『あっという間に信頼関係をつくる傾聴スキル』
◆コミュニケーションと聞くと、
何を、どのように話すかという「話す」ことに意識が向きがちですが、
「話す」よりも大切なのは、「聞く」ことです。
なぜならば、「聞く」ことができないと、コミュニケーションは成り立たないからです。
コミュニケーションは双方向が基本
話し手が一生懸命に考えて、いい内容を話しても、聞き手に伝わらない一方通行では、コミュニケーションにはなりません。
コミュニケーションは、キャッチボールに例えると分かりやすくなります。
投げ手が一生懸命ボールを投げても、受け手がボールをとれなければ、キャッチボールにはなりません。
投げ手がボールを上手く投げることができなくても、受け手が上手に受け取ることができれば、キャッチボールは成り立ちます。
つまり、受け手がしっかりしていないとキャッチボールは成り立たないのです。
コミュニケーションは、「話す、聞く」を繰り返すという双方向の流れが生まれることで成り立ちます。
◆なぜ話を聴くことが大切なのか
上司と部下、親と子、夫と妻などのコミュニケーションにおいて身につけておきたいのが、「傾聴」スキルです。
「傾聴」という言葉を聞いたことがある人は、傾聴はカウンセラーがするものと思いがちですが、普段のコミュニケーションでも大切なものです。
「人は受け入れてもらうと安心するし、認めてもらうとうれしくなる」性質があります。
人は自分のことを受け入れてくれる人が大好きなのです。
すなわち、上手に傾聴して、話を受け入れてもらえると、安心して味方であると感じるようになります。安心できると心の扉を開いて、相手への信頼が生まれます。
次に傾聴するためのポイントを書いていきます。
◆ 傾聴に大切な3つのポイント
傾聴に大切なポイントは、3つあります。
・否定しない
・全て聴く
・押し付けない
◆まず1つ目は「否定しない」です
否定とは、キャッチボールに例えるならば、相手のボールを受ける前に投げ返す、はね返す、受け取らない、無視するなどです。
自分の投げたボールを受け取ってもらえないと、投げ手は不安になったり、嫌な気分になったりします。否定されると、味方どころか敵意を感じてしまいます。
「そうなんだ」「なるほど」「いいね」などと、話を受け入れることが大切です。
いい・悪い、正解・不正解などの評価や判定をすることなく
・あなたは、そう思ったんですね
・あなたは、そういう考えなんですね
相手の立場や考えをいったん受け取ることで安心します。
最初は、何といわれるか、こんなことを言っていいのか、などと不安や緊張を抱えているはずです。まず自分の考えを受け取ってもらえることで安心して、相手の話を聴けるようになります。
「否定しない」は、コミュニケーションの入口における大切なポイントです。
◆2つ目は「全てを聴く」です
全てを聴くとは、投げ手がもっているボールは全部受け取るというイメージです
投げるボールをまだいくつも持っていているのに投げ返されてしまうと、相手はスッキリしません。本当に投げたいボールがまだあるのに投げられない、と不満が残ります。
言葉のボールは見えないから難しいのですが、相手がまだ投げようとしていたり、隠しもっていたりする場合があります。そのような気配を感じたら、ボールをまず投げさせる、置かせるなど相手をスッキリさせて安心させることが大切です。
特に重いボールや危ないボールは最後まで持っていることが多いので、注意が必要です。丁寧に話を聴いてあげると、相手は気分が良くなって味方に感じてくれるようになります。
味方になれると、多少の無理も受け入れてくれる余裕も生まれます。
◆3つ目のポイントは「押し付けない」です
「押し付けない」とは、「自分の考えを押し付けない」ということです。
人は自分で考え、判断して、自分の意思で行動してこそ成長していきます。
キャッチボールに例えるならば、投げ方を丁寧に教えられて分かったような気になっても、自分で投げてみないと分からないし上達できません。
相手のレベルや状態が分からないまま、教える側の考えを押し付けても、相手のためにはならないし、レベルの差が大きければ、苦痛を与えることにもなります。相手のレベルや状態に合っていない指導は、教える側の自己満足になってしまいます。
相手の現在の状態やレベルを聴き出し把握することで、相手に応じた助言ができます。相手の状態が分からないまま一方的に伝えても相手の理解は得られないし、全く分かっていない印象が強くなればなるほど、心は離れていきます。
自分の考えを押し付けることは、相手が欲しくないプレゼントを贈るようなものなのかもしれません。
相手が望むプレゼントを贈るには、相手に直接聞いてみたり、相手の好みを把握したりするなど、普段から興味・関心を持って情報収集することが大切です。
◆ 傾聴は人の為ならず
以上、傾聴のための3つのポイントを書きましたが、それよりも大切なことがあります。
聴き手の態度です。
話を聴く態勢になっているか、聴き手側の心と身体の姿勢をまず意識する必要があります。
相手に「何でも話して欲しい」と口では言っていても目も合わせなかったりパソコンの画面から目も離さずにキーボードを打っていたりしていては、とても話す気にはなれません。
相手の話を聴く時の姿勢には、十分気をつける必要があります。
キャッチボールに例えるならば、相手の方を見て、身体を向ける。グローブを構えて、「いいぞ」と声をかけることです。
そうすることで相手も心の準備ができて安心して投げることができます。
いかに「相手の安心を得て、不安を排除していくか」が上手なコミュニケーションのポイントです。
そのためには、相手に興味や関心をもって、話を聴こうとする意識や姿勢が大切です。
自分の話に興味や関心をもって聴いてくれる相手に対して、信頼する気持ちが湧いてきます。
コミュニケーションは、周囲の人との円滑な人間関係のためと思いがちですが、信頼できみ味方が増えることで、仕事や生活がしやすくなったり、余計なトラブルが防止できたりと、自分が生きやすくなるという効果があります。
◆ まとめ
・コミュニケーションは、「話す、聞く」を繰り返す、双方向の流れが生まれることで成り立つ
・「人は受け入れてもらうと安心するし、認めてもらうとうれしくなる」性質があるから
人は自分のことを受け入れてくれる人が大好きになる
・相手の安心をいかに得るかが上手なコミュニケーションのポイント