回転寿司の安達さん
僕は寿司が大好きなのですが、パートナーは刺身も酢飯も苦手。
よって33年のつきあいになるけれど、2人で寿司屋に行ったのは一度だけ。
20年ほど前、北海道の二人旅の途中、「さすがに一回くらいは行きますか?」となったのです。
彼女は「いくら」と「たまご」を交互に食べていたっけ。
あれから一度も行っていないのですが、
今の回転寿司だったら彼女を誘ってもいいかなぁと思っています。
昨晩、約1年一緒に学んだ手話講座のメンバーとの忘年会で指定されたのは回転寿司でした。
そのメンバーで会食する時は回転寿司が多い。
みんな、さぞかし寿司がお好きなんだろうなぁと思ったら、中心メンバーの女性は刺身が苦手だと言うので驚きました。
そういえば彼女がオーダーするのは、天ぷら、から揚げ、ポテト、デザートと寿司以外が多い。
「今の回転寿司はメニューの幅が広いし、コスパがいいんだよ」
なるほど。
最近の回転寿司はタッチパネルで注文することが当たり前になり、メニューを眺めているだけでも楽しい。
ただ、カウンター越しに人間が握る回転寿司は少なくなり、
キッチンに直結しているベルトコンベアから流れ、
それを取って食べるだけの店内の光景を眺めていると養豚場ならぬ養人場に見えることもあります。
僕は寿司職人の手つきを見るのも好きなのでしょう。
15年ほど前、映画のプロモーションで1ヶ月90食寿司を食べるブログに挑んだ時、いくつか立ち寄った回転寿司で忘れられない人がいます。
カウンター越しで握ってくださるのですが、目の前に空の皿が積み上がり、顔が見えず、胸と手つきしか見えない店でした。
僕についた職人さんは「安達」と書かれた名札をつけていらっしゃいました。
「イラッシャイマセ~」、「ナニ ガ イイデスカ?」
外国人の発音です。
僕は心の中で「本当はアダチじゃないでしょ?」と悪態をつきながら、
彼の褐色の手で握りすぎて固いシャリを噛みしめ、ニヤニヤしながら食べていました。
そんな楽しさも今後はないのかな。