日本テレビ(以下日テレ)から公表された調査報告について取り上げた以上、こちらにも触れないとフェアではないでしょう。

とは言え、小学館の調査報告は日テレのものと比べ気になるポイントは少なかったので、今回は前編「注目ポイント」、後編「まとめ」の二つになります。

日テレの調査報告は終始言い訳だらけで胸糞が悪いものでした。
対して小学館の調査報告は芦原先生がどれだけドラマの完成にご尽力されていたのかが詳細に記述されており、是非とも読んでいただきたい内容になっています。



注目ポイントその一

本委員会は、本事案の事実経緯を調査し、芦原氏が亡くなられたことに影響 を及ぼしたと考えられる事情を検討し、それらの事情における小学館の対応の 問題点を抽出し、再発防止のための改善案を提言することを目的とする。

調査報告書3P

日テレの「本件 原作者の死亡原因の究明については目的としていない」とは違いますね。


注目ポイントその二

社員 A は、芦原氏が自分の作品を大切にする方であり、作品の世界観 を守るために細かな指示をする所謂「難しい作家」であるから、原作に忠実 で原作を大事にする脚本家でないと難しいと伝えた。対して日本テレビ社員 Y 氏は、原作が大好きで、すごく面白いからドラマ化したいと述べ、当然、 原作に忠実にするとのことであった。なお本委員会からの質問に対して、日 本テレビ社員 Y 氏は、「『原作を大事にして欲しい』という趣旨はお聞きしま したが、脚本家はどういった方がいいという話までは出ていなかったと記憶 しています」「 『当然、原作に忠実にする』という発言はしておりません」と 回答している

調査報告書13P

出ました水掛け論。そして「難しい作家」。


注目ポイントその三

5 月 1 日、日本テレビ社員 Y 氏からドラマの「第 1 話プロット(4/30 版)」が送信されたが、芦原氏は、主役の一人である朱里のとらえ方に疑問 を呈し、社員 A が同日 2 回にわたって、朱里が、外見に似合わず芯はタフで 超現実的な女性であるという芦原氏の意見を日本テレビ社員 Y 氏に伝えた。

調査報告書16P

初手からこれだと、読解力がないのかそもそも原作を読んでいないのかと疑いたくなります。


注目ポイントその四

芦原氏は (略)「第 1 話プロット(5/17 版)」につ いては細かい指摘に止まったが、「第 2 話プロット(5/10 版)」については偶 然エピソードが多すぎる不自然さを指摘し、「第 3 話プロット(5/17 版)」に ついては原作のエピソードの順番入れ替えで流れが悪くなっていると注意し、 さらに原作は「田中さんの頑なな心が、朱里や笙野達との小さくて大きなエ ピソードを順番に積み重ねる事によって、少し づ つ溶かされていく様子を 丁寧に描いてるつもりなんですが…」と原作におけるエピソードの順番が大 切であることを説明し、「エピソード順番入れ替えて切り貼りする事で、キ ャラ達の絆が自然に深まって行く過程や、それぞれのエピソードの効果的な 見せ方が邪魔されて、チグハグになってしまってる」と脚本家に注意を喚起 した。すなわち、原作者としてエピソードの順番の入れ替えをしないよう脚 本家に求めた。 さらにラスト構成案に関しても、ドラマの最終回にむけての朱里の進路に ついて、脚本家が、田中さんの後を追ってダンサーになる案を提案している ことに対し、原作では田中さんから自立してメイクの道に進むことになって いることから、これに沿うように求めた。その中で改めて朱里はダンスでは なく田中さんに夢中であり、最後は別の道を目指す人物で、田中さんへの依 18 存に見えることは避けたいと注文を付けた。

調査報告書17P

本件脚本家は読解力がなく原作をまともに読んでなかったことが察せられます。


注目ポイントその五

かねて日本テレビ社員 X 氏に対して、連載中の作品であ り、ドラマの第 8 話~第 10 話では、原作にない部分を描くことになるが、 このことは原作者である芦原氏にとって非常にセンシティブであるうえ、 芦原氏はかつて自作の映像化事例において、監修したプロット・脚本など に細かく修正を加えたことから、今回はドラマの脚本家ではなく、芦原氏 にドラマオリジナル部分を考えてもらい、小学館側から提案する方が良い と申し出ていた。そして小学館からの提案の形態はセリフを多めにした芦 原氏の詳細プロットで行い、これを脚本家に忠実に脚本に起こしてもらう が、芦原氏が了承しない場合は芦原氏自ら脚本を執筆する可能性があるこ との理解を求めた。さらに予め脚本家の了承を取っておいてほしいとも要 請していた。またその場合時間もかかるので 10 月期は難しいとの意見を 述べていた。

調査報告書20-21P

日テレが聞いてないと言っていた部分ですね。


注目ポイントその六

日本テレビ社員 X 氏との協議結果に基づき、社員 B は、日本 テレビ社員 X 氏の要請に従って 10 日 13 時 22 分、日本テレビ社員 Y 氏 にあてたメールで、「脚本家の方との向き合いもあると思いますので、な かなか心苦しいのですが」との懸念を示しつつ「その先のドラマオリジナ ル展開に関しては、芦原先生の方から、脚本もしくは 詳細 プロット の 体裁 でご提案させて頂けませんでしょうか」と、提案し、その際、交渉への配 慮として許諾条件という程ではないとしながらも、「はっきりとした要望 として」検討することを求めた。日本テレビ社員 Y 氏は、間髪を入れずに 14 時に「結果進めさせて頂くとのことで承知しました。  9 話 あたりから の ドラマオリジナル 展開  に  関して芦原先生の方から脚本もしくは 詳細 プロットの体裁でご提案して 頂く点も承知しました。芦原先生の原作の世界 観もあると思いますので具体的に頂けるほうが良いと思います」(傍点は 本委員会)との回答をメールで返して、社員 B の提案を承諾した。

調査報告書22P

承知したのにもかかわらず日テレサイドは脚本家にこの話をギリギリまで伝えてなかったようです。


注目ポイントその七

日本テレビ社員 Y 氏によると、6 月 11 日の正午から行 われた台本会議にて、監督やプロデューサーら他のメンバーもいる中で、 日本テレビ社員 Y 氏から本件脚本家に、芦原氏にプロットを書いていただ ける旨を伝え、しかし本件脚本家によると、同氏が、芦原氏において詳細 プロットを書くことを日本テレビ社員 Y 氏から打診されたのは 7 月 11 日 以降であるという

調査報告書23P

一ヶ月も食い違ってますね。


注目ポイントその八

社員 A は、同日芦 原氏の意見をそのまま〘田中さん脚本懸念点について〙として日本テレビ 社員 Y 氏に送信した。日本テレビ社員 Y 氏によると、同懸念点、ニュアン スに関しては 6 月 16 日の打合せの場で本件脚本家をはじめ制作陣に伝え たということである(本委員会質問に対する回答)。しかし、本件脚本家 によると、上記かぎ括弧内のことは聞かされていないとのことである

調査報告書25P

どちらが嘘をついている?


注目ポイントその九

日本テレビ社員 Y 氏は、「第 1 話脚本(第 4 稿)」、「第 2 話脚本 (第 4 稿)」、「第 3 話脚本(第 3 稿)」および「第 5 話脚本(第 2 稿)」を送信し てきた。芦原氏はこれらの脚本ごとにそれぞれ複数箇所の修正を求める文書 を作成し、社員 A が 8 月 3 日に日本テレビ社員 Y 氏にそれぞれの〘お返し 〙として送信した。

調査報告書29P

いや「第4稿」って……。
原作が存在し、尚且つ原作者自らが具体的に修正案を出しているのに?


注目ポイントその十

社員 J が 7 月 27 日に日本テレビに送信した契約書案に対し て同社から 9 月 26 日に修正案が戻された。その中では、改変についての原 作者の承諾に関し、小学館提示の原案では小学館と原作者双方の同意が必要 としたものを、日本テレビは、日本テレビとして合意を得るべき相手を小学 館に限定する修正依頼があった。

調査報告書42P

改編の許諾を原作者抜き?
日テレの原作者軽視がよくわかります。


注目ポイントその十一

12 月 24 日、本件脚本家が SNS に、本ドラマ化の第 9 話、第 10 話 の脚本に関する見解を投稿したが、芦原氏の我儘による脚本家の変更がされた とも読める内容だった。小学館担当者は日本テレビ側に善処を求めたが、進展 せず、芦原氏は作画ができないほど悩むことになった。

調査報告書51P

しかし芦原氏は、26 日には騒ぎになってドラマが台無しになることを恐 れ、触れないでおく意向を伝えていた。

調査報告書52P

本件脚本家は、12 月 28 日、再びインスタグラムに投稿し、自身が脚 本を書いたのは第 1 話~第 8 話であり、第 9 話、第 10 話は原作者だから誤 解しないようにと記載

調査報告書52p

芦原氏は、12 月 31 日、社員 A に疲れたから 1 回漫画連載を休載し たいと述べ、来年どこかで本件脚本家の投稿に対する反論文(これを芦原氏 は「アンサー」と呼んでいる。以下「アンサー」)を出したいと、落ち着い た内容のメールを送信した。

調査報告書52P

これでもまだ脚本家に責任はないと言い切れるのでしょうか?


注目ポイントその十二

本件脚本家が知らなかったとしても、元々著作権法上改変は許さ れないことであるうえ、芦原氏や社員 A は、本件脚本家の窓口である日本テレ 70 ビ社員 Y 氏に原作に忠実にという意向は明瞭に伝えており、これに反した脚本 の承諾を拒否するのは当然のことである。

調査報告書69-70P

まったくもってその通りだと思います。


注目ポイントその十三

芦原氏の代理として日本テレビと原作利用許諾契約を締結した小学 館の役割という観点で見れば、代理人業務の主たる目的を達成したことは間違 いない。

調査報告書73P

ここは少し引っ掛かりました。
日テレに対してへりくだらず、毅然とした態度で原作者の意向を伝えていれば結果は変わっていた可能性があります。


後編に続きます。


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