暮らしのかおり
石巻日日新聞で連載中の「はまにて」
ボランティア活動をきっかけに石巻市の牡鹿半島の漁村に移住した夫妻と子どもさんの暮らしが、ほっこりする。石巻にいてそう思うのだから、都会の人たちからみたらどうなのか、聞いてみたい。
連載2回目は「浜の春」がテーマ。漁村の暮らしをやわらかく煮詰めたような奥様の優しい文体を、写真家で漁師の旦那さんの写真が鮮やかに彩る。
ちょっとだけは、noteで無料で見られるのだが、雰囲気を感じてもらいたい。おすすめですよ。
素晴らしいトップの写真は、ひじきを煮ているのかな。
静かな庭からもうもうと煙が上がっている。
自分も記憶がよみがえる。
子どもの時分、実家の庭。
大鍋をかけた火のそばを走り回ると、大人から「危ね!どっかさ行ってろ!」と怒鳴られるのだが、潮の香りがする湯気をくぐるのが面白かった。
確かに感じる潮の香り。
でも、そばに置かれたタライに山盛りの塩を嗅いでも、何も感じない不思議。
次は味噌づくりの記憶。
大豆が蒸されると、甘さと香ばしさの山の香り。こちらは秋から冬かな。
これも自宅の庭。当時の自分の、背丈ほどもある機械には、ハスの実のような部分があり、ハンドルを回すと、穴から、ミンチ状になった大豆が出てくる。見ているだけで面白い。
大人たちは、これに色んなものを入れて、ぐるっと混ぜる。それを子どもだったら2-3人は隠れられるようなサイズの木樽に漬け込む。色んな時代の味噌が3,4樽並んだ納屋は、また別のしょっぱい塩の香りがした。
改めて振り返ると、浜の暮らしは、どこに行っても塩と潮が香ってくる環境だった。
このほかにも、赤飯に使うササゲを炊くときの香り、サンマや、イチジクなど佃煮の香り、祖父が得意だった分厚い鉄の鍋で焼くパンの少し焦げた香り。
どれもが、今の暮らしの中には、あまり感じられなくなった、香り。
「はまにて」という連載。やっぱりおすすめです。
懐かしさ、羨ましさ、新しさ、大変さ。そして心地よい潮や塩も。色んなものが香ってきます。