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「天秤が釣り合わない」 (リーグ第2節・ジュビロ磐田戦:4-5)

 Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsuでのジュビロ磐田戦は4-5で敗戦。リーグ開幕2連勝とはなりませんでした。

 壮絶な撃ち合いとなり、後半には勝負どころがいくつも訪れた試合でしたが、前半30分に3失点してした時点で、どう考えても苦しいゲームだったと思います。

 1点が重いスポーツであるサッカーで、前半30分の時点で3点を奪われるというのは、ゲーム自体が壊れてしまいます。鬼木監督としても、準備していたゲームプランに大きな変更を余儀なくされたはずです。

 3失点している時点でチームとして問題を抱えていたと指摘せざるをえません。そこの構造的な問題に関しては本文で触れていますが、ただそれを差し引いても、ゴール前であまりにイージーにやられ過ぎたというのも反省しなくてはいけません。効率よくやられ過ぎました。

 前半30分までにジュビロ磐田は3点を奪ってますが、放ったシュートは3本です。つまり、3本を打たれて3失点。前半を通じてもチーム4本で、その4本目はアディショナルタイムに山田大記が遠目から放ったミドルシュートでした。

 相手に押し込まれ続けていた中での被シュートならば話は別ですが、前半のボールポゼッションを見ても、川崎が74%、磐田の26%と大きく差がありました(DAZN中継のデータ)。体感的にも8割近くボールを支配し、ほとんど崩されるようなチャンスは作られていなかったにも関わらず、その数少ないピンチで打たれた3本で3点を与えてしまったわけです。

 いつも思いますが、サッカーで勝負を分けるのは、尽きるところ、「ゴール前」です。相手からいいようにタコ殴りされていても、最後の局面でゴールを許さなければ、負けることはありません。

 昨年の天皇杯決勝もそうですが、それをわかった上で勝ち切れるチームになってきている手応えがあっただけに、被シュート3本での前半3失点が悔やまれます。

「やっぱり抵抗し切れていなかった。それがあります」

試合後のミックスゾーンで、脇坂泰斗失点の反省の言葉をそう述べています。

「相手がセンターバックを吊り出して、目線を変えてきている。それで2点やられている。そこは相手の狙いとしてはあったと思うので。そこで目線が変わってから誰が誰につくのか。そこはできていなかったと思います」

 失点シーンを分析すれば、チームの抱えている守備の問題点は指摘できますし、それは選手たちもそこはわかっていると思います。

 でも、そのことを踏まえた上で、「もっと自分たちにやれたことがあったのではないか」。試合後のミックスゾーンで、何人かの選手と話していた際に滲み出ていたのは、そういう部分だと感じました。

 例えば、後半に追いついてからの試合運び。
プロサッカーにおいて相手に3点先行されて追いつく作業というのは、滅多に起きることではありません。それでも一度は追いついたことは、ホームチームの意地でもありました。

 ただ3点差を追いつくまでにかなりのエネルギーを使ったいたのも事実で、そこからさらにギアを上げるというのは、それ以上に大変な作業だったはずです。59分にマルシーニョが決めて3-3になってから、まだ30分ほど残っていました。これが残り10分とか5分であれば、勢いのまま等々力劇場で飲み込んでしまうのですが(去年のアビスパ福岡戦がそうでした)、まだ30分もあったわけです。

 試合後の三浦颯太にそこの見解を尋ねると、2点差を追いついたACLの山東戦を引き合いに出した上で、そこで「ひと息ついてしまった」と難しさを口にしています。

「撃ち合いになって、追いついていい流れでしたが、仕留められなかった。それは(ACLの)山東戦を思い出すというか。あの時もトドメをさせなかった。追いついたときにひと息ついてしまったのが自分たちの敗因だと思います」

 後半から投入されて試合の流れを変えた瀬古樹も同様です。彼にも尋ねてみましたが、追いつきながら逆転まで持っていけなかった現状をもどかしく感じているようでした。

「昨シーズンもそうでしたが、追いつくところまではいけている。そこで勝ち切るところであったり、負けないということを意識しなければいけない中では、もったいないPK2個でした。そういうところだったと思います」

ではここからが本題です。あまりにいろんなことがあったこのゲームを振り返っていきたいと思います。

ラインナップはこちらです。



全部で約15000文字。読み応えはたっぷりです。負けレビューですが、モヤモヤしている方はぜひどうぞ。

※3月4日に後日取材による追記をしました。後半からアンカーを務めた山本悠樹に3-3に追いついてからの試合運びについて聞きました。そして「自分は課題まみれ」だと話す彼が、守備の課題に対してどう取り組んでいくのかも語ってくれています。約3000文字の追記です。

→「プレスを前から行きたいというチームの方針があって。それのために前に人数をかけるんですけど、それを剥がされた後にケント一枚だったので。その脇で前進されるというのは多い」(山本悠樹)。アンカー山本が感じていた、3-3に追いついてからの試合運び。そして、守備の改善に中盤はどう取り組んでいくのか。

■「1失点目は相手のセンターバックから(ロングボールが始まって)、ディフェンスラインとケント君の間のスペースのところ」(佐々木旭)、「勢いで(プレスを)行ってしまうこともあるので、そこは止めたりする必要がある」(脇坂泰斗)。いかにして中盤の間延びを縮める作業をするのか。選手たちが認識している守備の問題点。

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