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『ヒッキー愛・LOVE・モード』/宇多田ヒカル本③


『ヒッキー愛・LOVE・モード』は、2000年時点での宇多田ヒカルの発言やエピソードを集めた書籍である。本書は、宇多田が当時出演していたラジオ番組やインタビューでの発言を中心に構成されており、彼女の考え方や感性、さらにはその素顔に触れることができる内容となっている。

2009年に『点』が発売されるまでは、こうした語録集のようなものは本書しかなかった。たぶん事務所の許可など取っていないのだろうが、少なくともその9年間で一定の役割を果たしていた書籍である。

本書では、宇多田ヒカルというアーティストの親しみやすさを感じさせるコメントが多数収録されていて、彼女の「素顔」に迫ることができる。ただしそれはあくまでもオフィシャルな素顔で、ラジオなどでの発言が中心であるが。とはいえラジオというものが、法律上は公共性を義務付けられながらもタレントたちの私的なおしゃべりの場としても機能していた2000年という時代性を思い返すと、やはりここでの語録は、カギカッコ抜きの素顔を反映していると思いたくはなる。

なお、『ヒッキー愛・LOVE・モード』は、単なる名言集やエピソード集にとどまらない。アーティストの発言というものが持つ意味を、事後的に振り返るための研究書としても一読の価値がある。
また、このタイトルをこんにち目にすると『BADモード』の字づらを少しだけ想起させられ、「iモード」などの語を踏まえて思いついたのであろう『ヒッキー愛・LOVE・モード』というタイトルが、二十年以上の時を経て『BADモード』と響き合うという悠久性も個人的にはぐっときている。



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Teamヒッキー著『ヒッキー愛・LOVE・モード』

(アース出版局 2000/9/1)


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