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Mr.Children「here comes my love」を聴くと今でも泣く。ドラマ「隣の家族は青く見える」の深キョンに救われた私

もう10年以上前のことなので、平気っちゃ平気なんだけど、
2人目の子どもを流産しまして。

いわゆる「2人目不妊」ってやつで、まぁまぁ長い事不妊治療していたのです。

タイミング法で1年、それから卵管造影をして、
卵管造影をしたあとは妊娠しやすくなるから、またタイミング法で半年。

3歳の娘かかえて、仕事もしながら、毎朝基礎体温を計って、何度も婦人科にお世話になり、ゴールはいつになるのかわからない、
暗い海の真ん中で必死で、まだ見えない光に向かって泳いでるみたいな、そんな感覚。

この日が妊娠の確率高い!!と先生に言われた日に子作りしたいのだが、
「ヤリたければ頭下げてお願いしたら」
と当時は旦那だった男に言われて、(離婚して良かった)こうもすれ違うものなのかと絶望した。

生理が来るたびに、この1ヶ月の苦労は無意味だと落胆し、いやいや次に進まなきゃ婦人科にはいつ行こうか…と自分を奮い立たせ。

苦しかった。だから、
妊娠した時は、本当に本当に嬉しかった。

もうあの地獄みたいな日々を繰り返さなくて済む。
良かった、良かった。壊れそうだった。……と。


不妊治療を経験した人たちの多くは、きっと私と同じくこんな感じだろう。
私だけじゃない。何も、特殊なわけじゃない。
流産だって、心音確認前の稽留流産だった。
わたしなんかより、もっとつらい思いをしている人はたくさんいる。

でも、もうすでに、思い描いてしまっていたのだ。
お腹に宿った命が、生まれ、育ち、保育園に行って小学生になって。
娘とは何歳差になるかな。
卒業式や入学式はかぶらないから大丈夫だな。
大人になったら、きょうだいでお酒飲むのかな。

その未来が消えてなくなった時のショックは
想像以上で…
落胆とかガッカリとか…いくら思い付く言葉を並べても、あの時の感覚は表現できない。

それを経験した私は数年後の2018年に
ドラマ「隣の家族は青く見える」を観た。
主題歌がMr.Childrenの「here comes my love」だから、という理由で見始めたのだが、

主演は深田恭子さん、その夫役が松山ケンイチさんで、妊活している夫婦の設定。
毎回自分を重ねながら喜んだり悲しんだりして視聴していた。

ネタバレなのですが、

破り捨てようかな
いやはじめからなかったものって 思おうかな?
拾い集めた 淡い希望も
1度ごみ箱に捨て

Mr.Children「here comes my love」

不妊治療を続けていた、深キョン演じる奈々は、やっと宿った命を亡くしてしまうのだ。
心音確認し、役所でマタニティマークを受け取って、仕事もセーブして…
ある日倒れて出血、病院搬送、流産。

体が回復した後の日に、
婦人科へ向かう用意を淡々とする奈々。
玄関に用意した自分のバッグに、まだマタニティマークがついているのに気付いて

無表情で外そうと手を伸ばす。
なかなか外れてくれないそのマークに指が上手く動かずに、
無表情だったその顔が、少しずつ険しくなって、やがてボロボロと泣き始め、
もぎ取る様に乱暴に外し、それを床に投げ捨てる。

夢見た未来を 波がさらっていっても

Mr.Children「here comes my love」

描いて消すを繰り返した夢の地図を
風が引き裂いても

Mr.Children「here comes my love」

命が宿ってくれたとわかった瞬間から、新しい無限の未来を感じて
光が差して、それが生きる道標になった。

その全て、波がさらうかの様に、一瞬にして目の前から消えてしまう。

不妊治療は、まさに夢の地図を描いては消すような作業で…
それすらをも、風に引き裂かれてしまう。

目的に近づけぬ不妊治療の不毛さ。
全てが無に帰す様な、悲しみを通り越した虚無感。
現実が襲ってきて、叫びだしそうになる苦しみ。

深田恭子さんの演技はそれを私に感じさせて、
もう、ものすごく泣いてしまった。

流産したとわかった瞬間は婦人科の先生の前で泣いたし、その後も1回くらい涙が出たけど、こんな風には泣けなかった。
ひとりで泣くにはあまりにも悲しくて。

私はやっと、深田恭子さん演じる奈々ちゃんと一緒に、泣くことができたみたいだった。


破り捨てようかな。
2人目の子供が欲しかった事も、不妊治療の事も全部忘れて、初めから何もなかったって、思おうかな。
頑張ったあの日々の記憶ごと、ごみ箱に捨てちゃおうか。

そう、悲しい記憶を思う自分もいる。

でも「here comes my love」は、希望の歌なのだ。
私には、あの時を思い出させ、聞けば泣いてしまうのだけれど、
泣くことで確かに前に進めるし、
あれからほどなくして不妊治療をやめ、さらに離婚までした私の事を、幾度となく慰めてくれた。

「夢見た未来を波がさらっていっても」の続きは、「この海原を僕は泳いでいこう」

「描いて消すを繰り返した夢の地図を 風が引き裂いても 」の続きは、
「祈るように叫ぶように また流れに飛び込んでみるんだ」

見上げた空には 雨雲があるけど
その海原を 誰もが泳いでるよ
希望を胸に 吸い込んだら
また愛する人の 待つ場所へ

Mr.Children「here comes my love」

想像したこともなかった悲しみ。
努力しても掴めなかったもの。
色んなことを抱えて、人は生きている。

誰の頭上にも雨雲はあって、風や波に大切な物を攫われることもあって、
でもこの海原を泳いでいくしかない。
希望を見付けて、吸い込んで。

切望しても叶わなかった、
その記憶ごと、進んでいこう。

「here comes my love」の意味は
「さあ、これが私の愛だよ」とか
「ほら、私の愛がやって来るよ」だそうです。

愛はここにあるよ、大丈夫だよ。って言ってもらってるみたい。

これからも私はこの曲を聴いて、その度に泣く予定だ。
でも後悔の涙じゃない。
よく頑張った!って思うためだ。

ドラマのあのシーンを思い出すのも、いわばデトックスだ。
たまに深キョンと一緒に泣くつもり。
こんな人、いるんだろうか(笑)

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