日米安保は幻想、実際は沖米安保
1.「沖縄振興予算」は特別枠の予算でない
「基地反対と言いながら、金くれと言っている」と沖縄大好きの初老の大和人大学教授。沖縄振興予算と引き換えに米軍基地を受け入れている沖縄を批判していたが、どこか沖縄を下に見る。上から目線で、沖縄振興予算を誤解している。沖縄振興予算を要求すると大和人国会議員から「沖縄を甘えさせるな!」と差別的で根拠もない発言が現在でも相次ぐ。
沖縄県民は大和人からそう言われると「米軍基地反対と言って金(沖縄振興予算)を要求するのは、恥ずかしいことだ」思い込む。
が、県民も大和人もとんでもない誤解をしている。
沖縄振興予算は、沖縄県以外の都道府県に交付されている国庫支出金、地方交付税と変わらない。沖縄県以外の各都道府県は、各府省に予算要請し所管府省ごとの交付される。沖縄県だけ内閣府により一括計上交付されるだけ。
沖縄振興予算は他の都道府県の国庫支出金、地方交付税と同じだ。「沖縄振興予算」という名称が他の都道府県より特別に別枠で国から予算が出ると思い込んでいる人が多い大きな誤解だ。国からの国庫支出金、地方交付税にしても突出していない。
国からの財政移転総額(国庫支出金、地方交付税総計)は平成28年度決算ベースでは全国12位。人口一人当たりでも全国5位(※岩手、宮城、福島、熊本を除く)。
沖縄県への国庫支出金は総額3948億円(全国10位)
〃 地方交付税は総額3545億円(全国14位)
米軍基地も負担していない他の都道府県が、はるかに沖縄より優遇されている。沖縄は過重に米軍基地を抱えても優遇されていない。
沖縄は「米軍基地抱え損」。
沖縄県の公共工事一人当たりの事業費額は10万4,001円で、都道府県別ランキングでは、沖縄県は22位。(都道府県別統計とランキングで見る県民性より、平成13年度~平成17年度までの平均)
因みに、1位は東京で32万4,834円。沖縄の3倍。2位島根県(22万4,079円)、3位新潟県(19万6,570円)、4位北海道(18万9,233円)、5位石川県(15万2,494円)となっている。
沖縄振興予算という特別な予算で、バンバン公共工事をしているイメージは間違いということもデータでも明らか。
つまり、本土の都道府県のほとんどは米軍基地を受け入れることなく国から予算をもらい公共工事で使っている。ムチなしの「アメ」だけを得ている。
明治大学の池宮城秀正・政治経済学部教授はMeiji.netで「『沖縄振興予算』という呼称が、誤解を招いている」と題し次のように述べている。
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沖縄県が、国から他の都道府県とは別枠で補助を受けているということが誤解、錯覚であることがわかると思います。むしろ、沖縄県にとっては、日本全国に便益をもたらす純粋公共財である米軍基地の存在によって過重な負担を強いられているのに対して、その負担とイコールとなる便益になっていないのがわかります。
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沖縄に基地を負担させるために悪知恵がはたらく大和人が「沖縄振興予算」がさも別枠の国の補助金が沖縄に湯水のようにおちているようにイメージ操作したのだろう。
2.基地経済は40年前の話
沖縄県の経済界でも「米軍基地は経済阻害要因」と認識されている。
大和人がよく持ち出す「基地経済」は40年前の話。「また始まった」と沖縄県民はうんざりする話題。現在基地収入は5%程度。観光客増加に伴いホテル用地が必要だが、膨大な米軍基地があるためホテル用地確保も難しい。
広大な土地の割には経済的恩恵がなさすぎる邪魔な存在が米軍基地。
返還された北谷町桑江・北前地区、那覇新都心地区、小録金城地区、三区合計の直接経済効果が大きいことが数字として表れている。
三区合計・直接経済効果〈返還前〉89億円→〈返還後〉2459億円
三区合計・所得 〈返還前〉27億円→〈返還後〉616億円
三区合計・雇用 〈返還前〉327人→〈返還後〉2万3564人
三区合計・税収 〈返還前〉8億円 →〈返還後〉298億円
平成29年度の沖縄観光客数は、957万9,900人で過去最高を記録。対前年度比で9.2%増加(81万700人増加)。特に外国人観光客の伸びは著しく対前年比26.4%増(56万2,900人増)の269万2,000人。
沖縄観光成長法則を発表し、20年前に沖縄観光入域客1000万人構想を提唱した沖縄観光速報社の渡久地明氏は、精密な分析から「観光入域客2000万人」になると推測している。
ハワイは全米屈指の失業率が低い州。おそらく観光入域者数2000万人~2500万人となった場合、観光収入は1兆5000~2兆円億円規模になり、ハワイと肩を並べる。日本一失業率が低い県になり、所得も全国平均へ近づくと予測できる。
3.日米同盟賛成するが米軍基地は引き受けない大和人
大和人のメンタルティーは、実に不可思議だ。
日米同盟は声高に叫ぶが、米軍基地は引き受けない。
「米軍基地が移転しないようにA空港の利用活性化に商工会が一所懸命に動いた」自慢げにある大和人が私に吐露した。地方で発着回数が伸び悩んでいるA県のA地方空港。「米軍基地本土移転」で揺れた時、A県では普天間基地から移駐されることを恐れたのだろう。
商工会、商工関係者は米軍移転されれば、A県のイメージダウンになる、平和な生活が脅かされると動いた。表向きは空港利用活性化運動であったが、裏コンセプトは「米軍基地受入れ反対運動」だった。
本音だとおもうが、平和ボケしているお粗末な発想に、聴いた私の方が恥ずかしくなった。
米軍基地受け入れを拒絶しながら日米安保賛成する感覚は誰が考えてもおかしい。原子力発電賛成であれば、原子力発電施設地元受け入れは子供でも分かる論理だ。
徳之島の基地反対集会で「こんな美しい島に基地はいらない」と移設反対運動を島を挙げて反対しましたが、非常に失礼な発言。
すでに沖縄本島の約20%が米軍基地になっている。沖縄県民が「こんな美しい島に基地はいらない」と言いうのはわかるが。
知念ウシ著「ウシがゆく」~植民地主義を探検し、私をさがす旅~(沖縄タイムス)に、もっともな知念氏の提言がある。
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【P283~P285】
鳩山首相は「最低でも県外」といって、政策にしようとし、今回は挫折した。そのプロセスで明らかにされたのは、日本人が日米安保を欲しがっているくせに、自分ではその基地を担いたくないくらい米軍、特に海兵隊を嫌っており、つまり、日米同盟とは実は非常に危ういものだということだ。
だから、日本政府は(おそらくアメリカ政府も)県外移設が提起されることによって「今回のようなことが(=移設反対の徳之島の島民大会)が全国あちらこちらでどんどん起きるということになると、日米同盟というものをどう考えるかという議論に行きかけない」(岡田外務大臣が徳之島の島民大会の二日後の参議院外交防衛委員会で大会にふれて、『琉球新報』2010年5月8日)と恐れている。
ならば、日米同盟の見直し、特に日米安保のは気を広く国民に説得したい日本の平和勢力などは、まさしくこのチャンスを生かし、沖縄からの基地の引き取りを提起するのが妙案だと思うが、それがないのはどうしてなのだろうか。
〈中略〉
今後、私たちは、引き続き、日本人に「基地を引き取る」ように呼びかけよう。特に基地をなくしたいと願っている人々に、「基地を引き取りつつ反安保を実現していく」ように励まそう。
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基地なき日米同盟は幻で、実質的に沖米同盟、沖米安保なのだ。
日米同盟は大和人幻想にしか過ぎない。
A県や徳之島の様に「地元に米軍基地が来るぞ~」とアナウンスされただけで震え上がるのは、沖縄だけなく同盟国米国にも失礼だ。「同盟」が大事であれば、反米、基地反対運動が拡大しようが大和人は基地を引き取る義務がある。基地があることで同盟関係を真剣に考える。
沖縄は、基地があることで、同盟関係のいい面、悪い面、現実を直視せざろう得なかった。
基地なき同盟関係は、同盟関係とは言えず、沖米同盟により大和人は同盟関係をまともに議論することもなかった不幸な国民なのではないのか。
軍事評論家の田岡俊次氏は、琉球新報(2010年1月17日)で、普天間基地は長崎県・海上自衛隊大村航空基地が移設先として合理的だと提言している。
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「普天間」県外移設案提言/田岡俊次氏に聞く「佐世保一体で効果」
米軍普天間飛行場の県外移設をめぐり海上自衛隊大村航空基地(長崎)の活用が急浮上し、社民党と国民新党が視察した。同基地利用を盛り込んだ提言をした鳩山由紀夫首相の私的研究会のメンバーで、軍事ジャーナリストの田岡俊次氏に軍事運用面の詳細や可能性について聞いた。
―普天間移設の現行案は。
「名護市辺野古での環境影響評価には、3年後に沖縄配備予定の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの騒音データを入れていない。エンジン出力が現在普天間にあるCH46ヘリの4・4倍(6150馬力が2基)で騒音が大きい。鳩山首相が辺野古でない地域を探すのは現実的判断だ」
「防衛省は、歩兵部隊とヘリ部隊が一緒にいる必要があると米軍に言われ、県内移設を進めたが、その説明は大事な点を隠している。もう一つ、米軍佐世保基地(長崎)の強襲揚陸艦と一体となって効果がある。揚陸艦が佐世保で、歩兵とヘリが800キロも離れた沖縄に配備している現状は、消防士と消防車が離れて配置されているようなもので理想的でない」
―県外移設の案は。
「揚陸艦に乗るのは第31海兵遠征部隊(MEU)だ。歩兵1個大隊約800人、ヘリ20数機、装甲車20数台、砲6門、垂直離着陸攻撃機ハリアー約6機など計2200人。海外での紛争や暴動、災害などで一時的に空港や港を確保し、在外米国人を救出する任務を持つ。これをグアムに移せば、航海だけで4日かかり救出が困難になる」
―大村基地の活用は。
「揚陸艦との一体化を考えると、佐世保の南約35キロに海自大村基地がある。1200メートルの滑走路で元の長崎空港。国交省管轄だが近く防衛省に移管予定で、以前から基地前面を約11万平方メートル埋め立てる拡張計画があり、環境アセスも本年度で終わる。水深3メートルほど、底は岩盤で埋め立ても容易だ。駐機場スペースとしてさらに埋め立ても可能で辺野古よりはるかに安い」
「現行移設案は滑走路が1600メートル。大村基地はもともと旧海軍飛行場で、かつての滑走路の一部は北隣の竹松駐屯地になっており移転させれば300メートルほど伸ばすのも可能だ。補給用の輸送機は沖の長崎空港も利用できる。大村基地の東隣には昔、韓国人密航者を多数入れた法務省管轄の大村収容所があり、航空群の兵舎建設も可能ではないか」
―歩兵とヘリの一体化は。
「佐世保基地の北西約6キロに、離島防衛が専門の陸自西部方面普通科連隊がいる相浦駐屯地がある。ここへ沖縄にいる海兵隊の第4連隊を移し、普通科連隊はキャンプ・シュワブに移せば双方が任務に適した配置になる」
―実際に使える案でないといけない。
「米軍も歓迎する案でないと実現は困難だ。沖縄県民の県外移設への願いと、海兵隊の運用効率の向上を両立させるのが狙い。陸上、海上幕僚監部の首脳部に見せたが軍事的には合理的な案だと認めている」
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普天間米軍基地は、辺野古移転で一件落着というのはナンセンス。
辺野古へ普天間基地を移転しても実質的な沖米安保、沖米同盟は変わらない。
沖米安保、沖米同盟からどうすれば日米安保、日米同盟にできるのか、国も大和人にとっても避けられない大きな問題だ。
http://www.meiji.net/life/vol131_hidemasa-ikemiyagi
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31149040Q8A530C1ACYZ00/