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オールの小部屋から㉗ THE ALFEEの夏

 8月25日、THE ALFEEがデビュー50周年を迎えました。
 前回の編集部だより〝直木賞の夏〟について書きましたが、今年のオール編集部の夏は〝THE ALFEEの夏〟でもあったことを記しておかねばなりません。
 髙見澤俊彦さんには、ずいぶん前から常連執筆者としてオール讀物の目次に名を連ねていただいています。最初のきっかけは、2016年11月号のコラム「偏愛読書館」に寄稿していただいたこと(この時のエッセイ父の本棚こちらから読めます)。
 それをご縁に打ち合わせを重ね、オール讀物2017年9月号より初の小説「音叉」の連載がスタートします。現在まで、音叉』『秘める恋、守る愛』『特撮家族と、3作の長篇小説を上梓してくださっています。

神田明神の売店に設けられた髙見澤さんコーナー。サンマリノ共和国のタカミーワインの隣に『特撮家族』が置かれていました。

「音叉」連載時、私は週刊文春編集部におりまして、当時の経緯を詳しくは知らないのですが、2019年にオールに異動してきて、2作目の「秘める恋、守る愛」の連載担当を途中から引き継いだことで、髙見澤さんの謦咳に接して、現在に至ります。
 本の話ポッドキャストにも何度もご登場いただきましたし、『特撮家族』オーディオブックの全編朗読もやっていただきました。髙見澤さんとお仕事を重ねてきたオール讀物としては、今夏、THE ALFEEの50周年を盛大にお祝いしようと、髙見澤さんに短篇の執筆をお願いしておりました。お祝いするのにどうして忙しい髙見澤さんに負担をかけるのか? とファンの人に怒られそうな、すごく雑誌に都合のいい理屈ですよね……(汗)。
 当初の締切は4月ということになっていました。しかし、渾身の作を……と力を注いでくださった結果、「4月は無理そう」と早々にご連絡をいただき、さらに髙見澤さんは、雑誌のページに穴があいたら申し訳ない、と、「50周年が一段落したらやりましょう!」とお約束していた神道入門トーク「神様について語ろう」(講師・岸川雅範さん)を前倒しで始めようと提案してくれたのでした。こちらのコラムはオール讀物6月号より連載が始まっておりまして、読むと、神様ってこういう存在だったのか、と納得できる、ものすごく面白いものになっています。

ある時のコンサート会場では、オール讀物、サンマリノ共和国国営ワイナリー、神田明神のお花が並ぶ奇跡が起きたことがありました。

 さて、肝心の新作短篇は……と言いますと、5月、書き始めたけれどなかなかうまく進まない。6月、いくつか書いてみたが難航している――と、厳しいご連絡がつづきます。そして7月、首を長くして待っている私のもとに「まだ未完成ですが……」というメッセージとともについにお原稿が! それが衝撃の歴史SF「イモータル・ブレイン」の冒頭だったのでした。
 しかも、「書いているうちに短篇では収まらなくなった」とのことで、急遽、長篇連載に変更。ちょうど8月22日に発売される9・10月特大号の掲載に間に合いまして、〝THE ALFEEの夏〟をお祝いするのにぴったりのタイミングになりました。こうして豪華な、50周年記念号にふさわしい新作のお披露目となったわけです。
 ごく簡単に「イモータル・ブレイン」のあらすじをご紹介しましょう。

 代々木公園を散歩している一見、平凡きわまりない男には、人知れぬ秘密があった。1400年近い〝暗殺の秘史〟を一身に背負って生きているのだ。ある時は蘇我氏を、ある時は源氏の嫡流を、ある時は天下統一を控えた戦国武将を……。男は日本の歴史を大きく変えた暗殺事件に深く関与し、その生々しい記憶を持ったまま〝転生〟を繰り返していた。 いま代々木公園を歩いている男は、いかなる使命を帯びてこの令和の東京に現れたのか? 運命の神はこの男にどんな風景を見せようとしているのか?

 ………といった壮大な物語。第1回では、乙巳の変や、信玄暗殺の裏側が描かれ、今後、いわば髙見澤版「暗黒の日本史」ともいえる歴史SF長篇になっていきそうです。
 あらためて言うことでもありませんが、髙見澤さん、本当にご自身でキーボードを叩いて原稿を執筆されています。ゴーストライターがいるわけでも、口述筆記しているわけでもありません。移動中の飛行機や新幹線、リハーサルの空き時間などを効率よく使って、ひたすらPCに向かっているそうです。さらに、ご自身が納得いくまで何度も何度も推敲される様は、こちらが見ていてびっくりするほどです。
 髙見澤さんの原稿データには、修正・更新した回数と思われる通し番号がついているのですが、冒頭部分が送られてきた段階ですでに「17」。第1回めの掲載分まで書いていただいた時点で「61」。こちらからご提案をして手を入れていただいた改稿バージョンが「71」。それを印刷所に渡してゲラ(校正用の印刷見本)を組み、再度、赤字を入れていただき、校正が終わったあとも、さらにメールで追加の直しが届いて、ようやく掲載の運びとなりました。いったいいつこれだけ原稿を直す時間があるのだろうと不思議な気持ちになりますが、本当に一言一句、「は」か「が」か、「を」か「に」か、といった助詞のひとつひとつに至るまで、丁寧に吟味した結果の連載第1回です。
 ファンの方はもちろん、そうでない方も、雑誌というのはいろんな書き手に出会うきっかけになる場所ですから、この機会にぜひいちど、小説家・髙見澤俊彦の筆さばきを味わってみていただけたらと思います。びっくりするくらいエンタメしてますよ!

神田明神・岸川雅範禰宜(左)と髙見澤俊彦さん

 6月号より連載中の神道コラム「神様について語ろう」も、今号は50周年にちなんだものになっています。テーマは「祭り」。今夏、THE ALFEEが前ねぶたや竿燈を奉納した「青森ねぶた祭り」「秋田竿燈まつり」の話題から入って、「古来、人にとって祭りとは何であったか」という謎に迫っていきます。音楽の演奏と祭祀とが、非常に近しいものであったこともわかってきます。「神様と一緒に食べること、飲むこと」がお祭りにとってとても大事であるとか、踊りには元来、稲を奮い立たせる意味合いがあったとか、目から鱗が落ちまくるおふたりのトークは必読!
 もはや縁起物とさえ言える髙見澤さんの新連載、そして神様トークを、書店の店頭でチェックしてみてください。オール讀物9・10月特大号です!

(オールの小部屋から㉗ 終わり) 

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