隠れたウナギの名店
関東の背開き(背中を開く)と関西の腹開き(お腹を開く)のどちらが好きか聞かれることがあります。
うなぎの話。
僕の人生には、そこまで「うなぎ」を食べる機会はありません。
せいぜい丑の日に食べるだけなので、年に一度、多くて二度、いや、見栄をはりました。
学生の一人暮らし、上京してから間もなくと貧乏暮らしが長かったので、
10年近く食べていない時期もあったと思います。
ファストフードだったら1000円以下で食べることができる今では考えられないけれど。
憶えているのは東京で初めて「うなぎ」を食べた時、
「あれ?こんなに柔らかいんだっけ」
と思ったこと。
その際、関東は蒸してから焼き、身の厚い部分に串を入れないと身が崩れてしまうから背中を開くのだと教わりました。
これはこれで美味しい。
「東京のゴムみたいな鰻なんか食べられん」
と安八移住後、そうおっしゃる飲み先輩もいらっしゃいました。
確かに腹焼の背中パリパリの焼き具合の鰻を食べると「これこれ」と懐かしい味にホッとしたことも憶えているけれど、蒸して焼いた鰻も好きなんだよなぁ。
「あれも美味しいじゃないですか?」
と反論するのですが、皆さん、僕が味覚に鈍いことをご存知なので、信用していただけません。
なんて話をしていたら、鰻を食べに行こうという話に。
車で5分程度の墨俣地区に隠れた鰻の名店があると聞いたのです。
墨俣は古くから宿場町として栄え、僕が子どもの頃までは料亭があり、
夜は芸者さんが歩く賑やかな場所でした。
歴史を感じる古い店内は、上品なたたずまいの高齢男性が一人で切り盛りされていました。
出てくるまでに30分以上待ちます。
ファストフードでは味わえない豊かな時間なんですよね。
しかも美味しい……僕では信用ないでしょうが、
「この味で2,400円は安いなぁ」
食通の飲み先輩方もご満悦だったので、間違いないと思います。
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