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オールの小部屋から⑨ 目次づくりと文春のジャングル

 すっかり涼しくなってきましたね。
 ついにオール讀物11月号、校了しました! 読みどころ満載、まるで1冊の新書のような総力特集「絶対、小説家になる!」については、10月20日の発売日にむけておいおいご紹介していくとして、今日は、目次の話です。
 オール讀物の目次は「両観音開き」になっています。
 表紙を開くと、まず、こんなふうに折りたたまれた目次が出てきます。

オール讀物の表紙を開いたところ

 これを左右に広げると、

目次を左右に1回広げたところ

 さらに左側をもう1回、広げると、

左端をもう1回、広げたところ

 目次の全貌があらわれる……こういう仕組みになっております。今ではあまり見ることのない、けっこうめずらしい造りの目次です。
 本文ページを校了しながら、同時進行でこの目次をつくっていくのですが、時々聞かれるのが、目次なのに「どうして小説や記事の順番どおりに見出しが並んでいないの?」ということです。
 たしかに、言われてみれば! 本の目次は、内容と同じ順番で並んでいますから、そちらに慣れていると、違和感をもつ方がいるのは当然です。
 おそらくこれは雑誌特有の伝統文化なのですが、雑誌の目次では、通常、その号でとくに目玉の記事、読んでほしい記事をいちばん最初に置くんですね。新聞の一面記事みたいなもので、編集部の狙い、意図、ニュース価値が読者に伝わるように(実際のページ順とは関係なく)並べていく。
 さらに文春の雑誌の場合、編集者に「週刊文春」経験者が多く、週刊誌的な雑誌文化の洗礼を受けているため、小説誌であっても「右トップ」「左トップ」「真ん中」を意識して目次をつくることが多いような気がします。

オール11月号目次の校正刷

 こちらが刷り上がったばかりのオール11月号の目次ですが、

「右」=総力特集「絶対、小説家になる!」(右の先頭は赤川次郎さんの人気シリーズ新作)
「左」=「円熟のベテラン競演!」(左のトリは北方謙三さんの三作一挙掲載)
「真ん中」=坂東玉三郎インタビュー「歌舞伎界に残したいもの」(聞き手・文 真山仁)

 こういう並びになっています。
「右」にいちばんの目玉企画、「左」はメイン特集ではないけれどもぜひ読んでほしいもの、「真ん中」にはオールの場合、小説ではないエッセイやグラビア、対談、クスッと笑える箸休め企画などを置くようにしています。
 ちなみに、この11月号の目次絵は、noteにて開催した「#第2回オール讀物目次絵コンテスト」最優秀作(綾霧裕己さん)です。綾霧さん、ありがとうございます!

 週刊文春の場合は、「右」に政治経済など硬派なスクープ、「左」に芸能スキャンダルなど柔らかめの記事、「真ん中」に医療、健康、お金といった生活に役立つ企画を置くことが多いと思います(もうなくなりましたが、電車の中づり広告はとくにそうでした)。

 月刊文藝春秋も同様ですね。こちら最新の11月号の目次ですが、

文藝春秋11月号の目次(観音開きです!) 

「右」=森功さんの「森喜朗元首相へ献上された疑惑の紙袋」(←ものすごく面白かった。紙袋の中身が語られた瞬間、思わず声が出ました)
「左」=「寺島しのぶ 梨園の母ドキドキ奮闘記」、河西秀哉さん「美智子さまが狙われている」(←こちらも衝撃。いまネットで上皇上皇后がバッシングされてるってみなさんご存じでしたか!?)
「真ん中」=五木寛之さん「昭和歌謡で万葉集を編もう」

 こういった目次になっています。月刊文春も「両観音開き」ですね。他の雑誌で、いま観音開きの目次ってあるでしょうか?

オール讀物11月号 表紙

 オールに話を戻します。11月号はオール讀物新人賞の発表号。上記の目次をよーくご覧いただくと、中央部分に、新人賞発表「かはゆき、道賢」小林尋、と掲載しています。この受賞者の写真に注目してください。
 写真を拡大してみましょう。

第103回オール讀物新人賞受賞者、小林尋さん(©文藝春秋)

 これ、どこで撮った写真かわかりますか? 私もまったく知らなかったんですが、文藝春秋の裏庭らしい。千代田区紀尾井町のビルとビルの谷間、都心のエアポケットに、草木伸び放題、ヤブ蚊飛びほうだい、ヘビの這う音さえする、ジャングルさながらの景色が広がっているのですね。
 社のベテラン先輩に聞いたところ、このジャングル地帯は、知る人ぞ知る秘密のスポットで、辿りつくのも大変な上、ときどき迷い込んで帰ってこない人がいる、いわくつきの場所なんだそうです。薄暗くなると、来たはずの道が忽然と消え、歩いても歩いてもジャングルから抜け出せなくなるのだそうで。
 そういえば、この写真をとったカメラマンも……

(オールの小部屋から⑨ 終わり)


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