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フジロックエアプ勢の背中を押す

フジロック2025の第一弾ラインナップが発表された。
昨今の円安や世界的なフェスのヘッドライナー不足の中、例年よりもラインナップ発表を遅らせるという事前アナウンスもあり、フジロックファンの一人としてはやきもきして発表を待っていたわけだが、蓋を開けてみれば素晴らしいラインナップだった。

初日のヘッドライナー・FRED AGAIN..SKRILLEXFOUR TETとともにCoachella 2023をぶち上げて以来、大型フェスのたびに来日を待望されていた。二日目のヘッドライナー・VULFPECKは独特のインディペンデントなポジショニングからのフジロックのヘッドライナー抜擢であり、新鮮な驚きがあった。そして最終日は2022年以来のヘッドライナー帰還となるVAMPIRE WEEKENDがガッチリと固めている。

ヘッドライナー以外のラインナップも充実している。
FOUR TETJAMES BLAKEHAIMのようなセカンドヘッドライナー級から、集客力が見込まれる国内の人気アーティスト、国際色豊かなコアなアーティストまで、とにかく隙のない第一弾発表だった。

今回の第一弾発表を見て、「今年こそはフジロックに行こう!」という初参加の方も多いだろう。
しかしここで一つ聞いてみたい。

あなたはもうチケットは買いましたか?


そう、フジロックは日本のフェスを象徴する存在でありながら、初参加の方にとってはとにかく敷居が高い存在なのだ。


まず場所が遠い。
フジロックという名称から富士山の麓でやっているのかと思われる方も多いが、実際は新潟県湯沢町の苗場スキー場で行われている。サマソニのように日帰りで、というわけにはなかなかいかない。

次にチケット代。
フジロックのチケットは三日間で54,000円(先行販売価格)。
サマソニなどのほかの大型フェスと比較して法外に高いというわけではないが(ちなみにサマソニ東京の2DAYSチケットは38,000円)、高額なことには変わりはない。昨今の物価高や円安状況を受けてか、徐々に値上がり傾向にもある。

宿の手配もなかなかに大変だ。
会場近隣の唯一のホテルである苗場プリンスホテルは開催期間中、出演者や関係者向けとしても使用されており、一般参加者向けに開放される部屋に宿泊するには公式ツアーの抽選で当選するしかないうえに非常に高額だ。
周辺には民宿やロッジがいくつもあるが、苗場プリンス同様争奪戦は免れない。
会場内のキャンプサイトで仲間とキャンプ、というのもフジロックの大きな魅力の一つではあるが、キャンプ未経験者にはハードルが高いし、魅力を感じる前に尻込みしてしまう。

また、山間部で開催される野外フェスということで、過酷な環境のイメージもついてまわる。靴は登山用のトレッキングシューズでないとダメだとか、雨具はゴアテックスで野鳥の会の長靴は必須、などなど。先人の助言を鵜呑みにすると、装備を揃えるだけでも一苦労だろう。

行かない理由ならいくらでも見つかる。
ラインナップを見て、今年こそは行ってみよう!と思い立っても、未経験者には何がどれだけ大変なのかイメージがつかず、どこから準備すればいいかもわからない。まごまごしているうちに宿は売り切れ、夏は近づき、やっぱり来年行けばいいか、となってしまう。

とはいえ、フジロック経験者としては、これでは勿体無いと言わざるを得ない。せっかく行きたいという気持ちが湧いたのなら、とにかく一歩踏み出してみてほしい。フジロックではお目当てのアーティストのライブだけではなく、沢遊びや会場内の散策を楽しんでもいいし、ライブの合間には木陰で微睡むこともできる。飲食メニューも開催期間中に試しきれないほど充実しているうえ、総じてレベルが高い。ヘッドライナーのライブが終われば、フジロックは自然の中の巨大クラブに変貌し、朝まで音楽が流れ続ける。深夜のオアシスで友人と再会し、1日の感想を共有する体験は何者にも変え難い。間違いなくほかのフェスやライブでは得られない何かがあるはずだし、一度でも行ってみれば来年以降の参加ハードルは大きく下がり、毎年の夏のイベントのオプションにフジロックが加わるのだ。

そろそろフジロックへの熱量が戻ってきた頃だろう。
ここらで放っておけば今年もフジロックエアプ勢になるであろうフジロック未経験のみなさまの背中を少し押すべく、初めてのフジロックに向けての最低限の準備についてお伝えしたい。


とりあえずチケットを買う

まずはとにかくチケットを買ってほしい。
これがなければ始まらないし、チケットを買っていないことが心理的な逃げ道になってしまう。まだ夏の予定がわからないから、などと悠長のことをいっていてはダメ。参加すると決めたら複数日の休暇は必要だし、フジロックを中心に予定を調整しかない。

チケットを早く買うことのメリットも大きい。
基本的にチケットは早く買った方が安い。現時点(2025年3月1日)であれば、3日通し券が先行販売価格54,000円で購入できるが、これが5月16日以降の一般販売では59,000円に値上がる。せっかく安く購入できるチャンスを逃す手はない。

せっかくなら先行販売価格でのチケット購入をおすすめしたい


また、チケットを早めに押さえることで、開催までのラインナップ発表がより楽しめるようになる。
現時点ではまだ第一弾ラインナップが発表されたところだが、今後順次追加ラインナップが発表されていく。今後のラインナップによって参加を決めるという考え方もあるが、私はチケットを押さえた状態でラインナップ発表を待つことをおすすめしたい。というのも、チケットを買っていない状態では、追加されるラインナップに対して行かなくていい理由を探してしまうからだ。せっかく高額のチケットを購入するのだから毎回のラインナップ発表も最大限楽しんでほしいし、フジロックのチケットを握っていることを思い出せば辛い日常にも耐えられる。チケットが価値を発揮するのはフジロック当日だけでないのだ。

一人参加は民宿相部屋か公式のレンタルテントで

チケットを押さえたら次は宿の手配だ。
仲間内の複数人で参加するのであれば宿泊手段は広がるし、フジロック経験者がいてうまく手配してくれるかもしれない。一番ハードルが高いのは未経験者の一人参加だろう。未経験者の一人参加の場合の宿となると、民宿の相部屋キャンプサイトが選択肢になる。

フジロックのオフィシャルツアーセンターでは様々な宿泊プランを取り扱っているが、ビジネスホテルのようなものはなく、一人参加者を相部屋でまとめて宿泊させるプランがある。相部屋プランも会場徒歩圏内である苗場・浅貝エリアの民宿は競争率が高く、現時点(2025年3月1日時点)ですでに抽選が締め切られているが、その他のエリアについては3月7日から始まる第2期で申し込み受付が開始される。については先着順のため、開始早々に申し込めば確保できる可能性がある。

会場徒歩圏内の苗場プリンスホテル、苗場・浅貝エリアの申し込み受付はすでに終了している
ほかのエリアは3月7日に受付開始予定であり、逃さないようにしていただきたい


私も2023年には越後湯沢エリアの民宿に相部屋プランで宿泊したが、なかなかに快適だった。宿にはお風呂と布団があれば十分、というつもりで宿泊したが、大浴場は清潔感があり、朝夕の入浴も可能(もちろん宿によって状況は異なると思うが)。居室内のパーソナルなスペースは布団の上だけだが、基本的には皆寝に帰るだけなので不都合はなかった。
ただ、越後湯沢駅から会場まではシャトルバスでの移動になる点は要注意。バスの乗車時間が30~40分ほどかかるうえにタイミングが悪いとバス乗車までにかなり待たされることになる。シャトルバスは深夜運行しないため、ヘッドライナー終わりで宿に帰るか、翌朝まで会場で遊んで始発バスで帰るかの選択を迫られるのも意外と苦しいところだ。

越後湯沢駅から会場までの移動が面倒な場合におすすめしたいのがキャンプサイト、とくに公式のレンタルテントだ。フジロックの会場のキャンプサイトには毎年多くの人がテント泊をすることになるが、実は必ずしも自分でテントを用意せずともキャンプサイトに公式があらかじめ立てたテントをレンタルし宿泊することもできる。
レンタルテントを予約しておけば、当日は指定された設営済みレンタルテントの場所に行き、すぐに利用できる。イベント後も撤収作業などは不要だ。
寝袋だけ持ち込めば最低限の宿泊環境は確保できるので、荷物も比較的少なくて済む。

公式のレンタルテント
寝袋だけ持ち込めば最低限の宿泊環境は確保できる

料金は、前夜祭から月曜日までの4泊5日で40,000円+キャンプサイトチケット5,000円。正直、一人用のテントが購入できるほどの価格帯だが、テントの持ち込み・設営・撤収作業が不要な点は大きい。

そのほかにかかるコストとしては入浴料金。キャンプサイト利用者の入浴手段はいくつかある。
・キャンプサイト内のシャワー
・キャンプサイト利用者専用のお風呂(内湯・温泉あり)
・近隣の日帰り入浴

キャンプサイト内のシャワーを除くと、いずれも一回1,000円程度はかかる。
キャンプサイト利用者専用のお風呂は距離が近いこともあり、かなり混雑するので要注意。
私のおすすめは「雪ささの湯」。キャンプサイトからは徒歩で20~30分ほどかかるが、しっかり疲れがとれるし、毎朝夕利用してしまう。


キャンプのメリットはやはり会場の近さ。
深夜まで遊んでもシャトルバスを気にする必要はないし、常にフジロックの中にいるという充実感も大きい。最大限フジロックを堪能したいという方にはぜひキャンプをおすすめする。


装備は最低限でOK

最後に装備についてだが、正直なところ手ぶらでも問題はない。
が、やはり最低限の準備をした方が快適さは増すし、安心感もある。ここでは私が思う最低限の装備をお伝えしたい。

  1. 折りたたみ椅子
    フジロックの必須アイテムといえばやはり折りたたみ椅子。
    ほかのフェスだと折りたたみ椅子の利用は許容されないことも多いが、フジロックでは誰もが折りたたみ椅子を利用している。大型の組み立て式の椅子を持ち運ぶのもいいが、私のおすすめは小さめの折りたたみ椅子。
    少し休むぐらいなら十分だし、何よりも持ち運ぶ荷物を少なくすることができるメリットは大きい。

2.靴
フジロック参加者の誰もを悩ませるのが靴問題。
長丁場の開催期間と山道、変わりやすい天気の全てに答えられる最適解を
誰もが求めている。
現時点での私の解答は「ハイカットのトレッキングシューズ」だ。
スニーカーでも行けないことはないのだが、やはり会場中を歩き回れば疲れは溜まりやすいし、雨にも弱い。
野鳥の会のレインブーツが必須アイテムかのように語られることも多いが、直近2年間は開催期間中ほとんど雨が降らず、活躍の機会が少なかった。
本当に大雨に見舞われて仕舞えば、レインブーツだろうと浸水は免れない。
であれば、バランスの取れた「ハイカットのトレッキングシューズ」を推奨したい。

3.雨具
最後に雨具だが、フジロックで大雨に見舞われると、本当に地獄絵図になる。
そうなってしまえばどれだけ対策をしても誰もがずぶ濡れになってしまう。
その前提で対策するとすれば、kiiuのレインポンチョを持っていく程度で良いだろう。
フジロックに万全の対策は存在しない。ある程度、覚悟と諦めを持って参加して欲しい。


以上、初めてのフジロックに必要な最低限の準備をみてきたが、大事なことはいきなり完璧を目指さなくてもいい、ということだ。
初めて参加すれば当然うまくいかないことも出てくるだろうが、翌年以降に改善すればいいし、毎年夏に向けて徐々に装備を充実させていくのも楽しみの一つだ。
ぜひ一度トライしていただきたい。


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