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室伏謙一「植民地農業を推進する菅政権」(『維新と興亜』第7号、令和3年6月)

菅総理は日本を植民地に貶めようとしている
── 室伏さんは菅政権の農業政策を厳しく批判しています。
室伏 菅総理は今年一月に行った初めての施政方針演説で、「我が国の農産品はアジアを中心に諸外国で大変人気があり、我が国の農業には大きな可能性があります」と述べ、昨年の農産品の輸出額が、コロナの影響にも関わらず、二〇一九年に迫る水準となっていると自負しました。
 さらに、二〇二五年に二兆円、二〇三〇年に五兆円という輸出額の目標値を掲げ、「世界に誇る牛肉やイチゴをはじめ二十七の重点品目を選定し、国別に目標金額を定めて、産地を支援いたします」と語りました。
 「A国の市場で売れるように、日本国内のこの地域ではイチゴを生産しなさい」、「B国の市場で売れるように、この地域ではブドウを作りなさい」というように、重点品目を決め、国別の目標金額まで定めようとしているのです。
 つまり、菅政権は日本人のためではなく、海外の市場のための農業を強いているということです。これはまさに植民地農業です。かつて列強の植民地となった国の農業は、宗主国に農産物を上納するための農業を強いられました。
 宗主国は、植民地の住民が自分たちのために農作物を生産していた畑を取り上げて、宗主国のニーズに沿って植民地ごとに生産するものを特化したのです。スリランカでは紅茶を、ガーナではカカオといったように、植民地はモノカルチャー経済を押し付けられました。植民地が生産した農産物は、基本的に宗主国に持っていかれてしまうのです。こうした構造に対する植民地住民の不満は、独立戦争の引き金にもなりました。いま、菅政権は日本の各地域を植民地に貶めようとしているということです。これほど売国的な農業政策はありません。
 農業政策の根本は、自国民を食べさせることです。その根本が菅政権の農業政策には欠落しているということです。仮に日本の食料自給率が非常に高く、国内需要を十分に満たせる状況であるならば、農産物の輸出を強化するという選択肢もあるでしょう。本来農産物を輸出できるのは、食料自給率が一〇〇%を超えている国だけです。ところが、日本の食料自給率はわずか三八%です。輸出を優先するような状況にはありません。
 農産物の輸出振興策には様々なリスクもあります。海外の需要は非常に移ろいやすいものだからです。菅総理が語った通り、現在はアジアを中心に日本の農産物の需要はあるかもしれませんが、いつその需要がなくなってもおかしくありません。

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