欠点無し。エンタメの手本と呼ぶべき快作『シャフト/SHAFT
『黒いジャガー』『シャフト』のさらに続編が『シャフト/SHAFT』だ。劇場公開はされずに、ネットフリックスのオリジナルコンテンツとして細々と公開されていた。
『黒いジャガー』で主演のリチャード・ラウンドトゥリーも特別出演している。その次の『シャフト』は、アイス・キューブ出演作としておなじみの『ボーイズン・ザ・フッド』のジョン・シングルトン監督だけにシリアスな作風だった。
そして3作目の『シャフト/SHAFT』は妙に明るくテンポの良い快作だ。
主演は前作同様にサミュエル・L・ジャクソンだ。一応はジェシー・T・アッシャーが“シャフト”の息子役で主人公なのだが、途中からはほぼサミュエルが主役といっていい。
このジェシー・T・アッシャーは『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』で、前作『インデペンデンス・デイ』のウィル・スミスが演じていた主人公の息子役に出ていた俳優だ。
『~リサージェンス』でも“主役に抜擢”と話題になったが、実際は『マイティ・ソー』のクリス・ヘムズワースの弟リアム・ヘムズワースが目立ったせいで存在感を残せなかった。今回もサミュエル・L・ジャクソンがキャラ立ちし過ぎたせいでまたも目立てなかった。実に可哀想な俳優である。
いうまでもなくサミュエル・L・ジャクソンは偉大過ぎる俳優で、スパイク・リーやタランティーノが愛しているのは言うまでもなく、ジョージ・ルーカスは『スター・ウォーズ』では特別に紫のライトセーバーを持たせているし、スピルバーグの『ジュラシック・パーク』にも無駄に出演している。
マーベルスタジオも『アベンジャーズ』シリーズのニック・フューリー長官にオファーしているし、一方で『ベアリー・リーサル』のようなビデオ映画にもフューリーとほぼ同じキャラクターでちゃっかり登場している。
その功績は語りつくせないが、映画の作り手たちも観客たちもサミュエルのことが大好きなのである。
もう70歳を過ぎたサミュエルが奥さんに叱られたり、息子にやさしくしたり、銃で人を撃ちまくったり、演技の振り幅がでかいというだけで『シャフト』には価値がある。劇中ローレンス・フィッシュバーンに間違われブチ切れるシーンも最高だ。
本作のノリは『キック・アス』に近い。銃撃含めてアクションシーンもスタイリッシュだし、物語の展開や場面の切り替わりの速さも見事だ。
オープニング、時の流れをヒップホップの名曲と共に表現する手法も洒落ている。
サミュエル演じるシャフトと息子の親子のバディムービーに軸を置きながらも、悪人を成敗する勧善懲悪のストーリーもわかりやすい。ラストにはしっかりカタルシスがある。正直に言って、欠点が少ないし、何より明るいのがいい。
確かにアカデミー賞をとるような作品ではないが、B級映画のような暇をつぶす消費財映画でもない。大規模予算を投じているわけでないが、見た後にスカッとするエンターテイメントとして十二分に成立している。文句はない。素晴らしい映画だ。