オールの小部屋から⑫ 編集部員紹介 シマダさんの巻【後編】
文春にとびこんだ大学生は、何を見、何を思い、どのように編集の仕事を覚えていくのか――。前回につづいて、編集部員シマダさんのインタビュー【後編】をお届けします。
――入社後、1年半「オール讀物」編集部で働いてきて、「これは頑張ったぞ」という仕事って何ですか。
シマダ 「高校生直木賞」をオール編集部で運営してるんですけど、その関連で高校生を呼んでイベントとかをちょくちょくやってまして。今年2月に阿部智里さんのオンライン読書会を開催したんです。課題図書として2作、用意して、それを読んできてもらって阿部さんと全国の高校生がオンラインで読書会するイベントだったんですけど、その司会をやりました。
私、司会をやる人生だと思ってなかったので、自分の人生にこんなことも起こるんだってびっくりしまして。人前で喋るのが本当に苦手なんです。できるだけ人前に立ちたくないという思いで生きてきたんですけど。
――シマダさん、すごく喋りが上手だと思うんですが。
シマダ いやいやいやいやいや……。
――最近の若い人は学生時代からディベートしたり、プレゼンしたり、喋り慣れている人が多いのかなと思ってました。
シマダ 意外とそうじゃないんです。人生で初めて司会みたいなことをやって、何とか乗り切れたかなと自分でも思いまして。「楽しかったです」というメッセージを高校生からいただいたり、「もっとこうだとよかったです」みたいな提案もあったんですけど、でも、参加した方が阿部さんと交流する貴重な時間をサポートできたならよかったなというふうに思いました。
阿部さんも高校生と話して「いろんな発見があった」とおっしゃってくれて、頑張ってよかったなと。なかなかできないことだと思うんですけど、担当として任されてやってみたら、すごく実りのある仕事だったなと個人的に思ってます。
――イベントの司会って大変なんですよね。始まっちゃうと誰も助けてくれないし、全国各地から見てる人がいるし。でも、シマダさんは緊張してる感じに見えませんね。
シマダ 私、わりと普段から何も感じていないように見られることが多いので、緊張が伝わりにくいタイプかもしれないんですけど。当日になってアタフタしないよう、事前にしっかり準備しようと思って、パワポつくったり、こういう話しましょうって打ち合わせを阿部さんとしました。反省点としては、高校生って自分からなかなか話してくれない。参加者のみなさんから話を引き出すのにも技術が要るぞと思って、これは自分の課題として、また次の機会が今後ありそうなので、頑張っていきたいなと思ってます。
――では、一番つらかった仕事って何ですか。
シマダ つらいなっていうことはそんなになかったんですけど、なんだろう……。オールって土日両方とも休みってことが少ないじゃないですか。校了が週末を挟んでいたり、土曜日に何かイベントが入ったり。会社の外でも、作家の方が講演するのに同席したり。「いつ休めばいいんだ!」みたいなことは、この1年半で、だんだん要領がわかってきた感じがあります。
去年は、すべてがわからないことで、常に頑張り続けようという感じだったんですけど、最近は適宜立ち止まりつつ、休憩しつつやるのがいいのかなと。休まないと自分も体力が落ちているなと思ったし、そこの判断もやっぱり自分でするものなので、そういう自己管理的なことが、つらいっていうわけじゃないんですけど難しいところだなと、働く上で思ってます。
――オール讀物編集部にいるうちに「これはやってみたい」という仕事の目標みたいなものはありますか。
シマダ 実は1つありまして。オールって毎号、わりと特集企画があるんですよね。メインの企画のほかに1つ、2つ……と、小説だけじゃなくて、いろんな企画ものが入っている雑誌なんです。そこで「麻雀特集をやる」っていうのが、オールにいる間の自分の目標としてあります。以前、将棋特集ってありましたよね。
――ありました。藤井聡太さんブームの頃に、ナンバーを真似してオールでも特集を組んだ。
シマダ 麻雀って、私の感覚としてはいま若い人に好まれていて、私も同期や友達とやったりするんですけど、オールとして何か鉱脈があるのではと個人的に思ってまして。いつか企画が通るようにと着々と準備を進めております。
――文春って人事異動がすごく多い会社です。シマダさんの同期の中にもすでに異動を経験してる人がいますね。
シマダ はい。編集から宣伝に行ったり、営業から編集に行ったり、コミックに行ったり。垣根なく異動するというか、どこでもあり得るみたいな感じで内示が出ますよね。
――次に行ってみたい部署とかありますか。
シマダ もともとノンフィクション系の書籍を志望してたので、ノンフィクションの部署、雑誌もやってみたいですし、もちろん単行本もつくってみたいです。雑誌で連載を担当していると、連載が終わって、それが1つの本になり、商品として完成していくプロセス、店頭で売られるまでの流れがすごく面白いなと思っていて。
あと関心があるのはウェブ系の部署ですね。オール讀物には電子版やウェブ版がなくて、紙でしか読むことができない雑誌なんです。誌面に載った対談記事をあとでウェブに転載して読んでいただいたりもしてるんですけど、ウェブに載せることで、より一層、新たな層に読んでもらえることがあると思うので、そういう可能性を探ってみたいかなと。
――1日のタイムスケジュールってどんな感じですか。
シマダ 朝起きて、午前中に会社に来て、メールを返したりして。あとはインタビューの原稿をまとめたり、出かけるときは出かけて打ち合わせに行ったりして、気づけば夜……って感じでしょうか。本当に日々全然違うことをしてるので、平均的なタイムスケジュールってないですよね。
――世間のイメージとしては、雑誌をつくってると夜が遅いんじゃないかとか、徹夜するんじゃないかという疑問もあるかと思うんですけど、どうですか。
シマダ ないですね、それは。読まなきゃならない本やゲラが目の前にあって、夜までかけて読むとかはあるんですけど、雑誌の仕事で夜中ずっといるみたいなことはほぼないです。オールは毎月の校了も夕方にやりますし、夜には終わって家に帰れるので。他の雑誌だとまた違うかもしれないんですけど、オールにいる限り、徹夜して仕事するみたいなことはこれまでなかったです。
――社会人になって、休日はどういうふうに過ごしていますか。
シマダ 洗濯したり掃除したりしつつ、やっぱりお金を稼いだ分、有意義に使いたいので、いろんな舞台を見に行ったりだとか、お笑いを見に行ったりだとか。旅行は香港とか台湾とか、休みを使って海外に行くこともありますけど、基本は都内で、先週の日曜も、池袋で舞台を見ましたし、今週の日曜は船橋にバスケを見に行きます。ちょっと自分の中でブームが起こってまして、男子バスケに推しメンがいるんですよ(笑)。
――最後の質問です。1年半働いてきて、文藝春秋ってどんな会社だと思いますか。オール讀物ってどんな雑誌でしょうか。
シマダ 会社に対するイメージはいろいろだと思うんですけど、他社の人と交流する中で、確実に社風ってあるなと思うようになりまして。「文春=自由」っていうのはまさにそうですよね。働いている人の気持ちが自由なのが文春の社風なのかなと個人的に思ってまして、みんなが同じ方向をむいてガツガツしてないっていうとあれなんですけど、先輩のみなさんが自由な心持ちをしてるところが私の思う会社の良いところであり、会社に入って新たに発見したところだと思ってます。
働いているいまも、あの分厚いオール讀物を編集部員5人でどうやってつくるんだろうっていうのが本当に不思議なんですけど、でも5人でつくってまして、毎月毎月ちゃんと出ています。多くの方にとって小説誌を読む機会ってあまりないかもしれませんが、オールでしか読めない記事が本当にたくさん載っているので、「こんな若者がつくってるんだ」と思って、ぜひ手に取ってもらえたら嬉しいなというふうに思っております。
以上でおしまいです。お読みくださり、ありがとうございます。
「オールの小部屋から⑤」東海林さだおさんの回にも記しましたが、シマダさんが退院直後の東海林さんに果敢にインタビューしたポッドキャストがこちらです。
門井慶喜さんから「シマダさん、看護師さんみたいですね」と感想をいただいた伝説回。ぜひ聞いてみてください。
そして、文藝春秋という会社に興味がわいてきた学生のみなさん!
こちらが2025年度の採用案内です。どこかにシマダさんが登場しているかも……。
多くのみなさんのご応募をお待ちしております。オールで一緒に働きましょう!
また折々、編集部員インタビューを続けていきたいと思っております。
みなさんの応援が雑誌をつくる力になります。感想などお寄せいただけましたら、シマダも石井もうれしいです。
(オールの小部屋から⑫ 終わり)