書きたいと伝えたいの違い
つまる、ひっぱる、ひっかける、おっつける、たたく、とらえる、ながす、すくいあげる、はこぶ、はじく、あてる、かえす、みまう、しとめる、あげる、ころがす。
どのようなときに使う言葉か。皆さんわかりますよね。
そうです。野球です。その中でも「打つ」という言葉の言い換えです。思いついただけで、これだけの数がありましたので、本当はもっと多いと思います。
なかでも好きな言葉がいくつかあります。
ひとつめ。「おっつける」
これは、なんといえばいいのだろう。
打つときに、体を開かず、ヘッドを返さず、外角球を押し出すイメージ。
用法は「おっつけてライト前」。老練な右打者による二塁手の頭上を越える安打を想像できます。「ながす」との違いは、右手の使い方。少し強め。ヘッドを返さず逆方向へ引っ張るような。難しいけれど格好良い打ち方です。
はい、私の文章を読んでいただけるかなりマニアな皆さん、続けて大丈夫ですかね。
でも楽しいので続けます。
次に好きなのは、「はこぶ」です。
これは、感覚がよくわからないので、説明しづらいのですが。イメージは、逆方向へ本塁打を放つ落合博満さんとか、清原和博さんとか。チカラやパワーではなく、ボールをバットの一番良いところに乗せて、スタンドへ届く角度で打ち上げるというか。
打つではなく、はこぶ。シンプルに言えば「棒で球を叩く」という打つという行為を極め、技にした方々にのみ使える言葉だと思います。
あー、書きたいことを書いたので、満足しました。
この文章は「伝えたい」ではなく、どちらかと言えば「書きたい」ですね。新聞では、絶対に書かない、つぶやきです。
でも、独りよがりで終わってしまっては、まずいので、何を伝えたかったという言い訳を考えます。
若い時にはよくあった、「なぜこんな文章を書いたんだ?」というデスク(ここでは、ここまで自分の文章を読むようなマニアなあなた)に対しての説明ですね。
もうすぐ43歳という年齢のせいなのかどうなのかなのですが、最近、職場全員が見た昨夜のテレビとか、9割の人が読んだ小説とか、マンガとかがないような気がします。「国民的」というのが死語に感じるほどに。
このふざけ半分の野球の文章もそう。マニアの人はどこまでも追っかけることができるほど、情報があふれているのに。多くの人、大多数の人を引き付けるようなパワー、馬力がどこをさがしてもない。いま、スターっています?にしきのあきら?
娯楽もバラエティに富み、選び放題という世の中では当たり前かもしれないけれど、そのせいか、一般的な知識というものがどんどんと薄まっているような気がします。
簡単で即席で刺激的な情報にあふれている世の中、「おっつける」を面白いと思ってくださる方。どれぐらいいますかね。それを知りたいと思ったから書きました。
という「どんづまり」な言い訳。アウトっぽいけれど、全力疾走とヘッドスライディングで許してもらいたい。
そんな気分の夏の始まりです。