もしか設楽さん 「陸上界をもっとフランクに」
設楽悠太選手そっくりさん芸人ーポップライン萩原拓也さんー
2019年9月15日、東京オリンピックのマラソン代表を決定するMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)が開催された。
優しい外見とは裏腹に攻めた走りでファンを魅了する、設楽悠太選手(Honda所属)。スタート直後から37㎞付近まで独走、その後惜しいことに2位集団に追い越され、14位。東京オリンピック出場の切符を、MGCで掴むことは出来なかったが、SNSでは「かっこいい走り!」「すごい!」「ファンになりました」とツイートされ、トレンドに「設楽悠太」の名前があがり、夜になっても消えなかった。
設楽選手に似た、そっくりさん芸人「もしか設楽さん(Nonda所属)」がいることをご存知だろうか?
しかもご自身も、神奈川大学駅伝部出身、大後栄治監督の元で箱根駅伝を目指したエリートランナー、現在サブ3(3時間以内でフルマラソンをゴールすること)を達成、さらには「芸能界最速」を目指す「お笑い芸人」である。
マラソン芸人、ポップライン萩原拓也さん。
俳優としてもNHK大河ドラマ「いだてん」に、第1回箱根駅伝の走者、慶應大学の寺内選手役として出演。「もしか設楽」としてもフジテレビのモノマネ番組「マネもの」で、川内優輝選手のそっくりさん芸人、M高史さんと共に「設楽悠太選手と川内選手がデッドヒート」する場面をお茶の間に届けた。テレビ出演時のtwitterのタイムラインは、ポップライン萩原ファンの「出たーーーー!」「似てる!」で賑わい、「#マネもの」のトレンドランキングは5位まで登りつめていた。「もしか設楽」はSNSで拡散し、特にマラソンファン、陸上ファンの認知度は高い。
そんな「もしか設楽」、ポップライン萩原拓也さんを取材した。
「陸上界をもっとフランクにしたい」
何やらご自身、目指している場所、走る理由があるようで……。
(萩原拓也さん:以下萩原)陸上界を、もっとフランクにしたいと思っています。
中学・高校・大学と全て陸上の強豪校で走ってきた萩原さんは、いわゆるガチガチの体育会系で過ごしてきた。朝練を遅刻すれば、一発で坊主が当たり前だったという。そんな彼が、なぜ「陸上界をフランクにしたい」と思うようになったのだろうか……。
今の陸上界は、青山学院大学の活躍と、原監督の積極的なアピールなどにより、「厳しい・きつい・つらい」だけのイメージが払拭されつつある。しかし彼は、また違った方法で陸上界を変えようとしている。
(萩原)陸上界で芸人をやっている人達は、皆同じ畑を耕している。そこはめちゃいい土になっているけれど、もっと他にいくらでも耕すところがあるのに……。
この方、何者だろうか? こんな例え方が、すっと口から出てくるということは、日頃からこの景色の中で過ごしているに違いない。
「ポップライン」は、3ヶ国語を操るトライリンガルの竹本カズキさんと、マラソン芸人萩原拓也さんのお笑いコンビだ。芸歴は10年以上。竹本さんは現在、マラソン初心者なのに1年の練習でサブ3.5(3時間半以内でマラソンをゴールすること)の達成に挑戦され、コンビでは、先日「走りのみで九州縦断」を達成し、「ポップラインのランニング魂・九州縦断の旅」のタイトルでYouTubeにて動画配信している。
資金はクラウドファンディングのAll-inに達成率100パーセント超えで成功した。
動画の内容は軽快で、明るくて、偉そうなことなんてひとつも言わなくて、「厳しい・きつい・つらい」ことも彼らにとっては「楽しい」ことになってしまう。旅の途中のトラブルも笑いのひとつ。土地の人とのふれあい。twitter、Instagramで位置を確認して追いかけてきたファンとの出会い……。
また、何と言っても、旅の最中に突如発表された、画期的なSNSリアルタイム視聴者参加型システムーーポップラインのお二人がSNSを利用して旅を紹介し、ついた「いいね」と「リツイート」の数で翌日の食費が決まる。この予算内で食事を納めなくてはならず、連日暑い中、1日およそ50kmを走る萩原さん、バイクで追いかける竹本さん(竹本さんも2度走って萩原さんに休足日を提供、すごい距離を走って萩原さんを驚かせる)を、ファンは応援せざるを得ない。
こんな彼らの試みが、新しい風を感じさせてくれる。
「走る」×「お笑い」が彼らの方程式だ。
(萩原)小さな風穴ですけれど、何か出来ることがあるのではと思っています。他の人たちがやっていないことをやって、陸上界を変えたい……じゃないですけど、もっと真面目じゃないというか、フランクな業界にしたい、そこを目指してますね。
試合が行われる陸上競技場に、川内優輝選手のそっくりさんM高史さんと、「もしか設楽」の格好で足を運び、選手に声援を送る。そんなこと自体が、今までの陸上界ではあり得ないことだという。
(萩原)瀬古さんがプロジェクトリーダーをされていらっしゃることが大きい。陸上界は変わる気がしています。
あの誰もが知る瀬古さんや、細かすぎる選手情報が人気の増田明美さんにも名指しで知られているそっくりさん芸人である。ただ、顔や体型が似ているだけじゃない。ご自身も陸上界で戦って来たからこそ、陸上界の中で認知されているのだ。競技場では、指導者の皆さんにもご挨拶に行かれる。そこは真面目にちゃんとする。だからこそ、陸上界が「もしか設楽」を応援してくれているのだ。
(萩原)神奈川大学駅伝部の大後栄治監督のもとで指導を受けた、自分たちの世代が指導者になりつつある。みんな、僕のすることを理解してくれています。
ユニクロの女子陸上競技部のコーチである島田健一郎さんは、神奈川大学の同期である。
今からのこと……。
MGCで決定した内定者は2名、残り1枠をかけた戦いがもう始まっている。注目は高速レースが期待できる来年3月の東京マラソンに、設楽悠太選手、大迫傑選手が出場するかどうか……。ちなみに、萩原さんは東京マラソンに当選され、参加される予定である。もしかシタラ、ホンモノとニセモノが初めて揃うレースになるかもしれない。
さあ、2020年。いよいよ東京でオリンピックが開催される。マラソンは、日本人が楽しみにしている種目の一つであることは間違いない。選手の活躍が、何よりも陸上界を盛り上げる鍵になるのだろうが……ここに、設楽悠太選手の「そっくりさん」として、陸上界を見つめる人がいることを、知ってほしい。
〈プロフィール〉
ポップライン萩原拓也(はぎわら たくや)
1981年11月14日生まれ。秋田県出身。秋田経済法科大学付属高等学校(現:明桜高等学校)陸上部。神奈川大学駅伝部。フルマラソン自己ベストは2時間59分21秒。YouTubeにて「ポップラインのランニング魂」配信中。
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