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みずいろのつばさのうらをみせていたむしりとられるとはおもわずに|正岡豊【一首評】

数ある好きな短歌から、今日はこちらの短歌をいただきます。

みずいろのつばさのうらをみせていたむしりとられるとはおもわずに

引用:正岡豊「四月の魚 (現代短歌クラシックス03)」|書肆侃侃房(2020)

ほかの短歌鑑賞(一首評)は、こちらからどうぞ。


STEP1:ひとくち食べた印象やイメージ


「みずいろ」は空、そして海の色。

さわやかでみずみずしいその色のつばさを従えている作中主体は、おそらく純粋な若者だ。

翼の裏に隠した大事なモノを、相手に見せる。

単純に相手を喜ばそうとしてのことだ。

でも、次の瞬間。

その大事なモノをむしり取られてしまう。

そして、作中主体は思うのだ。もう、大事なモノを安易に見せるのはやめようと。

わたしたちは社会でいろんな経験をし、そして学ぶ。そして、少しずつ臆病になっていく。

***

最初は、初恋の歌なのかなと思った。

というのも、この歌を読んだ時にいちばん最初に浮かんだのが羽が青や緑で綺麗に覆われたインコだったから。

身体全体が青や緑などの寒色をしていても、おなかや翼の裏などの見えない部分が赤い鳥は多い。

ワシントン大学の研究によると、赤い鳥ほどモテるというのだ。

“In many bird species, the redder the male, the more successful it is at finding mates,”
多くの鳥類では、オスの色が赤いほどメスを見つけるのに成功している

引用:How did cardinals get those bright red feathers?

この歌の翼の裏にあったのは赤い羽根で、その羽根を勇気を出して見せたが、愛は伝わらなかった。

それどころか、むしり取られた。

ぼろぼろに。

初恋は実らないとは言うけれど、これじゃやっぱりあんまりだ。

STEP2:食べ続けて見えた情景や発見


「赤い鳥ほどモテる」は鳥の話だったけど、実は人間も同じだ。

「つばさのうら」を良きタイミングで見せられる人はモテる。

別に恋愛に関わらず、普通の人間として。いわゆる「自己開示」というやつだ。

自己開示=つばさのうらをみせる

でも、だれかれかまわず見せまくっていたら、むしられるだけだ。

最低限のセオリーを学んだら、ちゃんと自分が信頼できる、好きな人がたくさんいる場所を探して、行動(=移動)しなくてはならない。

おっくうになって、この行動をせずにいたら、どんどんつばさの裏はみすぼらしく剥げていく。

行動しなくちゃな。

とりあえず一歩でいいのだ。前を歩こう。

わたしのつばさの裏は、仕事のバタバタにかまけて、ぼろぼろだ。

そして、これ以上ぼろぼろにならないように、わきをきゅっと締めて歩いてる。

***

好きな人や好きなモノを追いかけるのって、大人になればなるほどちょっと難しい。


まとめ:好きな理由・気になった点


・すべてひらがなでかかれることによって見慣れた景色を異質なものに感じさせる異化効果
・いつ・どこで・だれがなどの具体的な記述がないので感情だけを膨らまして浮かび上がらせる表現法


とても好きな短歌のひとつです。

ごちそうさまでした。


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石井しい
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